日本女子卓球の「打倒・中国」実現へ、急成長のカットマンがカギを握る!?

取材・文/井本佳孝 写真/共同通信社 アフロ

世界卓球で銀メダルを獲得した女子日本代表。(前列左から)張本、早田のダブルエースを中心に奮闘した世界卓球で銀メダルを獲得した女子日本代表。(前列左から)張本、早田のダブルエースを中心に奮闘した

「2026ITTF世界卓球選手権ファイナルズ ロンドン大会(世界卓球団体戦)」が、現地時間4月28日から5月10日にかけてイギリス・ロンドンで行なわれた。男女共に充実した陣容をそろえた日本代表には、金メダル獲得も期待されていた。

男子は、エースの張本智和(世界ランキング3位/5月11日時点。以下同)に加え、2年連続全日本王者の19歳・松島輝空(同8位)が台頭。

さらに、戸上隼輔(同15位)も存在感を示し、歴代屈指の戦力で銀メダルを獲得した。決勝では中国に敗れ、12連覇を許したものの、2016年のクアラルンプール大会以来となる決勝進出を果たした。

一方、1971年の名古屋大会以来55年ぶりとなる金メダルを狙った女子は、前回大会の主軸だった張本美和(同3位)、早田ひな(同10位)をダブルエースに据え、順当に勝ち上がった。決勝では中国に2-3と惜敗したものの、6大会連続の銀メダルを獲得した。

女子の決勝進出までの過程では、足の違和感を訴えていた早田の起用に中澤 鋭監督の配慮も見られた。

早田はパリ五輪での左腕のケガによる離脱も経験。さらにキャリアを重ねる中で自らのスタイルを模索し、〝スーパー攻撃型〟のスタイルを掲げて両ハンド攻撃に磨きをかけてきた。

今大会では序盤こそ緊張感を感じさせたが、準決勝のドイツ戦では強打を持ち味とするザビーネ・ヴィンター(同9位)に逆転勝ちするなど、勝負強さも見せた。

そして迎えた中国との決勝では、張本と早田を〝2点起用〟するオーダーで臨んだ。決勝まで9戦全勝できた張本は、第1試合で王曼昱(同2位)と対戦。過去の国際大会では0勝11敗と苦しめられてきた〝天敵〟だ。

しかし、この試合では第1ゲームを11-4で奪うと、第2ゲームも10-5とリード。そこから1点差まで詰め寄られたが、タイムアウト後のラリーで王曼昱のフォアハンド連打をカウンターで打ち抜き、重要なゲームをものにした。

その後、2ゲームを取り返される苦しい展開となったものの、第5ゲームでは再び張本が主導権を握り、11-4で奪取。ゲームカウント3-2で悲願の初勝利を飾り、日本に流れを引き込んだ。

日本の前に立ちふさがった、中国の絶対女王・孫穎莎(そん・えいさ)。今後チームとして攻略のカギを探す日本の前に立ちふさがった、中国の絶対女王・孫穎莎(そん・えいさ)。今後チームとして攻略のカギを探す

だが、この決勝であらためて浮き彫りになったのは、シングルス5試合を戦い、3試合先取で勝敗が決まる団体戦において、中国から3勝を奪い切ることの難しさだった。

大会を通じて状態を上げてきた早田だったが、決勝では第2試合で世界女王・孫穎莎(同1位)に0-3で完敗。さらに第4試合では、張本も孫穎莎に0-3で敗れた。第5試合では、勢いを取り戻した王曼昱に早田が押し込まれ、ストレート負けを喫した。

2大会連続で中国と接戦を演じての銀メダル獲得は、日本女子の継続した強さを示したと言っていい。ただ、〝中国トップ2〟の孫穎莎、王曼昱を、チームとしてどう崩すかが課題として残った。悲願の金メダル獲得へ向け、今後も大きなテーマとなる。

今大会で存在感を示したカットマンの橋本。決勝の中国戦でも1勝を挙げるなど、日本の新たな戦い方を示した今大会で存在感を示したカットマンの橋本。決勝の中国戦でも1勝を挙げるなど、日本の新たな戦い方を示した

そんな中、中国撃破への新たな可能性を示したのが橋本帆乃香(同14位)だ。今大会、27歳で世界卓球団体戦デビューを果たしたカットマンは、決勝で中国の次世代サウスポー・蒯曼(同7位)から勝利を挙げるなど、大舞台で存在感を放った。

98年に愛知県で生まれた橋本は、関西の名門・四天王寺高出身。フットワークを生かした広い守備範囲と、粘り強いカットが持ち味だ。

カットマンは一般的に、守備的な戦型として知られている。しかし橋本は、バックサービスでの揺さぶりや、ラリー戦で機を見てスマッシュを放つなど、守備から攻撃への切り替えでも力を発揮する。

高校卒業後はミキハウスに入社。2年後の19年に行なわれた世界卓球個人戦のダブルスでは、佐藤 瞳(同25位)との〝カットマンペア〟で銅メダルを獲得。24年のWTTファイナルズ福岡では同ペアで優勝を果たした。

ダブルスの名手として存在感を高める一方、世界トップクラスの選手がそろい、若手の台頭も著しい日本女子では、シングルスで代表争いに食い込めずにいた。

だが、28年ロサンゼルス五輪出場や日本代表入りを視野に入れ、25年3月末にミキハウスを退社。サポートに名乗りを上げたデンソーへ移籍し、国際大会に本格参戦する体制を整えた。また、プライベートコーチとして元日本代表の森薗美咲を招き、攻撃面やメンタル面の強化にも取り組んできた。

この変化は橋本にとって大きな転機となった。25年は国際大会のWTTシリーズでシングルス3度の優勝を果たし、世界ランキングも25年3月末時点の30位から、10月末には自身初のトップ10入りを経験。グランドスマッシュやチャンピオンズといった上位カテゴリー大会にも初出場を果たした。

また、22年から続いていた対外国人選手への連勝記録を「41」まで伸ばすなど、27歳となるシーズンで大きな飛躍を遂げた。

そして迎えた今回の世界卓球団体戦で、橋本は主力として5勝1敗の好成績をマーク。中国との決勝の第3試合では、蒯曼の厳しいミドル攻めをしのぎ切り、要所では攻撃に転じるなど持ち味を発揮。ゲームカウント3-1で下した。

現代卓球において、カットマンという戦型は減少傾向にあり、ライバルの中国には橋本のような世界トップレベルのカットマンがいない。今回の世界卓球における中国戦での起用、そして蒯曼からの勝利は、昨年からの積み重ねが生んだ必然とも言える結果だった。

銀メダルに終わった日本が「打倒・中国」を掲げる戦いが続いていく中、ロサンゼルス五輪出場を見据える橋本が、〝秘密兵器〟として存在感をさらに高めていくのか。27歳のカットマンの快進撃に注目が集まる。

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