W杯は家で見るという山下真司さん。「家だと周囲を気にしないで号泣しながら見られる」と語る

9月20日の開幕が迫る「ラグビーワールドカップ2019日本大会」。今回初の日本開催となり、ラグビー熱は高まるばかりのなか、史上最強のラグビードラマ『スクール☆ウォーズ』が本放送から35年ぶりにDVD-BOXで復活!

ドラマは元日本代表の山口良治(よしはる)氏をモデルにした"泣き虫先生"こと滝沢賢治とその生徒が、ガチンコファイトしながら強豪チームに成長していくまでを描いたもの。

前編では、滝沢を演じた山下真司さんがドラマ撮影時の思い出話や泣き虫先生の"涙"について語ってくれた。さらに今回は、ドラマ出演以降ラグビーにハマり、ラグビーイベントにも呼ばれるようになったという山下さんに、ラグビーの魅力はもちろんW杯の見どころなどもうかがった。

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――『スクール☆ウォーズ』出演は山下さんの人生にどんな影響を与えましたか?

山下真司(以下、山下) 一番はラグビーを好きになれたこと! それにもちろん、役者として代名詞にもなった。まあ、おかげでその後の『男女7人秋物語』で滝沢賢治のパロディみたいな、まっすぐな男だけど空気が読めない的な役をやったり、その後も熱くて叫ぶシーンが多い役ばかりが来るようになった時には「またかよ」と思ったこともありましたけど。

――時にはテレビ番組で泣き虫先生のパロディを芸人にイジられるシーンもあったりするのは、正直どうなのでしょう。

山下 あれねー、悔しいよ(笑)! 俺、真剣にやってるのに女芸人さんとかが「この人、本気よ」とかっておちょくってきたりさあ。「本気だって、当たり前じゃねーか、俺は『スクール☆ウォーズ』ファンのために本気でやってるんだよ!」って。そういう辛さも少しは体験してますかね。笑いにされることは、ありがたくもつらくもありますね。

――でも、ラグビーのイベント会場などのお仕事もされる時は、純粋なファンにも出会えてうれしかったり?

山下 そうですね! 「僕『スクール☆ウォーズ』見てラグビー始めたんですよ」って自慢げに話しかけてきてくれる選手もけっこういたりする。それはもううれしいですよ。それら含め、多大な影響がありましたよ。うれしいことしかない。

――『スクール☆ウォーズ』はラグビー人口を増やしたとも言いますしね。

山下 そうみたいなんですよね。当時、少年だった子がドラマを通して自分の人生を真剣に考えたり、ラグビーに興味を持ってラグビー選手を目指したり。そんな子たちに「痛くてしんどくて、何度やめようかと思ったけど、『スクール☆ウォーズ』を思い出して何度も頑張って続けてきた」なんて聞かされるとうれしいですよ。

――ラグビーの魅力って、なんでしょうね?

山下 トライもあってゴールもあって、不可能が可能になる、奇跡が起こるスポーツってところでしょうね。15人のチームプレイってスポーツの中でも人数が最も多いですよね。トライ決める時に14人が協力しないと最後のひとりにボールが渡らない。

両チームともなかなかトライに結びつかないんだけど、「えっ!」ってところで抜いたり、抜けたりする。その15人の集中力と体力と気力と、心技体が全て揃った時に奇跡が起こる。そして最後まで諦めない、反則の少ないチームが一番強くなる、これぞ魅力でしょうね!

――ただの力任せではない、頭脳プレーですよね。

山下 まさに! 頭脳戦であり体力戦であり。166cmくらいの体は小さいけど足が速い選手が180cmの巨大な選手にタックルされたり。体の大小に関わらず自分の長所を最大限に活かして仲間のために命かけるからね。

今年のW杯にも日本代表として選出された田中史朗(ふみあき)選手なんて、166cmの小さい体で「試合は怖いけど日本のため」って戦いに挑んでさ。2015年のW杯で日本代表として戦った時には、出場前に奥さんに「もし俺が死んだらいい人見つけてな」って言ったって聞いて......。

――山下さん、瞳が熱く潤んでます......。

山下 ちょっとグッとくるじゃない。少年がそのまま大人になったみたいな顔して命がけで戦うんだよ。同じく日本代表で選ばれている福岡堅樹(けんき)選手なんかも医師を目指しながら、25歳にしては老けた顔してさあ。

――そうですよね、20代なりに凛々しいんだけど一方で老成しているような雰囲気も。

山下 やっぱり......大人にならざるを得ないんじゃないですかね。ラグビーの元フランス代表のジャン・ピエール・リーヴの名言で「ラグビーは少年をいちはやく大人にし、大人にいつまでも少年の魂を抱かせる」ってあるじゃない。

仲間のために自分はこうあらねばならないってことを気づかせてくれるスポーツだし、相手にリスペクトされるように自分で自分をリスペクトできるように自分自身を構築しないといけない。紳士の格闘技なんだよね。大人の体に少年の顔を残し、心は少年っていうさ。

――今回のW杯は会場に見に行かれるのですか?

山下 いや、家で見ます。僕はテレビで一番いい角度から選手たちの集中した顔をアップで見たいんだよね。もちろん会場で体のぶち当たる音を聞いたり、その熱気や生の歓声とかも感じたくもあるんだけどね。それに、トライした時の鳥肌感は生が一番だとも思うけど。家だと周囲を気にしないで号泣しながら見られるしさあ。

――では、今回のW杯の見どころも教えてください!

山下 まず時差なしで見られる日本開催が最高ですよね。メンバーもキャプテンのリーチ・マイケル選手はじめ、かつてないくらいインターナショナルなチームになっていてベスト8どころか優勝だって狙えるのではないかと思っていますね。

特に、リーチは恥骨を試合で痛めて30cmもの長い針で治療したとかで。そんな辛い思いをしてまで結果を残そうとしているんだから、プレッシャーもあるだろうけど涙なしでは見られませんね。どの試合も1、2点を争う緊張感漂う試合になると思っています!

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「まずは初戦のロシア戦、勝って泣きたいね」と語る山下さん。田中史朗選手の奥さんへの言葉を話した時は、みるみる目が充血して涙ぐんで......心なしか部屋の温度も若干上がった気がするほど。W杯開催前に、男の涙を見た。9月20日より開催のラグビーW杯、熱い気持ちで見届けたい!

●山下真司(やました・しんじ)
1951年12月16日、山口県下関市生まれ。79年の『太陽にほえろ!』にレギュラー出演。84年泣き虫教師、滝沢賢治を演じた『スクール☆ウォーズ』が最高視聴率20%を超すヒット。その後も『ケータイ刑事』シリーズや『食いしん坊!万才』などドラマやバラエティー多方面で活躍中

■『泣き虫先生の7年戦争 スクール☆ウォーズ』DVD BOX発売中
〈HDリマスター版〉2万9160円、Blu-ray BOX〈通常版〉3万6288円(ともに税込)。
発売元/TBS、発売協力/TBSグロウディア、販売元/キングレコード