
山本萩子
やまもと・しゅうこ
山本萩子の記事一覧
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。
今回はちょっとニッチな、でも書いてみたら意外と奥が深いテーマをお届けします。「スコアブックのススメ」です。
野球未経験の私がスコアブックをつけ始めたのは学生時代。父にざっくりと教えてもらって書いてみたら、「試合後の振り返りに最適だな」と気づいたのですが、その日が懐かしいです。
スコアブックの書き方には、大きく分けて「早稲田式」と「慶應式」の2種類があります。細かい説明は割愛しますが、一般的に広く使われているのは早稲田式で、私もそれをベースにしています。
ちゃんとスコアブックをつけるようになったのは、メジャーリーグ関連の番組を担当するようになってから。きっかけは、番組でご一緒していた黒木知宏さんの勧めでした。配球や球種の書き方を教えてもらい、それが今のスタイルの土台になっています。
通常のスコアのつけ方だと、結果の羅列になります。ただ、それだと物足りないので、どんな球で打ち取られたのか、どんな球を打ったのかを書くようにして、試合の動きを落とし込むようにしています。
スコアブックをつけるのに最適なのが、小学生用の国語ノートです。きれいに並ぶ大きめのマスが、球種やコースを書き込むのにちょうどいいんです。専用のスコアブックよりもお手頃なのもおすすめポイントです。
試合中継の現場では、成美堂出版さんのリング式スコアブックを使います。紙質がよくて書きやすいんです。ポストシーズンや国際大会など、試合中にさまざまな情報が集まってくる試合では、さらに細かくメモするために別のノートを用意します。
家で見る時は細かく記録して、現場では結果を中心にパッと書くといった感じで、状況に応じて書き分けています。ちなみに、今シーズンはホワイトソックス専用のノートも作っていて、それを見返しながらビールを飲むのが幸せです。
先日、面白いなと思ったのが、DAZNで公開されてた野口寿浩さん(ヤクルト、日ハムなど4球団で活躍したキャッチャー)のつけていたスコアブックです。
キャッチャー目線で、配球なども全部書いてあるんです。どんな投球で打者を攻略したのか、どんな球を打たれたのかがしっかり記録されていて、「私が目指してるのはこれだ!」と感動しました。配球の意図まで読み取れましたし、スコアブックは書いている人の野球観がそのまま出るものなんですね。
とはいえ、配球をすべて記すのはなかなか大変です。私も軸になる選手の打席や、注目の対戦はできるだけ全球を書き起こすようにしていますが、試合の流れに追いつくのは大変です。
中継の現場によってはスコアラーの方がいないことも多く、戦況を話しながら自分でスコアをつけて、コメントを読んで、進行も確認して......とやることがたくさんあります。そういう場合は、情報の取捨選択をかなり意識しています。
初球を打った、十球以上粘った、といった特筆すべき場面だけ拾い、あとは結果を簡潔にパッと書く。三者連続本塁打といった展開も、パッと見て分かるようにしたくて付箋(ふせん)を貼ります。そういった工夫にも、スコアブックをつける人の着目点が反映されるので、同じ試合でつけたスコアブックでも人によって違った仕上がりになるでしょう。
メモを書き込んだり、印象的だったところに付箋を貼ったり。見返す時間まで尊いです!
現在は一球速報系のアプリなどが充実しているので、結果はすぐ確認できます。それでも、手書きのスコアブックにはかけがえのない価値があると思ってます。
自分で書くことで、配球の先にある投手と打者の駆け引きがより分かりますし、スコアをつけながら試合を見ると内容が頭に入りやすくて勉強にもなります。そして、あとで見返すと、その試合の感動が蘇ってくる。それほど情報の密度がすごいんです。
ここまで読んで、「私もつけてみようかな」と思った方に、僭越ながらひとつだけアドバイスを。それは、「ちゃんと書かなきゃ」と思いすぎないでほしいということです。
人に見せるものではなく自分が見返すためのものなので、感じたことをどんどん書き込んでもいいし、字が汚くたって構わないと思います。正直、私のスコアブックも人に見せられたものではないです。日記みたいな感覚で、気軽につけてもいいんじゃないかなと思っています。
今シーズンも、まだ間に合います。まずは1試合だけでも、スコアブックをつけてみてはいかがでしょうか。