【経済ニュースのバックヤード】大量の食品廃棄を生む業界慣習...。非科学的な「三分の一ルール」の見直しは広がるか?

全国清涼飲料連合会は8月末、「三分の一ルール」を含めた商慣習の見直しや適正化を宣言した(写真はイメージ)全国清涼飲料連合会は8月末、「三分の一ルール」を含めた商慣習の見直しや適正化を宣言した(写真はイメージ)
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「三分の一ルール」について。

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「妻の料理を食わにゃならんから」。愛知県で某企業団体との仕事帰りに飲みに誘われ、東京行きの終電まで参加した。そのなかに食事に手を付けない管理職がいた。酒席が急に決まったため、自宅で食事が待っているらしい。

私は大声で笑った。この団体は小売業なのだが、「三分の一ルール」によって大量の食品廃棄を招いているからだ。彼も苦笑していた。

「三分の一ルール」とは、製造から賞味期限までの期間を三つに区切り、前半の三分の一を過ぎたものは納品ができないというルールだ。

品質上の問題はない。主要国では二分の一から三分の二まで納品できることになっている。

日本はかなり厳格に運用している。法律ではなく慣例であるため、主要顧客以外になんとか販売することもできるが、それ以外の道は廃棄処分しかない。

さらに面倒な「日付が逆転してはならない」という慣習もある。賞味期限が10月30日付けの商品を納品したあとに、10月29日付けのものは納品できない。しかも日付の混在も一般的に許されておらず、異なる日付の商品を同一パレットに入れることもできない。

私たち大人は、子どもたちに科学的思考の大切さを説くし、国も推進してきたはずだが、販売現場では「お客が気にするだろうから」と、科学的根拠を超えた過剰さを取引先に要求してきた。

しかし、2024年にはトラックドライバーの時間外労働規制がはじまり、さらに運送業者への「いじめ」と過酷な労働現場が注目された。それからメーカー、卸、小売も対策に動いてきた。そして2026年8月31日、全国清涼飲料連合会は「三分の一ルール」などの商慣行の見直しや適正化を宣言するはこびとなった。

この宣言は業界全体に特定の取引条件への一律変更を強制するものではない。あくまで業界団体として、問題を自発的に関係者と話し合えと述べている。「三分の一ルール」にくわえ、リードタイム(発注から納品までの時間)の短さ、欠品時の無理な対応なども話題にしている。

ところで話は変わるようだが、このところスーパーマーケットが惣菜、弁当、麺類等のプラスティック材料削減に動いている。容器サイズを変更したり、具材と具材を区切るセパレーターを小さくしたり。消費者にも意外に抵抗なく受け入れられている。

というのも、消費者が持ち帰る先は家庭か職場。ゴミはできるだけ少ないほうがいい。同じくペットボトル飲料においても、約9割の消費者は、もし賞味期限が1ヵ月くらい逆転しているものがあっても購入意向を変えないとしている。

私は食事を残すたびに怒られていたが、「それよりも見えないところで大量の廃棄が行われているのに」と憤慨していた(という自己肯定)。フードロスがこれだけ問題なのだから、各小売店にはあるていどの雑さで納品を受領することを期待したい。

なお付け加えておくと、すでにセブン-イレブン・ジャパンは物流センターへの納品段階で、限定的に鮮度の逆転を認めていた。

清涼飲料水の取り組みが先行したのは、賞味期限が長いからだ。これから他業界も追随するか。家庭円満のため家庭内フードロスを許されない職業人の現実と、日付だけを見て商品を廃棄しつづける企業の現実は、同じ日本という国で起きている。

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  • 坂口孝則

    坂口孝則

    Takanori SAKAGUCHI

    調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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