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新型キックス。デザインから走り、使い勝手まで大幅に進化した注目のコンパクトSUV
未曽有の大赤字から経営再建を急ぐ日産。新型キックスと新型エルグランドに明るい話題が集まっているが、これは本当に"名門復活の狼煙"なのか。専門家に聞いた。
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日産の新車ラッシュが話題を集めている。しかし、その一方で、日産は2年連続の巨額赤字を受け、再建への険しい道のりを歩んでいる。だからこそ、市場からはこんな声も聞かれる。
「日産は本当に復活できるのか」
その問いに対する答えを託されたのが、新型キックスと新型エルグランド。この2台は単なる新型車ではない。日産が再び多くのユーザーから愛される存在になれるのか。その重責を担うモデルでもある。
先陣を切ったのが新型キックス。2026年6月18日、6年ぶりとなるフルモデルチェンジを受け、新型が登場した。価格は299万9700円から。第3世代e-POWERを搭載し、4WDにはe-4ORCEも設定するなど、日産が培ってきた電動化技術を惜しみなく投入した戦略モデルである。
その反響は大きい。トヨタ・カローラクロスやホンダ・ヴェゼルといった強力なライバルがひしめくドル箱市場に投入されたキックスは、日産によれば累計受注台数がすでに1万6000台を突破したという。
16年ぶりに刷新された日産の頂点カー、新型エルグランド。パイオニアの意地を見せるか
そして、もうひとつの日産再建の切り札が新型エルグランド。初代が登場したのは1997年。「高級ミニバン」という市場を切り開いたパイオニアであり、かつての日産を代表する看板カーだった。しかし、その後の市場環境は大きく変わった。3代目が登場した2010年以降、長期間にわたりフルモデルチェンジが行なわれない一方で、高級ミニバン市場ではトヨタのアルファードとヴェルファイアが圧倒的な存在感を示すようになった。かつてエルグランドが築き上げた市場の主役は、完全にトヨタへと移ったのである。
その状況を打破するため、2026年7月、4代目エルグランドがついに登場した。価格は689万7000円から。最上級グレードは869万8800円に達する。決して安価なクルマではない。それでも受注は好調だ。日産によれば累計受注は9000台を大きく超え、1万台も視野に入っているという。さらにキックスとエルグランドは、ともに受注の約6割を上級グレードが占めている。
関東の日産販売店のベテランスタッフはこう話す。
「おかげさまでこの2台は好調な滑り出しを飾っています」
では、キックスとエルグランドを、自動車ジャーナリストの桃田健史氏はどう見ているのか。
「日産は"想定以上"というが、ユーザーやメディアから見れば"想定内"。デザイン、走り、使い勝手、価格など、"日産のやる気"がクルマ全体から漲(みなぎ)っており、そこそこ売れるのは当然だと思う人が多いはず。ただし、いわゆる新車効果がどこまで続くのか。新車効果後の数値こそが、日産ブランドの定着度を測る尺度になるでしょう」
そして、日産再建を考えるうえでもうひとつ見逃せないクルマがある。昨年末に市場投入された軽スーパーハイトワゴンのルークスだ。日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会の発表によると、上半期(1~6月)の新車販売総合ランキングで、ルークスは5万3173台、前年比144.1%を記録。日産車で唯一トップ10入りを果たした。
もちろん、数字だけを見れば善戦している。しかし、トップのホンダN-BOXは10万2419台。2位のスズキ・スペーシアは8万3229台。7位にはダイハツ・タントが6万2419台で続く。車両自体の評価は高い。それでも軽スーパーハイトワゴン市場の三強を崩し切れていないことに、歯痒(がゆ)さを感じる日産ファンも少なくないだろう。
ルークスは広い室内と先進装備を進化させ、軽スーパーハイトワゴンの魅力を徹底追求
だが、桃田氏は別の視点からその価値を評価する。
「トップ軍団に手が届かないというよりは、善戦していると見るべき。そもそも日産の軽は、販売店にとって顧客流出を防ぐための防波堤。また、ルークスをきっかけに入ってきた顧客は、ノートやキックスへと乗り換えてもらうための、日産事業成長の源泉となり得るクルマです」
この新型車攻勢は本当に日産復活への追い風となるのだろうか。桃田氏はこう分析する。
「キックスとエルグランドは、日産の知見が集約した秀作。デザインの特徴はあるが、クルマ全体としてはけっして奇をてらっていない。さまざまな面で他ブランドとの違いを打ち出している。その反面、差別化要因が強過ぎると感じる人が増えれば、おのずと販売台数は頭打ちになるのではないでしょうか」
今後の日産に必要な商品戦略とは何なのか。桃田氏はこう続ける。
「"良いクルマ"を市場投入し続けながら、販売店における顧客サービス満足度を高める。その結果として日産車の課題であるリセールバリューが向上していけば、日本市場のみならずグローバルでの日産復活の流れを生みます」
そして何より、ファンが知りたいのは、今の日産の勢いが本物なのかということだ。
日産のフラッグシップにふさわしい、威風堂々たるフロントマスクの新型エルグランド。先代エルグランドやフーガからの買い替えに加え、他社車からの乗り換え需要も
「クルマメーカーですから、自分たちが世に送り出す商品の質が上がり、ブランドイメージが高まれば、会社全体が明るい雰囲気となり、次世代に向けた変革への社員の本気度も上がってくるはず」
キックスの受注は1万6000台超。エルグランドも1万台が視野に入る。数字だけを見れば、日産の新車攻勢は順調なスタートを切った。だが、販売店や専門家からは「キックスとエルグランドを含め、新車を放置せず、常に磨き続け、進化させてほしい」という声も聞かれる。
つまり、本当の勝負はここからだ。新車効果が落ち着いた後も売れ続けるのか。そして、「また日産を選びたい」と思う顧客をどこまで増やせるのか。キックスとエルグランドの好発進が示したのは、日産復活そのものではない。再建への挑戦に対し、市場がもう一度関心を寄せ始めたという事実である。その期待を確かな信頼へと変えられるか。日産再建の真価が問われるのは、むしろこれからだ。