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「アポロの月面着陸はスタジオで撮影された作り話だった」という陰謀論は、半世紀以上たった今も語られ続けている。本記事では、代表的な疑問を月の環境と写真撮影の原理から検証し、月面着陸を裏付ける物証と、2026年に有人月飛行を再開したアルテミス計画までを紹介する。
目次
アメリカの「アポロ計画」は、1961年から1972年にかけてNASAが実施した有人月面着陸計画である。1969年7月20日(協定世界時)にアポロ11号が人類初の月面着陸に成功し、計画全体では11号、12号、14号、15号、16号、17号の計6回の有人月面着陸を成功させた。月面を歩いた宇宙飛行士は12人で、その人数はアポロ計画以降増えていない。
一方で、アポロ11号の月面着陸は作り話だと考える人は世界各地に存在する。代表的な主張は、NASAが公開した写真や映像は地上のスタジオで撮影されたものだというものだ。「当時のNASAには月に行く技術がなかった」「宇宙線を浴びた飛行士は生きていられないはずだ」といった主張もある。
捏造説の多くが根拠とするのは、地球に届けられた写真や映像である。特に、空気がないはずの月面で星条旗がなびいて見える、黒い空に星が映っていない、影の向きがそろっていない、という3つの疑問がよく挙げられる。
陰謀論を研究するフランスの研究者ディディエ・ドゥソルモー氏はAFPの取材に対し、メディアが伝えた出来事の映像を読み解くことを軸に「すべては仕組まれていた」と訴える陰謀論は、月面着陸が最初だったとの見方を示している。
疑いが消えない理由の一つは、月面の環境が地球とまったく異なることだ。空気のない月面の写真を地球上の感覚で見ると、不自然に映る現象が少なくない。
もう一つは、1972年のアポロ17号以降、人類が長く月を再訪しなかったことである。「なぜNASAは月に戻らないのか」という問いに対し、「実は月に行っていない」という陰謀論が答えとして語られてきた。
ただし、疑う人が多数派というわけではない。米調査会社ギャラップのデータでは、2000年前後に月面着陸を疑っていた米国人は約6%にとどまる。一方、同時期のロシアでは国民の半数以上が、米国を最初に月へ到達した国と認めていなかったとされる。
旗がなびいて見える理由 星条旗は、垂直のポールと、その上端から水平に伸びる棒で吊るされていた。映像で旗が揺れているのは、宇宙飛行士がポールを回して立てたためで、その動きが布に伝わり、空気がなくても波打つ。静止した写真で布が波打って見えるのは、アポロ11号で水平の棒を伸ばしきれず、しわが残ったためだ。以降のミッションでは、見栄えのためにあえて伸ばしきらずに設置している。

星が写らない理由 月には大気がないため空は黒いが、アポロの着陸はいずれも月面の朝に行われ、太陽に照らされた地表や白い宇宙服は非常に明るかった。白飛びを防ぐために露出時間を短くしていたため、かすかな星の光はフィルムに写らなかったのである。
影の向きがそろわない理由 照明が複数あったのなら、一つの物体から複数の影が伸びるはずだが、写真の影は一つである。影が平行に見えないのは遠近法によるもので、太陽が低く影が長いとき、3次元の風景を2次元の写真に写すと、距離の異なる物体の影は平行でないように見える。
アポロ計画では、合計382kgの月の石が地球に持ち帰られた。分析によって、月の白っぽく見える部分(高地)の岩石がとても古いことなどが分かり、月がどのようにできたのかを探る研究が大きく進んだ。この研究は現在も続いている。
また、アポロ11号、14号、15号の着陸地点にはレーザー反射鏡が置かれ、地球からレーザーを当てて月までの距離を測る観測が今も続いている。反射鏡は旧ソ連の無人探査車にも積まれていたため、それだけで有人着陸の証明にはならないが、記録どおりの場所で今も使われていることは着陸を裏付ける材料の一つになる。さらに2009年には、NASAの月探査機「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」が、月面に残るアポロ宇宙船の残骸を撮影している。
アポロ計画には当時の金額で258億ドルが投じられた。その主な目的は、ソ連より先に米国人を月に立たせ、科学技術の優位性を示すことにあり、目標を達成すると国民の宇宙への関心は急速に冷めていった。有人探査は宇宙事業の中でも最も費用がかかり、政治的な支援も得にくい。技術があっても人を月へ送らなかった最大の理由は、このコストの問題である。
なお、途絶えていたのは「有人」の月面着陸である。無人探査機の着陸は、1966年の旧ソ連のルナ9号とアメリカのサーベイヤー1号に始まり、中国の嫦娥3号(2013年)やインドのチャンドラヤーン3号(2023年)も成功した。日本もJAXAの「SLIM」が2024年1月20日に月面着陸に成功し、5か国目となった。

NASAを中心とする「アルテミス計画」では、2026年4月2日(日本時間)に有人飛行試験「アルテミスII」が打ち上げられた。4人の宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船は月の裏側を回り、4月11日(日本時間)に米サンディエゴ沖の太平洋に着水して無事に帰還した。月面には着陸しない飛行試験だが、1972年から数えて54年ぶりの有人月飛行である。
2027年予定の「アルテミスIII」は月へは向かわず、地球低軌道でオリオン宇宙船と商業月着陸船を組み合わせた運用を試験するミッションと位置づけられている。有人月面着陸は2028年予定の「アルテミスIV」で実施する計画である。ただし、これらは2026年10月時点の計画であり、今後変更される可能性がある。
アポロ計画をめぐる陰謀論は今も語られているが、旗の動きや星が写らないこと、影の向きといった代表的な疑問は、月の環境と撮影の原理で説明がつく。持ち帰られた月の石は現在も研究が続き、着陸地点の反射鏡は観測に使われ、月周回探査機は着陸の痕跡を撮影している。
有人月面着陸が途絶えたのは技術を失ったからではなく、莫大な費用と政治的な目的の変化によるものだった。2026年4月にはアルテミスIIが54年ぶりの有人月飛行を成功させ、現在は2028年の有人月面着陸に向けた準備が進められている。
宙畑「月面着陸から50年以上!アポロ計画の歴史と功績、捏造説の反証事例」
https://sorabatake.jp/5761/
AFPBB News「月面着陸はうそ? アポロ11号を取り巻く陰謀論」
https://www.afpbb.com/articles/-/3234496
月探査情報ステーション「第三話 人類は月へ行っていない!?」
https://moonstation.jp/discover/popular/story03
ギズモード・ジャパン「57年前に持ち帰られた「月の石」は、いまだに解けない謎だった」
https://www.gizmodo.jp/article/lunar-rock/
JAXA 宇宙科学研究所「ISASメールマガジン 第349号」
https://www.isas.jaxa.jp/j/mailmaga/backnumber/2011/back349.shtml
sorae「50年以上経っても現役。宇宙飛行士が設置した月面の実験装置は今も使われ続けている」
https://sorae.info/space/2019_7_25_lr3.html
Forbes JAPAN「アメリカが月を54年間再訪しなかった理由と、いま月を目指す理由 アルテミス計画の真の狙い」
https://forbesjapan.com/articles/detail/90958
TECH+(マイナビニュース)「やったぜSLIM、月への道 - どこでもサイエンス(276)」
https://news.mynavi.jp/techplus/article/dokodemo_science-276/
SPACE CONNECT「アルテミスⅡが帰還!2028年「アルテミスⅣ」の月面着陸に向けた一歩に」
https://space-connect.jp/artemis2-end/
sorae「NASA「アルテミスIII」ミッション用のSLSブースター組み立て完了 射点で推進剤の充填試験へ」
https://sorae.info/space/20261014-artemis-iii.html