10.22ドラフト会議が10倍楽しめる!
10月22日に開催されるプロ野球ドラフト会議。今年も有望株が多くそろっているが、週刊プレイボーイが注目したのはユニークな背景のある選手。そんな未来のスター候補を紹介していきます!
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【ドラ1候補にも歴史あり】
「人に歴史あり」という言い回しがあるが、プロとして一本立ちしていないアスリートであっても、さまざまな歴史が詰まっているものだ。
10月22日に実施されるプロ野球ドラフト会議で指名される可能性があるドラフト候補の中にも、ユニークなバックグラウンドを秘めた選手が多数いる。そんな有望選手を紹介していこう。
今年のドラフト戦線は3人のトップランナーがいる。身長195cm、体重102kgの二刀流の怪童・菰田陽生(山梨学院高)、近未来の侍ジャパンを担える本格派右腕・鈴木泰成(青山学院大)、チームを勝利に導く司令塔・渡部 海(青山学院大)である。この3選手がドラフトの中心になるのは間違いないだろう。
菰田陽生(山梨学院高) 195cm、102kgの二刀流の怪童。兄も身体能力抜群
中でも特徴的な生い立ちなのは菰田だ。父・英典さんが趣味のサーフィンに没頭するため、愛知県から千葉県御宿町へと移住。サーフィンで波を自在に乗りこなした父の影響なのか、菰田家の運動能力は抜群。同じくプロを目指す兄の朝陽(上武大3年)は50m走5秒7と学生球界きっての快足だ。
弟の陽生は小学2年時には3学年上の朝陽の身長を抜かし、現在では20cmも高いが、投打に超高校級のパワーを発揮する陽生は、「兄と鬼ごっこをしても絶対に追いつけないので、よく泣いていたっす」と明かす。
陽生が体格に恵まれているだけでなく、身体操作性に優れているのは、菰田家に受け継がれるDNAが大きな要因なのかもしれない。
渡部 海(青山学院大) 即戦力捕手として注目される。幼い頃から阪神ファン
即戦力捕手として注目される渡部は父・達人さんが熱心な阪神ファンだった影響で、自身も甲子園球場に通う虎ファンに。なんと阪神のユニフォームを着て保育園に通っていたという。
阪神は坂本誠志郎など捕手陣の高齢化が進んでいるだけに、渡部は補強ポイントに合致する人材。相思相愛の縁が紡がれるのか注目される。
【勉学にいそしんだ秀才ドラフト候補】
ドラフト上位候補の中で変わった経歴を歩んできた選手といえば、藤澤涼介(東京ガス)がいる。栃木の強豪・佐野日大高でプレーしたが、「勉強内容が物足りない」と野球部員でひとりだけ特別進学クラスに編入。ほかの部員よりも長く授業を受け、いつも練習に遅れて参加していた。
藤澤涼介(東京ガス) コロナ禍に猛勉強して国立大に進学した理系の強打者
高校3年時には新型コロナウイルスの感染拡大のため、野球部の活動がストップした。全国の高校球児が自宅で自主練習に励む中、藤澤は1日10時間に及ぶ猛勉強にいそしんだという。
そのかいあって、国立の難関である横浜国立大に現役合格。当初は大学で野球を続けるつもりはなく、「大学院に進んで、理系の研究職に就きたい」という願望を持っていた。
ところが、横浜国立大の野球部には高度な技術論やトレーニング論を勉強する先輩がおり、藤澤も感化されていく。なんでも理詰めで考える性質もチームの水に合った。藤澤は大学日本代表候補合宿に招集されるほどの強打者に成長し、社会人の名門・東京ガスから熱心なスカウトを受ける。
社会人での2年間では、公式戦でノーヒットに終わった試合が「2、3試合しかない」と振り返るほど安打を量産。今や即戦力としてNPBスカウトから熱視線を浴びる存在に成長した。
藤澤は大学の4年間があったからこそ、今の自分があると証言する。象徴的なのは、「感情に左右されなくなってから、チャンスに強くなりました」という考え方だ。
「チャンスになると相手バッテリーは感情的になって、配球が単純になります。点を取られないようにと、自信のある球しか投げてこない。だから配球が読みやすく、狙い球を絞れるんです。打者の『打ってやる』という感情はむしろ邪魔になるんです」
机の上で磨き上げた理系思考がプロの舞台でも大きな武器になるはずだ。
同じく外野手としてドラフト上位候補に挙がる榊原七斗(明治大)も唯一無二の足跡を刻んでいる。榊原は左投げ左打ちで、今でこそプロ顔負けのスローイングを見せる外野手だが、野球を始めた当初の数年間は右投げだった。ところが、左腕でボールを投げたほうが球威があったことから、左投げに矯正している。
榊原七斗(明治大) 173cmと上背はないが、プロ並みのスローイングを見せる外野手
箸もペンも右利きで、野球ボールだけ左利き。ハンドボールやドッジボールのように大きな球は右手で投げる。榊原は「野球以外は左の手のひらに乗せながら投げると違和感があるんです」と語る。
一般的な球児は中学に入学するタイミングで中学硬式クラブチームに入団するが、榊原は小学4年時に中学硬式クラブの全播磨硬式野球団ヤングに飛び級で入団している。
兄が同チームに所属しており、指導者から勧められるままボールを投げたところ、「ウチでやってみないか」と誘われたという。榊原は「硬式を早く始めることで、誰よりも先にうまくなりたい」という野心を抱き、入団を決意する。
その後は小学5年生から3年間、中学1年生のチームで練習し続けた。榊原は「中にはおっさんみたいな選手もいたので、打球が怖かったです」と振り返る。
身長173cmと上背のない榊原だが、大男に交じっても見劣りしないパフォーマンスを発揮できるのは幼少期からの体験が大きいのだろう。
【進路に悩んだ高校生の候補たち】
高校生は多感な時期。自分の将来を見据えて、さまざまな夢を抱くのも理解できる。
丹羽涼介(市和歌山高)は身長184cmの長身から真下に叩きつけるような角度を武器にする右腕。最速151キロを計測し、高校2年春には甲子園でも快投を披露している。
丹羽涼介(市和歌山高) 184cm。最速151キロを計測。美容師の道も熟考した
そんな好素材にもかかわらず、丹羽はプロ野球選手になるか、美容師になるか悩んだ時期があった。高校卒業後は野球をやめ、専門学校に通う道も熟考したという。
最終的にはプロ志望届を提出、まずはプロ野球選手を目指すことに。その動向にやきもきさせられたあるスカウトは「独特な感性の持ち主ということでしょう」と苦笑していた。
丹羽が〝投げる美容師〟なら、三重を代表する好右腕・石川大介(昴学園高)は〝投げるすし職人〟である。石川の実家は近鉄四日市駅近くの名店「尚鮨」で、父・典民さんは2代目店主としてのれんを守っている。
石川大介(昴学園高) 今春の三重大会でチームを優勝に導いた好投手。実家はすし店
石川は幼少期からすしに親しみ、時にはすしを握る練習もしてきた。好きなネタは赤貝。石川は「すしは大好きですし、自分で店を終わらせたくない思いもあって、めっちゃ迷います」と語る。
昴学園高はかつて三重県内で弱小校として知られていたが、石川はエースとして今春の三重大会優勝に導いている。すしを握る繊細な指遣いは投球にも生かされており、縦横無尽に動くスライダーなどボールを器用に操っている。
まずはすし職人の夢にフタをして、プロ志望届を提出。育成ドラフト指名でもプロに進む意思を示している。
【慶応義塾大のドラフト候補に注目!】
東京六大学の名門・慶応義塾大からは、7選手がプロ志望届を提出している。いずれも実力派ばかりだが、その背景もなかなか興味深い。
主将の今津慶介は北海道の進学校・旭川東高の出身。父・寛介さんは現職の旭川市長で祖父の寛さんは元衆議院議員。慶介も将来は政治家を志し、夢は「総理大臣」とスケールが大きい。
今津慶介(慶応義塾大) 今年の慶応大主将。類いまれな行動力とリーダーシップを持つ
高校時代には学業の一環で旭山動物園の支援に取り組み、友人とクラウドファンディングを実施。1000万円を超える金額を集めている。慶応義塾大のAO入試を受験した際には、その実績が高く評価されたとみられる。
慶応義塾大では3年時からレギュラーの座をつかみ、左の強打者として活躍。今夏は大学日本代表に選ばれた。技術だけでなく、類いまれな行動力とリーダーシップを持つドラフト候補は希少。NPBスカウトはどんな評価を下すのか。
慶応義塾大ではほかにも最速156キロの速球派右腕・広池浩成が学生とは思えない影響力を持つ。SNSを通して積極的に情報発信をしており、現役高校球児からの技術相談に乗ることもあるそうだ。エリート校らしい思考力の高さを感じさせる存在だ。
そんな広池の父・浩司さんは西武の編成責任者である球団本部長を務めている。浩司さんもまた、現役時代は数奇な野球人生を歩んでいる。立教大時代は強打の外野手として活躍したものの、大学卒業後は全日空へ入社。野球から離れた日々を送った。
しかし、かつてしのぎを削ったライバルがプロ野球選手として空港からさっそうと飛び立つ姿を見て、一念発起。希少性の高い左腕投手として広島の入団テストを受験し、ドミニカ共和国にあるカープアカデミーで修業を積んだ。1998年にドラフト8位で入団後は通算248試合に登板、リリーフとして活躍した。
息子・浩成も、父と同じように華やかな舞台に立つことができるのか。運命の時が刻一刻と迫っている。
選手の大型化が進む野球界にあって、異彩を放つのが樫村佳歩(セガサミー)だ。身長166cmと小柄ながら、最速153キロの快速球を武器にする右投手である。
今夏の都市対抗ではJR東日本の補強選手に選ばれ、好投を披露。バックネット裏に詰めかけたスカウト陣も身を乗り出して見入っていた。
樫村は立正大を卒業し、セガサミーに入社して1年目。通常なら大卒の社会人選手は入社2年目にならないとドラフト解禁にならないが、セガサミーは今年限りで廃部になることが決定している。樫村は特例でドラフト対象になっているのだ。
タイプ的には、かつてプロ通算167セーブを記録した武田 久(元日本ハム)に近い。武田も身長170cmと小柄な体格ながら、浮き上がって見える軌道の快速球を武器にプロ球界で地位を築いた。偉大な先人に続くために、小さな大投手が次なる一歩を踏み出す。
変わり種の宝庫である独立リーグからは、BCリーグの川平真也(茨城アストロプラネッツ)を紹介したい。身長187cm、体重95kgのたくましい体躯から、最速154キロのクセ球を投げ込む。今秋にかけて、NPBスカウト陣の評価がうなぎ上りのロマン型右腕だ。
川平真也(茨城アストロプラネッツ) 187cm、95kgの体躯から最速154キロを投げ込む。父はアメリカ人
そんな川平はアメリカ人の父を持ち、8人きょうだいの3番目に生まれた。8人中7人が男子で、一家そろって食欲旺盛だったという。これまで経済的な負担をかけてきたこともあり、川平は「なんとしてもNPB入りして、恩返しがしたい」と意気込む。
ここまで紹介してきたように、選手ひとりひとりに濃厚なドラマが隠されている。10月22日のドラフト会議では、ひとりでも多くの選手に吉報が届くことを祈りたい。