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自転車による危険な集団走行では、歩行者を威圧する行為も見られるという。こうした動きが全国に広がることを懸念する声も、今回の取材で数多く耳にした
ドライバーから大ブーイングが上がる、自転車による集団暴走「名古屋ライド」。危険な走行を繰り返すだけでなく、その様子を動画に収め、SNSで発信する少年たちもいる。なぜ彼らは危険を冒して走り、その姿をネット上の見知らぬ他人に見せたがるのか。専門家への取材をもとに、その実態に迫った。
ウイリー、蛇行、車道での集団走行......。
愛知県名古屋市周辺で、自転車による危険な集団走行が問題になっている。
SNSで仲間を募り、公道を走り回る少年たち。2025年9月ごろから集団走行が確認され、2026年9月にはバスの通行を妨げた疑いで男子中学生2人が、さらにパトカーの通行を妨害した疑いでも別の男子中学生2人が逮捕されたとの報道が出ている。
現地のドライバーからは、こんな声も。
「電動キックボードやモペットより、チャリンコ暴走族のほうが厄介だね」
こうした行為は、どのような法的責任を問われるのか。自動車ジャーナリストの桃田健史氏は、自転車の交通違反に対する制度の変更を踏まえ、こう説明する。
「自転車は道路交通法上の『車両』であり、自動車やバイクと同じく交通ルールを遵守しなければなりません。今年4月1日の道交法改正の施行によって、自転車の交通違反については、16歳以上で交通反則通告制度、いわゆる青切符が導入されました。また、日本では刑事責任が問える年齢が14歳以上。その上で、14歳と15歳に対する道交法の対応は、個別具体の事案に即して処理されます。場合によっては、刑事手続きである赤切符の対象となります」
実はチャリンコ暴走族は危険走行を繰り返すだけでなく、その様子を撮影してSNSに投稿する。なぜ自らの危険行為を動画に残し、わざわざ不特定多数に見せようとするのか。
モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏は、危険走行が遊びや自己表現になっている可能性を指摘する。
「危険走行そのものが、彼らにとって一種の『遊び』や『自己表現』になっているのではないでしょうか。ウイリーや蛇行走行をすれば注目されますから。昭和の頃に社会問題となったバイクの暴走族と違うのは、安価で身近な自転車とSNSが組み合わさることで、誰でも参加できてしまう環境ができてしまっていることです。動画を撮ってSNSに投稿すれば、さらに反応が返ってくる。そうやって、安全に自転車に乗るよりも、危険なことをやったほうが『面白い』『目立てる』という方向へエスカレートした可能性がありますね」
SNSの反応が、承認欲求を刺激して、さらなる危険走行を促しているという声も、今回の取材で別の専門家筋からも数多く聞こえてきた。
さらに青木氏は、参加のハードルの低さに加え、危険走行そのものがもたらすスリルや集団心理も問題視する。
「自転車は誰でも乗れる乗り物で、免許も必要ありませんし、ガソリン代もかからない。中学生でも自由に乗れるので、暴走行為へのハードルが極めて低い。そして暴走によって、じつに幼稚な『スリル』が加わってしまいます。実際に『名古屋ライド』に参加経験のある少年が、警察に追われることが楽しいという趣旨の話をしていると報じられていますよね」
一方、取り締まる側にとっても難しさがある。桃田氏は、自転車ならではの特性を挙げる。
「社会に対する不満があるという場合もあるだろうが、多くの場合は、遊びの延長だと考えられる。バイクや自動車などと比べて、エンジンなど駆動装置に関連した騒音が出ないため、移動している場所が分かりづらい。また、走行速度もバイクや自動車よりも低く、集団走行の状態がわかりにくい。また解散しやすいため、現行犯逮捕することが難しいのが現状ですね。それでも、地域社会における迷惑行為であり、また道交法に対する違法行為ですから、決して黙認することはできません」
自転車で集団走行する暴走族まがいの行為は、今に始まったものではない。青木氏によれば、1970年代にも「自転車暴走族」や「チャリンコ部隊」と呼ばれるグループが存在していたという。
「実はチャリンコ暴走族は、今回初めて登場したものではありません。1970年代には、暴走族に憧れる中学生が自転車で集団走行する自転車暴走族やチャリンコ部隊と呼ばれる存在が確認されています。当時の暴走族は、若者たちのエネルギーのはけ口のひとつでした。バイクに乗り、改造し、仲間と集団で走る。それに憧れる中学生がいても、免許がないのでバイクには乗れない、お店でも買えない、そもそもそんなお金もない。そこで自転車を使って、暴走族のスタイルを真似たわけです」
バイクへの憧れから自転車で暴走族のスタイルをまねる。その構図自体は半世紀前から変わっていない。ただし、大きく変わったものがある。SNSだ。
「昔は仲間内で『アイツ、すげえな』と言われるためにやっていたものが、今は動画にして投稿すれば、不特定多数の人に見てもらって、いいねをたくさんもらえる」(青木氏)
とはいえ、危険な集団走行に遭遇した場合、ドライバーはどう対処すべきなのか。桃田氏は、まず距離を取ることが重要だと話す。
「遭遇した場合、近づかないこと。または、コンビニやスーパーの駐車場など、一時的に退避することを考えるべきです。そして即座に警察へ通報する」
無理な追い越しや接近は避け、安全な場所へ退避して通報する。ドライブレコーダーを搭載している場合は、映像を保存しておくとトラブル発生時の確認にも役立つ。
では、危険走行を減らすには何が必要なのか。
桃田氏は、学校での交通安全教育を提案する。
「小学校、中学校、高等学校において、自転車による違法行為がもたらす社会的影響と、自身の安全に対する影響について定期的にレクチャーするべきでしょうね」
重大事故が起きてからでは遅い。取り締まりと交通安全教育の両面から国は対策を進める必要があるのではないか。