あの人気AV女優があなたの家に――「日本製ラブドール」の逆襲が始まった!!

取材・文/小山田裕哉 撮影/後野順也

モデルとなった女優の蓮実クレア本人(右)と等身大のラブドール(左)モデルとなった女優の蓮実クレア本人(右)と等身大のラブドール(左)

国産ラブドールの老舗として有名な「オリエント工業」が、セクシー女優との公式コラボ商品を発売! シェアを大きく伸ばす海外製に対し、"挑戦者"の立場で作ったという製品にはどんなこだわりが込められている? 社長と製作担当、モデル本人に聞いた!

【アジアだけでなくアメリカからも注文】

日本を代表するラブドールメーカーとして、半世紀近い歴史を誇るオリエント工業から、人気セクシー女優の等身大ラブドールが発売された。

まずは写真を見てほしい。画面越しに何度も見てきた「蓮実(はすみ)クレア」「深田えいみ」「美園和花(みその・わか)」という3人の女優たちのラブドールだ。その体の隅々まで3Dスキャンを実施することで、魅惑的なプロポーションを完全再現。そこに本人がいて、今にも動き出しそうな圧倒的な存在感を実現している。

左から蓮実クレア、深田えいみ、美園和花モデルのラブドール左から蓮実クレア、深田えいみ、美園和花モデルのラブドール

同社が長年培ってきた職人技とテクノロジーの融合が生み出した驚異のラブドールは、いかにして生まれたのか。代表取締役社長の岡本祐也さんが、次のように話す。

「近年は中国製など海外のラブドールが急速に進化し、日本においてもシェアを大きく伸ばしています。技術的にも海外に追いつかれたという危機感がありますが、オリエント工業にはパイオニアとしての誇りがあります。

その価値を知ってもらうには伝統を守るだけでなく、〝挑戦者〟の立場になって意欲的な商品を生み出していかなければなりません。そこでアジアを中心に国際的に知名度のあるセクシー女優の方々に協力いただき、この等身大ラブドールを企画したのです」

実際、発売するとすぐに国内外から反響があったという。

「現在はECサイトのFANZA限定での発売ですが、それでも韓国や中国、さらにはアメリカからも注文が来ています」

気になる等身大ラブドールの価格は1体50万円。人によっては高いと感じるかもしれないが、オリエント工業の標準的なラブドールは80万~100万円ほどの価格帯。それに比べると手頃な値段に設定されているのはどうして?

「これには宣伝としての意図もあるからです。この機会にラブドールをあらためて知っていただきたいですし、『ラブドールといえばオリエント工業』というイメージをいま一度広めたいと思っています」

【写真を再現してもそっくりにならない】

3Dスキャンも、そこから人形を作る技術も、以前から確立されていたもので、このために新たに開発されたわけではない。海外でも前例はある。しかし、これまで見たことがないほどのリアルさが、この等身大ドールにはある。

その秘密はどこにあるのか。製造工程に詳しい同社取締役の大澤瑞紀さんがこう明かす。

「それはやはり、細部まで人の手が入っていることです。単に3Dデータをドールで再現するだけなら、それほど手間はかかりません。しかし、どこから見てもリアルに見えるようにするには、繊細な職人技が欠かせません。

まず、全身のスキャンデータから作った模型を原型師が調整し、目元や口元の微妙な造形や身体の曲線具合など、スキャンだけでは拾いきれない細部の表現を突き詰めていきました。あとはメイクですね。特に今回は実在の女優さんがモデルなので、メイクの調節にはかなりの時間がかかっています」

メイク担当者もうなずく。

「その人の写真を再現すればリアルになる、というわけではないんですよ。撮影する角度やその日のメイクによっても、女性の印象は変わってしまいますから。大切なのは、普段その女優さんがどういうふうに見られているのか。

その曖昧なイメージを形にできなければ、ファンの方から『こんなのは◯◯さんじゃない』と言われてしまいます。

だから、写真の資料だけでも何百枚も見ましたし、モデルの皆さんのSNSの画像もほとんどチェックしました。そうやって女優さんの〝印象〟を頭の中で具体化できるようになって、初めてメイクができるようになるんです」

本人の再現というよりは、その女優のイメージをドールに定着させる作業だった?

「そうですね。その女優さんの顔に積み重なっている〝何か〟も表現できたら、と思ってメイクをしました。ただ、写真の再現という明確なゴールがあるわけではないので、『これで完成だ』という判断がなかなかできないんです。それで、締め切りまでずっと微調整を繰り返していました。

いつもこうなってしまうんですけど、今回は実在の人物をモデルにしたせいか、さらに時間がかかってしまいました。でも、そのおかげで『今にも動き出しそう感』がすごく出せたと思います」

【本人が知らなかったホクロまで完全再現】

では、モデルになった本人はどう感じているのか。率直な感想をモデルのひとりである蓮実クレアさんに聞いた。

――「蓮実クレアモデル」と対面したとき、どれくらい似ていると思いました?

蓮実 初めて袋から出したとき、「私が出てきた!」って思いました。自分が経営している歌舞伎町のバーのお客さんに触ってもらおうかなと思っていましたが、これくらいうり二つだと、もし雑に扱われたらイラッとしちゃうので、そう簡単には触らせられないですよね(笑)。

「『嫁に迎える』くらいの気持ちで買ってほしいです」(蓮実クレア)「『嫁に迎える』くらいの気持ちで買ってほしいです」(蓮実クレア)

――それほどの再現度だと。

蓮実 全身はもちろん、細かい所もすごく似ていて。特に横顔なんて、鼻の湾曲した感じがそっくりです。あと、膝小僧が本当にそのまんま。足の血管の浮き具合まで一緒で、体のパーツだけ撮影したら、私でも見分けがつかないかもしれません。

ラブドールの膝と手の接写。本人は「膝小僧が特に似ている」と絶賛しており、ほかにも鼻筋やヒップラインの再現度が高いというラブドールの膝と手の接写。本人は「膝小僧が特に似ている」と絶賛しており、ほかにも鼻筋やヒップラインの再現度が高いという

――本人だけがわかる「似ているポイント」は?

蓮実 シワまで再現しているから、実は手相もまったく一緒なんです。それに全身スキャンなので、私も知らなかった所にホクロがあることがわかって。「お尻のこんな所にホクロがあったんだ」と、このコを見て初めて気がつきました。

――ドールというより、もはやドッペルゲンガーですね。

蓮実 そうですね。ただの人形じゃないですよ。私もひとりの女性として接してしまいますから。

実際、購入を検討しているという方に聞いてみたんです。「やっぱり夜の生活に使うの?」って。でも、「いや、そういう扱いはできない」と言っていて。男性も大事なパートナーとして扱いたくなるほどの存在感があるんです。だから、「ぜひ気軽に買ってください」とは言えないですよね。もし購入するなら、「嫁に迎える」くらいの気持ちで買ってほしいなと思います。

上が蓮実クレア本人で、下がラブドール。本人が「雑に扱われたらイラッとしちゃいそう」と言うほど、実在感がある上が蓮実クレア本人で、下がラブドール。本人が「雑に扱われたらイラッとしちゃいそう」と言うほど、実在感がある

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前出の岡本社長も、「オリエント工業のラブドールに支えられている人は大勢いるんです」と語る。

「うちのラブドールは創業以来、性的な満足だけでなく、〝心の安らぎ〟も得られる製品を目指してきました。過去にはオリエント工業のラブドールに出会って自殺を思いとどまったという方もいたそうです。

これは海外製にはない、うちならではの魅力だと思っています。そういう強みを生かした、あっと驚くような企画を今後も仕掛けていく予定です。実はもう第2弾も完成していて......」

そう言って岡本社長が取り出したのは、3人の女優たちのミニサイズドール。スキャンデータはそのままに、サイズだけを大幅に縮小した。以前から寄せられていた「もっと気軽に連れて歩けるドールが欲しい」という要望が、ついに実現したのだといい、年内には発売する予定だ。

単なる性の道具ではなく、人間の良きパートナーをつくり出そうとするオリエント工業の挑戦は、まだまだ続く。

新たな試みとして、持ち運び可能なミニサイズドール(中央)の発売も予定新たな試みとして、持ち運び可能なミニサイズドール(中央)の発売も予定

●蓮実クレア(はすみ・くれあ)
身長158㎝、B88、W62、H92。2012年、"今世紀最大の極上痴女"というキャッチコピーでデビュー。22年に惜しまれながらも引退するが、今年1月に復帰し、精力的に活動を続けている

  • 小山田裕哉

    小山田裕哉

    おやまだ・ゆうや

    1984年生まれ、岩手県出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映画業界、イベント業などを経て、フリーランスのライターとして執筆活動を始める。ビジネス・カルチャー・広告・書籍構成など、さまざまな媒体で執筆・編集活動を行っている。著書に「売らずに売る技術 高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密」(集英社)。季刊誌「tattva」(BOOTLEG)編集部員。

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