友清 哲
ともきよさとし
友清 哲の記事一覧
ルポライター、編集者。1974年生まれ、神奈川県横浜市出身。編集プロダクションを経て、1999年よりフリーライターとして独立。2001年から「このミステリーがすごい!」の編集に携わり、エンターテインメントの評論活動を行なう。17年には父親をテーマにしたアンソロジー『I Love Father』に参加し、小説家デビュー。『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』など著書多数。
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最近、外食大手が新業態として町中華の店を次々と出している。なぜ今? そもそも「大手の"町"中華」とは? 全部に訪れて、ガチ度を調べてきた!
※データはすべて10月12日時点(価格は税込)。店舗によってメニューや価格が異なる場合があります。
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手頃な価格でおなかを満たせる町中華。中華といってもラーメンや炒飯、餃子のほかにカレーやカツ丼など幅広いメニューを用意しているのが特徴で、たいてい1000円前後に収まるコスパと、昭和レトロな雰囲気を備える。
「町中華という言葉でくくられるようになったのは最近のことですが、これはおよそ1970年頃から始まった形態です。当時は今のように大手の外食チェーンが定着する前ですから、中華に限らないメニューを提供するようになったのは、日本人が好む外食の形に自然とアジャストした結果なのかもしれません」(外食ビジネスアナリスト・三輪大輔氏)
そんな町中華に今、大手外食チェーンが続々と参入しているのをご存じだろうか。牛丼チェーン「松屋」を展開する松屋フーズHDや、「築地銀だこ」のホットランドHDなどが、新業態として次々に町中華の看板を掲げているのだ。
なぜ大手企業がこの分野に着目しているのか。三輪氏が解説する。
「まず大きいのは、立地の自由度でしょう。昨今、郊外でも町場でも、好条件の物件は競争率が高く、なかなか取得できません。その点、郊外でも町場でも成立する町中華は既存の物件を転用することも可能ですし、さほど広いテナントでなくても対応しやすいメリットがあります。
さらに、ラーメンや炒飯といったメニューは、老若男女が楽しめるもの。つまり幅広い客層が見込める上、ランチタイムの展開も可能ですから、一日かけて集客できます。これは経営効率の面で見逃せない魅力でしょう」
人手不足も追い風になっているという。
「最近では厨房テックの発達が目覚ましく、例えば炒飯が自動で作れたり、フライヤーの操作が簡略化されたりしています。その結果、町中華は少人数のスタッフでも比較的運営しやすい業態になっています」
その一方で、三輪氏は町中華の魅力のひとつに〝ライブ感〟を挙げる。
「多くの店舗は客席から厨房が見えやすい、いわばオープンキッチンの間取りを採用しているため、中華鍋を振る音や、食材を炒める音などが自然と耳に入ります。これこそが古き良き昭和の食堂を思わせる体験価値ですから、ある程度は厨房が自動化されるにしても、各運営会社はこうした世界観を大切にしている印象を受けます」
大手の運営であっても、町中華らしくあるべき。いや、あってほしい。では、新興の各店はどこまで〝ガチの町中華〟なのか!? めぼしい店舗を実際に訪ねてみた。
リポートに当たって今回重視したのは、編集部で独自に設定した〝町中華度〟だ。必ずしも中華に限定しないメニュー構成やコスパの良さ、あるいは入り口ののれんやカウンターなどの空間設計。さらにビールは瓶で、昔ながらの小さなコップで出されるなら最高だ。
ほかにも、「カウンターは赤であるべき」とか、「床はベタベタしているほうがそれっぽい」とか、極めて恣意的な意見に基づいてチェックポイントを設定した。
まずは、「甘太郎」などの居酒屋チェーンの展開で知られるコロワイドの「甘太郎食堂」から。今回訪ねた馬車道店(神奈川県)は随所に赤が配色された内装で、それだけで町中華風に見えるのが面白い。残念ながら(?)カウンターの天板はホワイトだったが、ムードはある。
ひときわ目を引いたのは、餃子にミニ枝豆、さらに選べるおつまみ1品(ザーサイきゅうりやねぎメンマ、煮卵など)にドリンクが1杯ついて1000円という「寄り道晩酌セット」。このコスパの良さは大手ならではだろう。
また、通は人気のチャーシューエッグをライスセットとオーダーするそうで、こちらは合わせて1190円。ふわりと噛み切れる厚めのチャーシューはタレとマヨネーズとの相性も良く、米が進む。これは、ランチでもディナーでもビジネスパーソンの憩いの場となりそう!
甘太郎食堂(コロワイド) 神奈川県に2店舗を展開。横浜発祥のご当地麺「サンマーメン」もメニューにあり。人気のチャーシューエッグは、ふわりと噛み切れる厚めのチャーシューがおいしかった
○チャーシューエッグ+ライスセット(1190円) ○スーパードライ大瓶(690円)
●甘太郎食堂(コロワイド)
<町中華度チェック>
・非中華メニューがある......×
・ビールは瓶+小グラス......○
・ハイコスパ......○
・のれんがある......○
・カウンターがある......○
・赤いカウンター......×
・中華鍋の音がする......○
・床がベタベタ......×
続いて訪れたのは、「焼肉きんぐ」で有名な物語コーポレーションの新業態「町中華 丸福飯店」だ。今のところ運営のお膝元である愛知県豊橋市にしか存在しない店舗で、この日は日曜日だったせいか、開店前から行列ができる盛況ぶり。
カウンターのほか、広めのテーブル席も多く、全体としてファミレス的な造作ではあるものの、中華鍋を振る音や揚げ物の音がひっきりなしに聞こえてくるのはステキ。
セットメニューのバリエーションが豊富で、例えば「五目あんかけ焼きそば」に餃子3個がついて1089円、同じく「ふわとろ天津飯【甘酢あん】」に餃子3個がついて979円など。味のほうも文句なく、全国展開があるなら面白い存在だ。
○麻婆豆腐(649円) ○チャーハン(649円) ○餃子(363円)
●町中華 丸福飯店(物語コーポレーション)
<町中華度チェック>
・非中華メニューがある......×
・ビールは瓶+小グラス......×
・ハイコスパ......○
・のれんがある......○
・カウンターがある......○
・赤いカウンター......○
・中華鍋の音がする......○
・床がベタベタ......×
松屋フーズの「松軒中華食堂」は松屋の店舗を転用するケースが多いのか、コンパクトなスペースで効率的な運営を行なっている印象。入り口の券売機でオーダーするのはいかにもファストフード的で、追加オーダーはモバイルアプリで対応するあたり、従来の町中華とは一線を画している。
紙エプロンが常備されるなど、こうした配慮が良くも悪くも町中華感を薄めはするが、これも松屋のサービス精神。余談だが、朝5時から11時までは「朝ラーメン」が500円で食べられるなど、コスパでは群を抜いている。
松軒中華食堂(松屋フーズHD) キャッシュレス専用券売機の導入や、モバイルオーダーなど、町中華らしからぬ近代化ぶりは松屋由来のもの。炒飯がスープ付きで500円台から食べられる、さすがのコスパ!
○土鍋麻婆豆腐(680円) ○焼豚炒飯(580円) ○焼き餃子5個(290円) ○おつまみ唐揚げ(300円)
●松軒中華食堂(松屋フーズHD)
<町中華度チェック>
・非中華メニューがある......×
・ビールは瓶+小グラス......○
・ハイコスパ......○
・のれんがある......×
・カウンターがある......○
・赤いカウンター......×
・中華鍋の音がする......○
・床がベタベタ......×
このほか、「大阪王将」の運営元であるイートアンドHDが開いた「新御茶ノ水 萬龍」、ホットランドHD「築地銀だこ」の派生業態である「銀だこ点心酒場」、ラーメンチェーンの麺魚グループが展開する「レバニラ中華 満腹」も訪れた。各店の町中華度およびレビューもご覧いただきたい。
●新御茶ノ水 萬龍(イートアンドHD)
<町中華度チェック>
・非中華メニューがある......×
・ビールは瓶+小グラス......○
・ハイコスパ......×
・のれんがある......○
・カウンターがある......○
・赤いカウンター......○
・中華鍋の音がする......○
・床がベタベタ......○
○ハーフ&ハーフの肉野菜炒め+中華そばセット(1078円) ○トリプル生 中瓶 (825円)
●銀だこ点心酒場(ホットランドHD)
<町中華度チェック>
・非中華メニューがある......○
・ビールは瓶+小グラス......○
・ハイコスパ......○
・のれんがある......×
・カウンターがある......×
・赤いカウンター......×
・中華鍋の音がする......×
・床がベタベタ......×
レバニラ中華 満腹(麺魚) レバニラを前面に打ち出す業態だが、ほかの構成要素を極力抜いて、純粋にレバーだけを味わう「純レバ丼」が名物。甘辛いタレは米との相性抜群で、行列ができるのも納得の味
○純レバ丼 大(1200円) ○餃子 6個(650円) ○瓶ビール(590円)
●レバニラ中華 満腹(麺魚)
<町中華度チェック>
・非中華メニューがある......○
・ビールは瓶+小グラス......○
・ハイコスパ......×
・のれんがある......○
・カウンターがある......○
・赤いカウンター......○
・中華鍋の音がする......○
・床がベタベタ......×
正直、「大資本系の町中華」という立てつけに、大いなる語義矛盾を感じてしまうのも事実。しかし三輪氏は、これは「文化の継承」として受け止めるのが適切だと話す。
「50年以上の歴史を持つ町中華ですが、最近では店主の高齢化や原材料費の高騰により、次々に姿を消しているのが実情です。特に後者は深刻で、値上げを我慢するカルチャーもあり、淘汰の波が押し寄せています。
多少無理をしてでも、おなかいっぱい食べて満足してほしい。そんな思いでつながっていたからこそ、町中華は地域で多くの人々に愛されてきたわけです。
しかし、積極的に利益を取りにいかないモデルは、現代ではなかなか生き残れない。本来の町中華が姿を消しつつある今、時代に適応した新たな業態を模索しているとみるべきでしょう」
大手が仕掛ける町中華には、せめてそうしたイズムを少しでも後世に伝えられるよう、企業努力を望みたいところだ。




