"中国人観光客が消えた"京都、大阪ミナミ「この夏はどうだった?」

取材・構成・撮影/ボールルーム

高市発言で激変したインバウンド。2月の春節では嘆き節だったけど......高市発言で激変したインバウンド。2月の春節では嘆き節だったけど......

昨年11月の高市発言で中国からの観光客は激減。今年2月の春節には日本有数の観光地、京都と大阪ミナミの観光業者や飲食店関係者は大打撃を食らっていた。

あれから半年......。

今年のお盆の京都と大阪ミナミの様子やいかに!? 現地に赴いて生の声を聞いてみました!
*3月5日『週プレNEWS』配信「道頓堀はもはやノー中国人! 大阪・京都『観光業の悲哀と光明』」

【暑き京都の夏の人出やいかに!?】

まず向かったのは京都有数の観光地、清水寺。

参道に向かう坂道ですれ違う車は、お盆休みを利用してやって来た国内旅行者なのか、ナンバーが岐阜だったり広島だったり。とにかく京都から遠く離れた地の車が行列を作っていた。

また、参道近くの駐車場を見ると、夕方近い時間だというのに観光バスが何台もずらっと並び、ツアー客が大勢バスから降りてくる。近づいてガイドの話を聞くと、韓国からのツアー客だった。

清水寺に続く参道で行き交うほとんどは外国人観光客。人の密集度は以前の取材を踏まえても、過去最高クラスに思えた。京都のお盆は人であふれている感じだ。

さまざまな国の観光客でごった返す清水寺への参道さまざまな国の観光客でごった返す清水寺への参道

清水寺の参道にいた人力車の車夫に話を聞いた。

「観光客は最近明らかに増えてますね。観光客の方は暑さに敏感なんですが、これまで40℃手前だった気温がお盆に入ってからは台風の影響で30℃前後まで下がったこともあって、さらに増えてる印象です。去年のお盆よりも人が多い感じですね」

参道にある洋菓子店のベテラン女性店員にも話を聞いた。

「観光客は多くなってきてますよ。外国人の方がさらに増えて8割、9割近くになってるのと、昔は中国からの団体観光客一辺倒やったのが、もう私が知らんような国の人までいろんな国から来てはります」

いろんな国から来られると、言葉の対応が大変なのではと尋ねると。

「私は日本語しか使いませんから(笑)。使うとしてもYESとNOとワンツースリーくらいです。それでしっかり通じますよ。要は気持ちですわ」

どのような国からの観光客が増えているのかを探るべく、場所を〝京の台所〟錦市場に移して話を聞いた。

目を引いたのは「ハラールソイソースあります」というパネルを出している鮮魚店。店員に話を聞いた。

「店内でお刺し身とかを食べることができるんですが、イスラム教徒の方向けに、口にしても大丈夫なようなハラールしょうゆを用意しているんです。何が違うのかは、僕もよくわからないんですが(笑)。いろんな国の方がやって来るんで、店側もいろんな国の風習、習慣に対応しなければいけない時代になっていますね」

錦市場ではイスラム教徒の観光客向けにハラールしょうゆを用意する店も錦市場ではイスラム教徒の観光客向けにハラールしょうゆを用意する店も

同じように人気観光地の嵐山でも、インバウンドのおかげで活況が戻ってきたという。嵐山商店街会長の石川恵介さんに話を聞いた。

「今、嵐山の観光客は欧米やアジアからのインバウンドが8割で日本人が2割です。今年のお盆は安定してインバウンドの方が来られるので活況でした。

ただ、私がずっと言ってるのは、日本人、特に地元の方が来なくなったら観光地は終わってしまうということです。地元の方があそこは景色がいいし、行くと楽しい、また行きたいと思って2度、3度と行くから、そこが観光地になっていくんです。

地元の京都の方から嵐山はいいなあと口コミが広がり、その影響で東京や九州からも来てくれる。それを見たり、聞いたりして外国人もやって来るんです。だから、その原点である京都の地元の方たちにええとこやなと思える所にしておくことがすごく大切なんです」

決して、地元住民や日本人観光客をないがしろにしない姿勢が活況を生み出しているのかもしれない。

嵐山では大勢の人の中を人力車が駆け抜けていた。8割が海外の観光客だという嵐山では大勢の人の中を人力車が駆け抜けていた。8割が海外の観光客だという

【大阪ミナミに異変がっ!!】

一方の大阪ミナミはどうだろうか。

訪れたのは、お盆休みで最も人出が多くなるであろう8月14日金曜日の夜。数日前の台風も過ぎ去り、涼しい風さえ吹く絶好の天候だった。

だが、明らかに人の数が少ない......。

ミナミのシンボルである戎橋の上では、観光客がグリコの看板を背にランナーと同じポーズで記念写真を撮るのが定番で、地面が見えないほど人が殺到することも多いのだが、今年は地面がしっかり見えるほどでスカスカだった。

ミナミのタクシー運転手に話を聞いた。

「大阪・関西万博があった去年の夏と比べたら、人の数は明らかに減ってます。日本人だけでなくインバウンドも去年ほど来てない。

タクシー配車アプリでいつもなら1日に30件ぐらい呼び出しがあるんですが、今週お盆に入ってから途端に呼び出し数が半減してます。毎年、お盆は会社が休みになるのでタクシーを呼ぶ人は減るんですけど、今年みたいに半減するのは初めての経験ですわ」

ミナミのシンボルである戎橋も例年より人がまばらミナミのシンボルである戎橋も例年より人がまばら

道頓堀の居酒屋店主にも話を聞いた。

「今もうちのスタッフと話してて『これほんまにお盆なん?』『今年はお盆なかったんちゃう』とか冗談で話してたところなんです。それぐらい店に客が入ってません。私も開店前に『今日はお盆週の金曜日で、常に満席になることを頭に入れて動くようにしましょう』とみんなに指示を出してたんですが、完全にはずれました(笑)」

ミナミの焼き肉店「肉喰」店主の冨田太さんも同様に客数減を嘆く。

「去年のお盆と比べると3割ぐらい客入りも売り上げも減ってます。私の知り合いのミナミで飲食店をやっている連中も今年の6月、7月はかなりヤバかったと口をそろえて言ってますね。なので、お盆休みに限らず、今年はじわじわとミナミの観光客が減っているのは確かです。

そしてやっぱり、インバウンドも減ってます。これはニュースや人から聞いた話なんですが、飛行機代が上がった。特に燃油サーチャージが倍ぐらいに値上がりしてるそうです。いくら円安で、日本の物価が自分の国に比べると安いといっても、交通費が高くなってくると来る人が減っても不思議ではない感じがします。

あと、うちの店はアジア圏のインバウンドが減ったんですが、その分欧米や南米とかからのインバウンドが増えました。これはありがたいことなんですが、お酒を飲みながら食事をするのはアジア圏のお客さんが多いんです。

だからアジア圏の人には肉も売れる、ビールも売れるで大歓迎でした。ところが、欧米からのお客さんは食べるなら食べるだけ、飲むなら飲むだけのどちらかという方が多い。

焼き肉を1、2皿頼んだだけで、ビールばっかり飲んで長時間居座られるんです。これをされると焼き肉店としては売り上げ的にすごく困る。こうした客層の変化も響いています」

京都は活況なのに、大阪のミナミはなぜ引き続き苦しんでいるのだろうか。道頓堀のはずれにあるスーツケース店の店員がこう語ってくれた。

「まあ当然ですよね。京都と大阪ではやって来る外国人観光客の目的がまったく違いますから。京都に来る外国人は寺や神社など日本の歴史や文化に触れたい目的でやって来るので、多少飛行機代が上がっても影響は少ない。

ところが、大阪に来る観光客の一番の目的は買い物、ショッピングなんです。大阪ミナミの観光というと道頓堀川の船に乗るぐらいで、あとは買い物して食べ歩きくらい。

ショッピングはここミナミは便利ですよ。歩いてすぐの所に高級ブランドショップが並んでますし、日本橋のでんでんタウンまで歩けば、アニメ関連の商品も売っている。こんなに買い物に便利な街は全国でもミナミだけじゃないですかね。だからその分、航空券の値段が上がると、そのお得感がふっ飛んでしまって忌避されるわけです。

ショッピングのお得感がどれくらいになるかを重視して大阪に来る観光客と、日本の文化に触れたくて京都に来る観光客では、距離は近くてもまったく異質なんですよね」

海外観光客に人気のラーメン店やスーツケース店も人は少なかった海外観光客に人気のラーメン店やスーツケース店も人は少なかった

隣り合う都市の観光地でも悲喜がまっぷたつに分かれた今年のお盆。これから先、また様相が変わっていくのか。それとも格差はどんどん広がっていくのか。秋の旅行シーズンを前に、われわれも注目しておきたいテーマだ。

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