歴史を塗り替えた輸入車ブランドはどこへ向かうのか!? BMWモトラッドCEOら首脳陣が語る 「鈴鹿8耐表彰台」「MotoGP」「次なる挑戦」

撮影/宮下豊史 写真/BMWモトラッド 協力/バイクのニュース編集部

BMWモトラッドのマーカス・フラッシュCEO(左)と、同社モータースポーツ責任者のスヴェン・ブルッシュ氏(右)に、青木氏(中央)が鋭く切り込んだBMWモトラッドのマーカス・フラッシュCEO(左)と、同社モータースポーツ責任者のスヴェン・ブルッシュ氏(右)に、青木氏(中央)が鋭く切り込んだ

1978年の大会創設以来、日本メーカーが守り続けてきた鈴鹿8耐の表彰台。その"聖域"に、BMWモトラッドがついに足を踏み入れた。今年の鈴鹿8耐(7月3~5日)で総合3位を獲得。輸入車ブランドとして大会史上初となる表彰台という快挙を成し遂げたのだ。

その結果を首脳陣はどう受け止めているのか。そして、世界中のロードレースファンが注目するMotoGP参戦の可能性は!? モーターサイクルジャーナリスト・青木タカオ氏が、鈴鹿8耐翌日にBMWモトラッド首脳陣を直撃した。

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【歴史的快挙の舞台裏に迫る】

「MotoGPにはいつか参戦すると考えています」

BMWモトラッドCEO(最高責任者)のマーカス・フラッシュ氏は青木の直撃にそう語った。

世界中のロードレースファンが待ち望むBMWのMotoGP参戦。これまでも噂や臆測は何度か浮上してきたが、トップが自らその可能性について言及したことの意味は小さくない。

その言葉が飛び出したのは、三重・鈴鹿サーキットで開催された「2026 FIM世界耐久選手権〝コカ・コーラ〟鈴鹿8時間耐久ロードレース 第47回大会」の決勝(7月5日)翌日だった。

3日間の来場者数は延べ5万9000人と、前年から2500人減少した。開催時期が例年より約1ヵ月早い7月上旬となり、夏休み前の日程だったことに加え、梅雨明け前の不安定な天候も影響したとみられる。

それでも決勝日には、多くのファンが鈴鹿サーキットに足を運んだ。そして、その舞台で歴史が動いた。

1978年の大会創設以来、日本メーカーが守り続けてきた鈴鹿8耐の表彰台という〝聖域〟にBMWモトラッドが初めて踏み込んだのだ。

今年の鈴鹿8耐で、BMWモトラッドが総合3位を獲得。長年日本メーカーが築いてきた歴史に、新たな1ページを加えた今年の鈴鹿8耐で、BMWモトラッドが総合3位を獲得。長年日本メーカーが築いてきた歴史に、新たな1ページを加えた

3位でチェッカーを受けた直後のピットは歓喜に包まれていた。スタッフは何度も抱き合い、ライダーを迎える拍手は鳴りやまない。だが、浮かれた空気は感じなかった。

「ここは通過点に過ぎない」

そんな緊張感がチーム全体に漂っていた。その理由を知りたかった。翌日、東京・汐留で行なわれたBMWモトラッドの記者会見へ向かった。

会場には鈴鹿から移動してきたばかりのマーカス・フラッシュCEOと、同社のモータースポーツ責任者のスヴェン・ブルッシュ氏が姿を見せた。輸入車ブランド史上初となる鈴鹿8耐表彰台、その歴史的快挙の当事者である。

会見終了後、青木は両氏への単独インタビューに成功した。聞きたかったことはひとつ。BMWは世界最高峰のモーターレース・MotoGPをどう考えているのか。マーカス・フラッシュCEOにド直球で聞いてみた。

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インタビューが始まると、青木氏の質問ひとつひとつに真摯に耳を傾け、真剣な表情で答えるマーカス・フラッシュCEOインタビューが始まると、青木氏の質問ひとつひとつに真摯に耳を傾け、真剣な表情で答えるマーカス・フラッシュCEO

――まずは本当におめでとうございます。昨日は私も鈴鹿でレースを取材していました。

マーカス ありがとうございます。海外メーカーとして初めて表彰台を獲得できたことは、私たちにとって本当に特別な成果です。

――鈴鹿8耐をご覧になった感想を聞かせてください。

マーカス 日本の皆さんは、情熱と規律という、一見相反するものを見事に両立しています。ファンはレースへの理解が深く、応援は熱狂的です。それでいて、すべてのチームやライダーに敬意を払っている。その姿勢に感銘を受けました。

――BMWはEWC(世界耐久選手権)やWSBK(スーパーバイク世界選手権)で結果を残し、M1000RRというマシンの実力を証明しています。2027年シーズンから、MotoGPは1000ccから850ccレギュレーションへ移行します。BMWにとって参入の好機ではありませんか?

マーカス 世界中のジャーナリストからその質問を受けますよ(笑)。モータースポーツはBMWのDNAです。私自身も常に考えているテーマですが、MotoGPにはいつか参戦すると考えています。

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BMWモトラッドのトップは、ロードレース世界選手権最高峰カテゴリーについて、自らの言葉で将来的な参戦への考えを語った。具体的な時期への言及はなかった。海外では「2027年の参戦は時間的に難しい」との見方もある。

しかし、それでも「いつか参戦する」との発言は重い。MotoGPがBMWにとって依然として重要なテーマであり、将来の選択肢として検討され続けていることを示したからだ。

今回のインタビューからは、BMWが最高峰カテゴリーへの挑戦を短期的な話ではなく、長期的な視野でとらえていることが伝わってきた。

さらに、モータースポーツ責任者のスヴェン・ブルッシュ氏に、BMWがいまだMotoGPへ参戦していない理由を聞いた。

BMWモトラッドのモータースポーツ責任者、スヴェン・ブルッシュ氏にも、納得いくまでじっくり話を聞いた青木氏BMWモトラッドのモータースポーツ責任者、スヴェン・ブルッシュ氏にも、納得いくまでじっくり話を聞いた青木氏

「私自身は前向きです。ただ、私たちは7年から10年単位で戦略を立てています。その中で、いつ、どのような形で参戦するのがベストなのかを慎重に検討しています」

BMWにとってMotoGPは短期的な話題づくりではない。ブランドの未来を左右する長期プロジェクトなのだ。市販車ベースのレースとMotoGPは、技術面でも開発思想の面でも別のカテゴリー。参戦には大規模な投資と、長期的な開発体制が求められる。

とはいえ、BMWモトラッドは今回の鈴鹿8耐で確かな結果を残した。スヴェン氏は鈴鹿8耐というレースについて高く評価していた。

「昨年初めて鈴鹿8耐を訪れ、本当に素晴らしいイベントだと思いました。だから今年はCEOのマーカスも誘って、一緒に来たんです。ヨーロッパにも伝統あるレースはありますが、鈴鹿は特別です。美しいサーキットですし、日本のファンは本当に情熱的です」

そして今回の3位表彰台について尋ねると、即座にこう答えた。

「これはゴールではありません。始まりに過ぎません」

その言葉こそ、BMWモトラッドの現在地を表している。輸入車ブランドとして初めて鈴鹿8耐表彰台に立った。今回の結果は、長年挑戦を続けてきた同社にとって大きな節目となった。

鈴鹿で刻んだ歴史は終着点ではない。BMWモトラッドの挑戦は、その先へ向かって続いていく。

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