今夏の高校野球は"二刀流"に注目!! プロのスカウトが狙う逸材たち

取材・文・撮影/菊地高弘

群を抜いて評価が高い二刀流は山梨学院大の菰田。195cmの長身を生かし、打者としては高校通算39本塁打、投手としてはケガを経て、変化球のキレが増したという群を抜いて評価が高い二刀流は山梨学院大の菰田。195cmの長身を生かし、打者としては高校通算39本塁打、投手としてはケガを経て、変化球のキレが増したという

プロ野球のスカウトはこの夏、〝二刀流〟の逸材を追いかけている――。

全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)の地方大会が各地で開幕。各球団のスカウトは連日、有望選手を視察するため球場を回っている。

今年のドラフト戦線は、完全に「投高打低」に傾いている。高校野球から社会人野球に至るまで好投手は多いものの、野手の逸材が乏しい状況だ。

ただし、スカウト陣が頭を抱えているかといえば、そうでもない。なぜなら、プロ志望の投手の中には、野手としても将来有望な好素材が紛れているからだ。そこで、今夏にぜひともチェックすべき、投打二刀流の有望高校生を紹介していこう。

筆頭格として名前を挙げたいのは、高校球界が誇る怪童・菰田(こもだ)陽生(山梨学院)である。

身長195cm、体重102kgの圧倒的な体躯で、ロマンの塊のような存在だ。山梨学院の吉田洸二監督は「日本球界の宝」と評したが、決して誇大表現ではない。今夏の活躍次第では、重複1位指名の可能性も十分にある。

高校1年時点で、菰田は「将来は大谷翔平さん(ロサンゼルス・ドジャース)のように、二刀流として世界で通用する選手になりたい」と大志を語っていた。

ただ、2年秋の時点では、どちらかといえば打者としての評価のほうが高かった。今春の選抜高校野球大会(センバツ)でも、バットでアピールした。ファーストスイングで甲子園のレフトスタンドに放り込む姿に、「高校時代の岡本和真(トロント・ブルージェイズ)を思い出した」とうなったスカウトもいたほどだ。

ところが、一塁の守備中に走者と交錯し、左手首骨折の重傷を負ってしまう。投手としても状態を上げていたようだが、今春に甲子園のマウンドに上がることはかなわなかった。多くのスカウトは「投手・菰田」の真価を測れず、やきもきするしかなかった。

その後、菰田は左手首を手術して、離脱中はリハビリとトレーニングに専念。すると、走り込みによって体のキレが大きく改善され、投手としての能力が飛躍的に向上。カットボール、フォークなどの変化球も進化し、吉田監督が「今までストレートしか投げられなかったのが、『投手』になって戻ってきた」と感服するほど仕上がっている。

夏の大会直前の練習試合には、ほぼ全球団のスカウトが集結。中には3週連続で「菰田詣で」に繰り出すスカウトもいたという。

7月6日の山梨大会初戦(韮崎戦)では、菰田は3番・DHとして出場。登板機会こそなかったものの、バットでは高校通算39号となる特大アーチを左翼席へ放った。チームは13-0(5回コールド)で好発進している。

まず打者としての才能が認められ、高校最後の夏にかけて投手としての評価が急騰した状況も、高校時代の大谷に酷似している。菰田は投手なのか、打者なのか、それとも二刀流なのか。今夏に投手としてインパクトを残せたら、ますますスカウトを悩ませる種になりそうだ。

日本航空石川の保西は投手志向が強いが、今年に入って打者として開花。恵まれた体格を生かした打球で会場を沸かす日本航空石川の保西は投手志向が強いが、今年に入って打者として開花。恵まれた体格を生かした打球で会場を沸かす

菰田の陰に隠れているが、スケール感なら引けを取らない選手が北陸にいる。身長190cm、体重100kgの大型選手・保西雅則(日本航空石川)だ。

投手として最速150キロを計測するように、馬力は超高校級。変化球もフォークなど複数の球種を器用に操れる。ただし、2年時に右肘を痛めたこともあり、やや硬い印象のメカニクスや故障リスクを危惧するスカウトもいた。

そして、今夏にかけて打者としての才能が花開きつつある。昨秋は8番など下位打順に甘んじていたが、今春は特大弾を放ってスカウト陣の度肝を抜いた。あるスカウトは「練習試合で見た特大ファウルに、中田 翔(元日本ハムほか)の姿が重なった」と賛辞を惜しまない。

本人は投手志向が強いものの、ひと振りで他を圧する〝猛スイング〟も捨て難い。さらに、来年からセ・リーグでもDH制が採用されることから、各球団が今まで以上に強打者を求めているプロ側の事情もある。保西を野手として本格的に育成すれば、将来どんなスラッガーに成長するのか。夢は膨らむばかりだ。

菰田のような右投げ右打ちの強打者は需要が高い。鈴木誠也(シカゴ・カブス)のように、高校時代は投手として活躍しながら、プロでは野手として大成功を収めた例も多い。それだけに、未知数な原石であってもスカウト陣は追いかけるのだ。

中京の鈴木は、投打共にセンスの良さが光る。今年4月のU-18日本代表合宿でも結果を残して評価を上げた中京の鈴木は、投打共にセンスの良さが光る。今年4月のU-18日本代表合宿でも結果を残して評価を上げた

同じように右投げ右打ちの好素材で見逃せないのは、鈴木悠悟(中京)だ。

身長177cm、体重74kgと体格的には平凡ながら、投打共に非凡なセンスを秘める。投手としては捕手に向かって加速するような快速球に、空振りを奪えるスライダーを武器にする。6月には練習試合で12者連続奪三振という戦慄のパフォーマンスも見せつけた。

一方、打者としても自分の間合いでスイングでき、木製バットも自在に振りこなす。高校1年時には遊撃手としてレギュラーだったこともあり、内野手の適性が高いのも評価ポイント。プロは右投げ左打ちの遊撃手タイプが飽和状態なだけに、希少な右打ちの鈴木はスカウト垂涎の存在のはずだ。

これまで甲子園出場経験こそないものの、投打のポテンシャルを評価されて侍ジャパンU-18代表候補にも選出されている。仮に甲子園出場がかなわなくても、高校日本代表としてアピールし、評価を高める可能性がある。

ほかにも、長身ながら運動能力が抜群で、投打共に高い潜在能力を秘める平田玲翔(大分商)や、強肩の遊撃手として名をはせつつ、リリーフとしても150キロ近い速球で沸かせる池田聖摩(横浜)も今夏に必見の二刀流だ。

8月5日に開幕する夏の甲子園には、どんな二刀流が駒を進めるのか。大谷のように、常人の想像を超える存在が出現することを期待したい。

  • 菊地高弘

    菊地高弘

    きくち・たかひろ

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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