JR東日本の運賃値上げでライバル企業の業績はどうなった?【坂本慎太郎の街歩き投資ラボ】

構成/西田哲郎 撮影/榊 智朗

神奈川県横浜市に本社を置く私鉄会社。通称は京急。東京都南部から神奈川県の三浦半島にかけて路線を持つ。配当利回りは3%超神奈川県横浜市に本社を置く私鉄会社。通称は京急。東京都南部から神奈川県の三浦半島にかけて路線を持つ。配当利回りは3%超

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
JRの運賃値上げ(京浜急行電鉄)

JR東日本は今年3月14日に運賃を改定し、4.4~最大22.9%の値上げを行なった。ここまで大幅に上げると、競合が利するのでは? 調査した!

助手 この前、品川から横浜へ行くために電車の運賃を調べたら、JRより京急のほうが安かったんです。京急って羽田空港へ行く電車のイメージでしたけど、横浜や三浦半島まで走ってるんですね。

坂本 そう。品川-横浜間ではJRと並行していて、通勤や買い物、観光客を奪い合っているライバルなんです。とはいえ、今は京急に追い風が吹いてるんじゃないかな。JRは今年3月の値上げでIC普通運賃が303円から341円になりました。一方で京急は313円のままだから、JRが10円安い状況から、京急が28円安い状況へと逆転したわけ。関西では大阪市内から京都市内へ行く際、580円のJRを避けて410円の阪急を選ぶ人が増えたと聞きます。首都圏で同じ動きが起きても不思議じゃない。

助手 関西は170円差ですか。そこまで違えば納得ですけど、28円差くらいで乗る電車をわざわざ変えますかね? 

坂本 十分ありえると思うよ。影響を受けやすいのは、買い物や観光などでその都度運賃を払う「定期外客」です。通勤定期と違って、出かけるたびにJRか京急かを選べるからね。スマホの経路検索では料金差も目に入るから、どうせなら安いほうを選ぼうと思うきっかけになる。ちなみに京急の定期外客は利用者の約半分なのに、旅客運輸収入では約65%、年間541億円を占めます。この収入が1%伸びるだけでも、単純計算で約5億円の増収になるわけです。全員が乗り換えなくても、この客層を少し取り込めれば、業績への影響は小さくない。

助手 通勤客だって料金差の恩恵はあると思うんですけど、なんでカウントしてないんですか?

坂本 京急が安いのは普通運賃の話で、通勤定期はJRのほうが安いんです。品川-横浜間の1ヵ月通勤定期はJRが1万480円、京急が1万3350円。JRのほうが2870円安いので、通勤客が一斉に乗り換えるとは考えにくい。だから差し当たり、京急が取り込みやすいのは定期外客と考えていいと思います。

助手 なるほど。実際に定期外客や鉄道収入は増えてるんですか?

坂本 JR値上げ後の4~6月累計で、京急の定期外客は前年同期比で2.3%増えました。空港や観光の需要も含むので、すべてがJRから移った客とは言い切れないけど、客数が伸びているのは確かです。今期の鉄道営業収益も3%増える予想で、定期外客の増加が鉄道収入の伸びにつながる方向性は見えてきたと思う。

助手 おぉ。そしてこれからどんどん儲けが増えていくわけですね!

坂本 残念ながら、そこは少し冷静になる必要がある。鉄道は線路や駅、車両を維持する費用が重いから、減価償却費や修繕費が収入の伸びを上回ることも多いんです。実際、今期の鉄道事業は減価償却費や修繕費が増え、営業利益が前期比で約14%減る見込みです。とはいえ、業績の土台となる客数自体は伸びているわけだから、修繕の落ち着きとともに利益が改善する可能性は高いはず。

助手 でも主力の鉄道が減益となると、投資先としてはちょっとなぁ。

坂本 確かに気にはなるけど、会社全体では不動産事業が補って今期の営業利益は前期比で30%以上増える見通しです。すぐに飛びつく必要はないけど、鉄道収入の伸びと全社の増益を考えれば、配当を受け取りながら鉄道の回復を待つスタンスの投資はアリだと思うよ。

今週の実験結果
配当をもらいながら気長に値上がりを待つのはアリかな!

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  • 坂本慎太郎

    坂本慎太郎

    さかもと・しんたろう

    こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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