『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.60【コミックス派はネタバレ要注意!】

取材・文/兵庫慎司 ©ゆでたまご/集英社

 『キン肉マン』大好き作家・燃え殻氏と爪切男氏が7月の連載を語る!『キン肉マン』大好き作家・燃え殻氏と爪切男氏が7月の連載を語る!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが7月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

***

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第537話 意気投合する"ふたり"!!の巻 (7月6日更新分)
第538話 仮面の秘策!!の巻 (7月13日更新分)
第539話 友情とは......⁉の巻 (7月26
日更新分)
あらすじ
生死を問わない完全KO決着のみという「ファイナルスタンディングデュエルマッチ」で行なわれることになったロビンマスクvsペシミマンのエクストラマッチ。ロビンマスクは、師弟としてゆがんだ過去を持つウォーズマンのみならずペシミマンとも対等にわかり合うため、いびつな2対1の構造に終止符を打つ!

【ロビンマスクに別班を】

爪切男(以下、) まず第537話は、ペシミマンの猛攻で、ロビンマスクがかなり追い詰められたけど、ペシミマンのファイヤーバードが、オートでも発動するのを知るわけですよね。

燃え殻(以下、) 自分が外したリストバンドに向かってオート作動させ、ララミージャンゴから脱出する、という。

 1話の間で、ものすごい攻防ですよね。

 ウォーズマンはロボ超人で、顔は確かにロボっぽいけど、技に関しては、ロボ的な何かは、そんなにないじゃない? でも、ペシミマンの技は、ロボ超人感がすごくある。

 ロケットパンチみたいに両手が飛ぶとか。

 そう。だから、ロボ超人の発展形として、おもしろい闘いだよね。

 目まぐるしいスピードで、ハデな大技がどんどん出てくるし。

 意外だったのが、ペシミマン、コートは脱いだけど、帽子は最後まで脱がなかった。

 そうですね。途中で帽子を落とした時も、自分で拾ってちゃんとかぶってた、あれは俺の中では、ザコシさん(お笑い芸人・ハリウッドザコシショウ)に通じるものがあって。ザコシさん、ライブでも、ネタの途中であのテンガロンハットが飛ぶと、絶対ひろいに行くんですよ。

 こだわりというか、美意識なんだろうね。

 で、最後、ロビンマスクに逆タワーブリッジネイキッドをくらって、フワッと帽子が飛んで、勝負がつく。気を失ったペシミマンに、ロビンが帽子をかぶせてあげるのにも、グッときました。

 あとペシミマン、技はロボ超人っぽいけど、キャラクターとしては、すごい人間味にあふれているよね。

 ああ、恨みとか、嫉妬とか、友情とか。

 他の時間超人とはまったく違う。ゆでたまご先生、悪魔超人が全員集まった画とか、描かれてたじゃない? でも、時間超人が集まった画を描いたら、ペシミマン、浮きそうだもん。

燃え殻さんの言う悪魔超人集合シーン。Web漫画、コミックスが盛り上がる中、紙のコミックス化を見据えた一枚への思いは強い(JC第60巻)燃え殻さんの言う悪魔超人集合シーン。Web漫画、コミックスが盛り上がる中、紙のコミックス化を見据えた一枚への思いは強い(JC第60巻)

 アウトロー感、ありますよね。

 今までの『キン肉マン』では、悪魔超人でもなんでも、そのチーム内ではみんなうまくバランスを取っていたけど、ペシミマンは違うよね。昔の戦隊ものでもいたじゃない?

 いましたね、ひとりで行動するヤツ。

 『キン肉マン』の世界には、ああいうキャラクターはいなかった。という意味でも、ペシミマンは新しいのかも。

 あ、でも、それこそちょっと前のロビンマスクはそうでしたね。キン肉マンたちと行動を共にするのを拒否して、ひとりで動き始めた。

 あ、そうだった。そういう意味でも、ロビンマスクとペシミマンの闘いというのは、通じ合う者同士の試合だったのかもしれない。

 チームの中で孤立を選んだ者同士ね。いいプロレスでしたよね。

なんともいえぬ男の色気を放つぺシミマン。孤独は色気を生む(JC第89巻)なんともいえぬ男の色気を放つぺシミマン。孤独は色気を生む(JC第89巻)

 そう、プロレスファンじゃない人が、いい加減に使う「プロレス」じゃなくて、本来の意味でのすばらしい「プロレス」。この先も闘いが続く、この3人のストーリーが続く、っていう意味でも、いい試合だった。

 いわゆる「手が合う」試合ね。

 そうそう。ここまで手が合うと、いつか一緒のチームになりそう。ウォーズマンとペシミマンがタッグを組むよりも、そこにロビンマスクも加わる、っていうのがいいなあ。これまで、正義超人は正義超人だけで組むものだったけど、そうじゃないグループが生まれてもいいんじゃないかな。

 まあ、このあとも続くでしょうからね。ペシミマンは帰ってくるだろうし。

 ロビンマスクに別班を作ってほしい。

 ()。あと、ロボ超人だから感情が見えへんはずなんですけど......デスペさん(新日本プロレス、エル・デスペラード選手)がよく言ってるけど、獣神サンダー・ライガーの何がすごいって、マスクマンなのに感情がわかる。それに近いものがありますよね、ペシミマン。

 表情豊かだよね。同じ顔なんだけど。

 デスペさんがよく言うのが、覆面をかぶっているライガーさんがあれだけお客に感情を伝えられるのに、素顔でやっている若手がなんで伝えられないんだ、と。確かに、ライガー、ちょっと身体の動きが止まっただけで、「あ、今キレたな」ってわかるもん。

 しかしペシミマン、負けたあと、よく意識が戻ったよね。

 あ、それは思った。最後の逆タワーブリッジネイキッド、あのまま絶命してもおかしくない決まり方だったので。

 時間超人と闘うシリーズになってから、闘い終わって死ぬか、死なないかが、はっきり分かれるよね。

 そうか、テリーマンと闘ったエンデマンは、死んだもんな。あと大事なのが、第539話で、ロビンマスクが、キン肉マンと闘いたいと表明したこと。「お前の引退届けは、まだ私が隠し持ったままなのだぞ」。

 そうなんだよね。それから、敗れたことを謝るペシミマンに、ウォーズマンが「断言する。今のお前は...紛れもない友情パワーの持ち主だと!」。これに至るまでのウォーズマンのセリフもすごい。「他人との関わりは、多くの反発を生むゆえ正直わずらわしいことだらけだが、だからこそ、その腐海の底には、宝石のように美しく得難い共感が潜んでいることもある。それを手にできた者は...友情という概念が理解できるようになる......」と。

 今、僕、Gakkenの『キン肉マン』の図鑑、『超人』と『技』を作った芳賀(靖彦)さんと仕事してるんですけど。

 ああ、ジャンクマンの生みの親の。

 芳賀さん、この回まで読んで「困ったなあ」って言ってました。いまだにこんなに名台詞が生まれるなら、図鑑のページを増やした改訂版を作らなきゃいけない、と。

 はははは!

 ロビンマスクとウォーズマンがわかり合えた、という今回のエピソードは、図鑑には入っていないわけだから。

 そうだよね。大変だ。にしても、ロビンマスクがウォーズマンに謝る日が来るっていうのは、想像だにしなかったもんなあ。その前の、ウォーズマンが変化して針だらけになるっていう展開(エクストリームバトルモード)は、『キン肉マン』の歴史の中では、「そういうこともあるだろうな」って思えるけど。ロビンマスクは、鎧がカッコよくなるとかじゃなくて、ウォーズマンに謝る、という新しさ。ゆでたまご先生の、カードの多さがすごいよね。

マンモスマンVSコーカサスマンを見届け、バベルの塔決戦への出場は他の8名へ譲ることに(JC第89巻)マンモスマンVSコーカサスマンを見届け、バベルの塔決戦への出場は他の8名へ譲ることに(JC第89巻)

 確かに。

 そのキャラがまだやっていないことを見つけるのがすごくうまい。あと、一瞬バラクーダを出したのはなんだったんだろう?

 スパルタ教育を謝るために、その頃の自分の姿を見せておきたかったとか?

 でもそれ、他の漫画だったら、回想シーンを描くじゃん。だけど『キン肉マン』は、ロビンマスクがその場でバラクーダになる。あれがすごいフレッシュだった()

【広がる展開、狭まらぬラスト】

 そういえば、ザ・ワンについていった超人たちは、ロビンマスクもアシュラマンも勝ってるんだよな。で、ペシミマンは戻ってくるだろうし、サラマンダーはアシュラマンに見逃されて生きてるから。ほんとにどうなっていくのか。

 もう群像劇だよね。ペシミマンとサラマンダーが、同じ時間超人のグループの中にいるのが。

 ああ、そうですよね。でもこれで、時間超人は全員試合をしたわけだから。

 でもほんと、ロビンマスク、ペシミマン、ウォーズマン、という今回の3人のシリーズを描いたことで、今後の展開の可能性が、すごく広がったよね。

 そうですね。ますます最終回が遠ざかったような気が。意味深に振り返ってから、どっかへ行ったままのラーメンマンもいるしね。

 ラーメンマンの試合なんて、もう何年観てないんだろう。観たいなあ。

 観たいけど、ジェロニモは封じ込まれたままだし、バッファローマンは修行中だし。

 最終回が遠ざかる要素が多すぎる。大きく見ると、物語の本当の最後は、キン肉マン対テリーマンなんだろうな、と思っていたけど、ロビンマスクもキン肉マンと闘いたいと宣言してきたわけだし。我々はこの対談で、ゆでたまご先生は数年がかりで『キン肉マン』を畳みに入っている、って言い続けてきたじゃない? でも、そうではないんじゃないか、という気がしてきた()

 だけど、おもしろいのが、最後にものすごく強いラスボスみたいな敵が出てきて、キン肉マンと闘うんだろうな、とは、我々が思ってないところですよね。テリーマンかロビンマスクであってくれ、と思っている。

 確かに。プロレスラーの引退試合に期待するものと一緒なんだろうね。いちばん濃い相手と闘ってほしい、天山広吉の引退試合は小島聡であるべきだ、みたいなね。

 そうですよね、まさに。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、『明けないで夜』(マガジンハウス)
など多数の著作がある。最新著は『これはいつかのあなたとわたし』(新潮社)、『ブルーハワイ』(新潮文庫)。ラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:30~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』も発売中。ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化。最新刊は、『愛がぼろぼろ』(中央公論社)

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