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食品の消費税減税が、来年4月から実施予定だ。しかし、ただ税率を変えるだけなのに、なぜ1年近い準備期間が必要なのか? しかも、税率1%なら半年、0%なら1年程度――。なぜ、わずか1%の差で対応期間が変わるのか? その答えのひとつが、「レジ改修」にあった!?
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消費税減税を巡り、「レジ改修」問題にも注目が集まっている。
消費税1%の開始時期が2027年4月で調整されているのは、「税率を1%にする場合で半年、0%にする場合は1年程度の準備が必要になる」という試算が出ているためだとされる。しかし、税率を変えるだけで、そこまで時間がかかるのだろうか?
スマートレジを提供する「ユビレジ」の創業者で代表取締役社長の木戸啓太氏はこう語る。
「スマートレジの場合、設定変更画面で税率の数字を変えるだけで完了します。現状『8%』になっている部分を『0%』や『1%』と書き換えるだけなので、1日あれば十分対応できます」
ここでいうスマートレジとは、iPadなどのタブレット端末に専用アプリを入れて使う、クラウド型のPOSレジのこと。POSは「Point Of Sales」の略で、「いつ」「どこで」「何が」「いくつ」「いくらで」売れたかを記録・集計し、売り上げ管理や在庫管理などにつなげる仕組みだ。
「2019年の軽減税率導入時に、すでに複数税率に対応するためのシステム改修を行なっています。消費税が10%に上がる一方で食品などは8%に据え置かれ、飲食店では同じ商品でも店内飲食なら10%、持ち帰りなら8%と税率を分ける必要がありました。そのため、商品ごと、販売方法ごとに税率を設定できる仕組みを整えました」
同じくスマートレジを展開する「スマレジ」執行役員の阪本将史氏も、スマレジ内で完結する税率設定の変更であれば追加開発を伴わないため、「即日対応可能」と語る。
「クラウド型なので、税率などの設定情報は店舗にある端末本体だけでなくサーバー側で管理しています。そのため、サーバー側の設定を変更すれば、各店舗のレジに一括で反映できます。一台ずつ端末を操作する必要はありません。
ただし、これほどシンプルなのはスマートレジだからです。政府主導の国民会議にも出席しましたが、その場でも、『改修にどれくらいかかるのか』が議論されました。そこからわかったのは、ほかの種類のレジにはある程度の時間がかかることです」
レジは大きく3種類に分けられる。
「まず、われわれが扱うようなスマートレジ。次に、昔ながらのレジとしてイメージされやすいレジスター型、いわゆる『ガチャレジ』です。POS機能がついていないものも多い一方、ホームセンターなどで購入でき、月額費用もかからないのが特長です。
ガチャレジの場合、事業者自身がマニュアルを見ながら税率を変更できるものもありますが、新たな税率を設定できるか、また0%を入力できるかどうかはメーカーや機種の設計によって異なります。
そして3つ目が、コンビニや大手スーパーなどに置かれている『ターミナルPOSレジ』です。費用は高額ですが、各社ごとのカスタマイズができるのが強みです。画面をわかりやすくしたり、独自ポイントやアプリと連携したり、それぞれの企業に合わせてシステムがカスタマイズされています」
経済産業省によると、全国における導入台数はスマートレジが約30万台、ガチャレジが40万~50万台、そして最も多いのがターミナル型で約70万台だとされる。
(スマートレジシステム)モバイルPOSレジ 約30万台 タブレットやスマートフォンをレジ端末として利用し、売り上げ情報、在庫情報、顧客情報などをクラウド上で一元管理できる
ガチャレジ 40万~50万台 キーボードなどを手動操作して入出金管理を行なう、昔ながらのレジ。インターネットに接続して売り上げ集計管理ができる機種もある
ターミナルPOSレジ 約70万台 大手スーパーなどで使われる高機能レジ。企業ごとにカスタマイズでき、在庫管理、発注、会計、ポイントなどのシステムとも連携できる
前出の木戸氏によれば、今回の改修でボトルネックになりやすいのは、このターミナル型だという。
「ターミナル型は、スマートレジのようにインターネット上のサーバーで一元管理するクラウド型ではなく、企業側のサーバーや店舗内のシステムで動いているオンプレミス型が多いんです。
その場合、サーバー上の設定を変えれば全店舗に一括反映されるのではなく、企業ごと、店舗ごと、機器ごとにソフトウエアの更新が必要になることがあります」
さらに、ターミナル型は在庫管理、発注、会計、ポイント、アプリなど、周辺システムとも複雑につながっている。レジ単体で税率を変えられても、その先のシステムが同じ税率情報を正しく受け取れるかは別問題なのだ。
実際、19年10月1日の軽減税率導入時に、大手のターミナルPOSレジメーカーでレジシステムに携わっていた関係者はこう振り返る。
「軽減税率のときは、事前準備にかなり時間を要しました。まず各ユーザーさんと打ち合わせをして、税率を商品ごとに単品で設定するのか、食品や日用品といったカテゴリーごとに設定するのかを確認し、その上で、レシートや集計レポートに税率別の表示を出すための設定も行ない、税率変更の前日の夜間に反映されるように準備しました。9月30日から10月1日にかけては、会社や客先に待機して、トラブルが起きた場合の臨時対応に備えていました」
ただし、今回の税率変更は、当時ほど大変ではないという。すでに軽減税率対応のノウハウがあり、複数税率を扱う仕組みはできているからだ。
「1%なら、軽減税率対応時と基本的には同じだと思います。ただ、単品で税率管理しているユーザーさんは、対象商品を抽出して変更し、変更漏れを確認する作業がいるので、準備期間は必要になります。とはいえ、1%への変更であれば、来年4月までに無理なく間に合うでしょう」
では、なぜ0%と1%で、半年と1年という期間の差があるのか。
前出の阪本氏は、国民会議の場でも、「0%を前提としたシステムになっていない場合は、テストに時間がかかるのではないか」という議論があったと話す。
「なぜなら『0』という数字はシステム上、特殊な扱いになる場合があるからです。計算ロジックの中に『0』が入ると、割り算などでエラーが起きる場合があります。システムによっては、『0』が入ることを想定していないケースもありえます」
1%なら、8%を1%に変える「数字の変更」として扱える可能性が高い。しかし0%の場合、そのシステムが「0」を受けつけるのか、計算でエラーを起こさないかを確認する必要があるのだ。
さらに、レジの外側にも「0の問題」がある。消費税実務にも詳しい税理士のA氏は、こう説明する。
「一般の方からすれば、1%と0%は誤差かもしれません。しかし税務・会計の世界では天と地ほど違います。
消費税は、店が客から預かった消費税をそのまま国に納める仕組みではありません。店は仕入れや経費の段階でも消費税を払っているため、通常はその分を税金の計算上で〝取り戻す〟ことができる。これが『仕入税額控除』です。
1%なら、食品販売は税率が低くても『課税取引』対象のままなので、店は家賃や水道光熱費、物流費などで払った消費税を取り戻しやすい。
しかし、非課税になると、店側は『消費者から消費税を預かっていない』ことになります。すると、その売り上げに対応する仕入れや経費で支払った消費税を控除できなくなる可能性がある。結果として、その分をスーパーなどの事業者側が負担する『損税』が発生してしまうんです」
食品そのものの仕入れも0%になるなら、そこに消費税は発生しない。しかし、店が払う消費税は食品仕入れだけではない。家賃、水道光熱費、物流費、包装資材費、レジシステム利用料など、食品を売るための経費には通常どおり消費税がかかる。
食品販売の売り上げが課税売り上げのままなら、こうした経費に含まれる消費税は控除しやすいが、単純に「非課税」になると、控除できない部分が出る可能性があるのだ。
「0%でも、輸出取引などで使われる『ゼロ税率』のように設計すれば、消費者負担を0円にしつつ、仕入税額控除を維持することは理屈上できます。
ただし、それは単なる非課税ではなく『0%の課税取引』として扱う必要がある。会計処理、インボイス、レジ、会計ソフトでも非課税と区別する必要があり、国内の食品小売り全般に適用するとなると、法整備やシステム対応の負担はかなり大きくなります」
つまり、1%は既存の課税取引の延長で処理しやすい一方、0%は制度設計そのものが変わってしまうのだ。
「消費者にとっての1%と0%の差は、缶ジュース1本でいえば1円程度かもしれません。しかし、システムや会計の側から見ると、『設定変更』で済むのか、『制度と処理の作り直し』になるのかという別次元の話なんです」
レジの税率を変えるだけに見える話の裏側には、小売りのシステム、会計、制度設計までを巻き込む、意外に大きな改修作業が広がっている。