街でつい目に留まる「丸窓」の魅力について、市川紗椰が分析する

なぜか引かれる丸窓!@京都の元学生寮なぜか引かれる丸窓!@京都の元学生寮

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「丸窓」について語る。

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街を歩いていると、つい目に留まるものがあります。丸窓です。

四角い窓は見慣れているのに、丸窓を見つけると「おっっ」と思います。どこかかわいらしくて、少しだけ特別。船みたいで、秘密基地みたいで、絵本の世界みたいでもある。考えてみると不思議です。窓の役割は外を見ることなのに、形が変わるだけでこんなにも印象が違うのですから。丸窓を前に無駄にうれしくなる私。魅惑の丸窓。理由を考えてみた。

丸という形は、安心や親しみを感じやすいと言いますよね。自然界を見渡せば、太陽も月も、花も木の年輪も、果物も、人の瞳も丸い。子供向けのキャラクターもだいたい丸いし、私たちは生まれた頃から、丸いものに囲まれて育ってます。一方で四角いものは、建物や机、道路標識やスマートフォンなど、人間が作ったものが多い。だから丸には、どこか「自然」や「生命」の気配があり、四角には「機能」や「合理性」の印象が宿るのかもしれません。

とはいえ、丸窓がかわいく見える理由は、それだけではありません。丸窓は、景色を「見る」窓というより、「切り取る」窓な気がします。例えば、京都の寺院にある円窓(えんそう)。窓の向こうに見える庭は、まるで額縁に収まった一枚の絵のようです。四角い窓なら背景になってしまうような景色が、丸く囲まれた途端、作品になります。窓は建築の一部なのに、気づけば美術館の額縁のような役割を果たしているときがあります。

一方で船や潜水艦の丸窓には、さらに別の理由があります。実は、丸いほうが構造的に丈夫だから。四角には角がありますが、丸にはありません。水圧や気圧がかかっても力が均等に分散されるため、安全性が高いのです。飛行機の窓が丸みを帯びているのも同じ理由。もし完全な四角だったら、空の旅は今ほど安心できるものではなかったかもしれません。

つまり私たちは、構造上の合理性から生まれた丸窓を見て、「旅」を連想していることになります。船室、客車、飛行機。丸窓には「どこかへ向かう途中」のイメージが染みついているのです。

さらに、丸窓には「全部は見せない」という演出があります。四角い窓は視界が広く、情報をたくさん与えてくれます。でも丸窓は少しだけ不親切。見える範囲が限られるからこそ、「この先はどうなっているんだろう」と想像したくなる。映画監督がカメラのフレームを選ぶように、丸窓は私たちの視線を自然と誘導します。

だから秘密基地っぽいのでしょうかね。子供の頃、クローゼットの隙間や段ボールハウスに小さな穴を開けて外をのぞくのが妙に楽しかった記憶がありませんか? 少ししか見えないからこそ、世界は広く感じられる。人間は案外、「全部見える」より「少しだけ見える」ほうがワクワクする生き物なのかもしれません。ほんの少しだけ、冒険や旅に出たような気持ちにつながっているのかもしれませんね。

単に世界を見せてくれるのではなく、世界を少しだけ編集して見せてくれる丸窓。皆さんも次に街を歩くとき、もし丸窓を見つけたら、少し立ち止まって愛(め)でてみてはいかがでしょうか。

●市川紗椰 
米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。「はめ殺し窓」なるジャンルの響きがおっかない。公式Instagram【@its.sayaichikawa】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!

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