派手で陽気な〝プロによる本気の文化祭〟トニー賞の見どころを市川紗椰が語る

演劇界の頂点でありながら、最も豪華な〝営業プレゼン大会〟でもあるトニー賞授賞式が行なわれるブロードウェーで演劇界の頂点でありながら、最も豪華な〝営業プレゼン大会〟でもあるトニー賞授賞式が行なわれるブロードウェーで

演劇界で最も権威ある賞、米トニー賞。映画のアカデミー賞、音楽のグラミー賞に比べると、日本では知名度は低いかもしれません。でも、授賞式の中継を見る上では、トニー賞が断トツで楽しいと思っています。

演劇界の優等生的な授賞式だと思われがちですが、実際には派手で、陽気で、何より〝プロによる本気の文化祭〟感がすごい。アカデミー賞が映画という完成品をたたえる場だとすれば、トニー賞は「皆さん、この作品がどれだけ面白いのか、今ここで見せます」とばかりに、ノミネートされた作品のキャストたちが、数分間のライブパフォーマンスをぶつけてきます。ブロードウェーに通う財力も時間もない遠方の方でも、一年の話題作を〝ダイジェスト版現地体験〟できるのです。

今年の授賞式は、日本時間6月8日の朝にスタート。私は、受賞予想は不毛だと思ってるので、個人的に楽しみにしてるパフォーマンスをいくつか紹介します。

ミュージカルを追っていない人でも見応えがありそうなのは、まず『Cats: The Jellicle Ball』。劇団四季でもおなじみのあの『Cats』と、1970年代から80年代のニューヨークのボールカルチャー(黒人やラテン系のLGBTQ+コミュニティから発展した、ファッションとヴォーギングを競うサブカルチャー)を融合させるという大胆すぎる再解釈。

キャッツたちは路地裏からランウエーへ進出し、自己表現の化身になって爆発! きらびやかで誇り高く、大げさ(キャンプ)で多様(クィア)で、原作の奇妙さをさらに増幅させた舞台は、数分のパフォーマンスでも視覚情報量が異常に多いはず。

同じく過去作のトンデモ再構築だと、『Titaníque(タイタニーク)』も期待大。セリーヌ・ディオンの楽曲に乗せて映画『タイタニック』を爆笑パロディ化した、オフブロードウェー発の超人気コメディミュージカル。セリーヌ自身がツアーガイドとして物語を語り直すという設定で、90年代の懐かしさ、ドラァグショー的要素、迫力のボーカルが融合したクレイジーな試み。ラスベガス的熱量とブロードウェーの技巧の衝突、必見。

真面目な再演だと『Ragtime』が楽しみで仕方ない。小学生のときにオリジナルキャストで鑑賞して以来、大好きなミュージカルのベスト3に入ってます。内容は重厚で、20世紀初頭のアメリカの人種、階級、移民社会を壮大に描く名作で、音楽の豊かさと社会性が共存する〝これぞ大作ミュージカル〟枠。ラグタイムと呼ばれる音楽の躍動感とアメリカ史の痛みが交差し、エンタメでありながら深く刺さる。とにかく名曲ぞろいなので、熱唱に期待。

ほかにも、『The Rocky Horror Show』の再演や、ミュージカルのパロディざんまいの新作『Schmigadoon!(シュミガドゥーン)』、司会を務めるP!NK(ピンク)の歌唱など、見どころ満載。

トニー賞は授賞式+舞台芸術見本市的な側面もある、ライブエンターテインメントの祝祭! きらびやかな衣装、圧倒的歌唱力、意味不明な企画力、時に社会派の重厚さまでもが凝縮されます。「舞台ってこんなに自由なのか」と思わせてくれるので、見たことがない方は、今年からぜひ!

●市川紗椰 
米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。家で歌っていると犬にドン引きされる。公式Instagram【@its.sayaichikawa】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!

編集部のオススメ

関連ニュース

TOP