
吉井透
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フリーライター。中国で10年、米国で3年活動したのちに帰国。テキストメディア以外にも、テレビやYoutubeチャンネルなど、映像分野のコーディネーターとしても活動中
今やポイ活のチャンスは消費行動の全てに潜んでいる
物価高騰が続く昨今、生活防衛術として今まで以上に注目が高まっているのが「ポイ活」だ。
各種決済サービスやECサイトなどは利用金額に応じて独自のポイントを還元しているほか、商品購入時に経由して広告を閲覧するとポイントを獲得できる「ポイントサイト」も複数存在する。消費行動のほぼすべてに潜むポイント獲得のチャンスを最大限活かすためのハウツー本も複数出版されている。
ただ、行きすぎたポイ活には、チャンスのみならず法的リスクも潜んでいるようだ。
大阪府の機器リース会社社員、木田道夫さん(50歳・仮名)があわや刑事告訴という事態に直面した経緯を明かす。
「子供が成長してカネがかかるようになる一方で、給与は頭打ちだった私は、コロナ禍には入った直後から積極的にポイ活を行うようになり、ここ数年は年間40万円ほどのポイントをコンスタントに獲得していました」(木田さん)
木田さんのポイ活術は、高還元率のクレジットカード利用とポイントサイトの経由、ポイント交換による差益獲得「ポイント多重取り」が基本。特にポイント獲得のチャンスとなっていたのが、月1、2回の出張時だったという。
「新幹線のポイントや飛行機のマイレージに加え、特によく貯まるのが宿泊予約サイトからのポイント。ポイントを貯めたいがゆえに、他の社員が嫌がる出張にも積極的に手を挙げて行っていました」(木田さん)
そんな木田さんが会社の経理課から呼び出されたのは、昨年3月のことだった。
「指定された会議室のドアを開けると、経理課長を含め3人の社員が怖い顔をして待っていました。そこで突き出されたのは過去2年にわたり、私が出張時に利用したホテルの宿泊プランの一覧。経理課長に『これは木田さんが泊まったものに間違いありませんね?』と聞かれたのでそうだと答えると、『わざわざ高い宿泊プランで泊まっているのはなぜですか?』と追及が始まりました」(木田さん)
経理課の指摘は図星だった。木田さんはかねてから出張先の宿泊プランを価格の安さではなくポイント積算効率を重視して選択していたのだ。
予約サイトに掲載された某ホテルの宿泊プラン。標準プランの価格に約5000円を追加することで、付与されるポイントが1万円近くアップする
「たとえば同じ宿泊施設の同じ部屋でも、価格が8000円で500円分ポイント還元というプランと、価格1万円でポイント2000円還元というプランが共存していることがある。宿泊費は会社経費なので、当然、後者を選んでいました。
しかしこの行為が会社から、『実質的なキックバック行為で横領に等しい』と断罪されたのです。コロナ禍の出張時に、Go To キャンペーンで15%の地域共通クーポンが受け取れていたことに味を占めてしまい、経費による度の過ぎたポイ活に手を染めてしまった。会社からは、過去2年に会社経費で利用した宿泊プランの価格と、ポイント割増のない標準プランの価格との差額として約5万円の返還と始末書の提出という処分が下されました」(木田さん)
比較的穏便な社内処分に留まったことは、木田さんにとって幸運だったかもしれない。というのも、木田さんの行為は犯罪として裁かれる可能性もあったからだ。加藤・轟木法律事務所の代表弁護士、加藤博太郎氏が解説する。
「会社経費による宿泊や交通機関の利用でポイントやマイレージを社員個人が獲得することは慣例として認められていますが、より多くのポイントを獲得するために本来必要ないコストを会社に払わせたとすると背任罪に問われ、5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される可能性があります。さらに、ポイント獲得目当ての高額なプランの利用を正当化するために会社に虚偽の説明をしており、その悪質性が認められた場合には、詐欺罪で10年以下の拘禁刑に課せられる可能性もあります」(加藤弁護士)
この一件で、今後は自腹でのポイ活以外はしないことを心に決めたという木田さんだが、ポイ活には税務上のリスクも存在する。元国税調査官で税理士の松嶋洋氏が解説する。
「国税庁は、商品購入やサービス利用の支払い時に付与されるポイントを、実質的な値引きとして扱い、原則として課税対象としないとしています。一方、ポイントサイトで広告を閲覧して獲得したようなポイントは作業への対価とされ、原則、雑所得となります。
課税のタイミングはポイント獲得時ではなく使用時なので、給与所得者の場合は課税対象となる方法で貯めたポイントを年間20万円以上使用すると課税対象となり、雑所得として申告する必要が生じる。また、会社の経費で支払ったポイントを社員が個人的に獲得する場合は、会社からの給与の一部とみなされるべきという考え方もありますが、国税は態度を明らかにしていません」(松嶋税理士)
生活防衛のためのポイ活にも、節度とモラルをわきまえる必要があるようだ。