
当サイトでは当社の提携先等がお客様のニーズ等について調査・分析したり、お客様にお勧めの広告を表⽰する⽬的で Cookie を使⽤する場合があります。
詳しくはこちら
「辛みは味覚じゃない」って本当? おなかを壊す理由は? 訓練すれば慣れる? 唐辛子とわさびの辛みの違いは?
暑い季節になぜか欲してしまう「辛いもの」。辛さと健康の関係や人によって耐性が違う理由などの雑学。唐辛子研究家が教えるオススメ唐辛子など「辛み」についていろいろと調べてみました!
* * *
夏になるとなぜか食べたくなる辛い食べ物。ダイエット効果などが期待される一方で、人によってはおなかを壊すことも。実際のところ、「辛み」は健康にどのような影響を与えるの!? ちぐさ内科クリニック覚王山院長の近藤千種先生に、まずは一問一答形式で質問してみた!
そもそも体は辛みをどのように感じている?
「辛みは、甘みや塩味のように舌の味蕾で感じ取れる味覚ではなく、熱や痛みに近い〝刺激〟なんです。唐辛子に含まれるカプサイシンが、本来は熱や痛みを感知する舌の奥の感覚神経にあるTRPV1受容体と結合することにより、熱さや痛みに似た刺激をもたらします」
辛いものにダイエット効果があるというのは本当?
「辛み成分により自律神経が刺激されて発汗したり、カプサイシンの効果で食後の熱産生やエネルギー消費が若干増えるとはいわれています。しかし、いずれもダイエットに劇的な効果があるかというと微妙です。辛い料理には塩分や脂質の多いものも少なくないので、効果は限定的だと考えたほうがよいです」
暑い季節、辛い食べ物が熱中症予防になるというのは本当?
「これもかなり微妙です。発汗すると汗が皮膚から蒸発するときに体の表面が冷えやすくなるので、辛いものを食べて汗をかくことにより、その効果が得られる可能性はあります。
しかし、日本の夏は湿度が高くて汗が蒸発しづらいので、熱を逃がしにくいと言われています。むしろ、大量の発汗に水分不足が重なると脱水症状につながる危険性もあります」
では、辛みを取ることに健康面のメリットはない?
「先にお伝えしているとおり、辛みは刺激。食べすぎると、口、食道、胃、腸の神経を刺激し、胸やけ、胃痛、腹痛、下痢などの消化器の症状が現れることがあります。
とはいえ、食欲が落ちやすい夏場は香辛料の香りや刺激で食が進みやすくなるのも事実です。健康な人が適量を摂取する分には一概に悪いとは言えません」
人によって辛いものへの耐性が異なるのはなぜ?
「遺伝的な違いもありますが、日頃の食習慣も大きく影響しています。辛いものを日常的に食べていると、その刺激に感覚神経や脳が順応していくのです。
一方で、辛さへの慣れと胃腸症状の出方はまた別ですので、辛いものを食べるとおなかを壊すという方は、辛みを感じにくくなっても取りすぎれば体調を崩す恐れがあります」
辛みを控えたほうがいい人はいる?
「辛み成分を摂取すると、消化管を通過するときに肛門周囲の感覚神経が刺激されるので、痔の人は排便時に痛みを感じやすくなります。
また、逆流性食道炎の人は刺激により症状が悪化しやすくなりますし、過敏性腸症候群の人は少量の辛みでも下痢が誘発される恐れがあります。子供、高齢者、妊娠中の女性も症状が出る場合は取りすぎに注意しましょう」
辛いものを食べておなかを壊しやすい人は、訓練しても胃腸は慣れないため注意が必要
牛乳やヨーグルトなどの乳製品が辛みの刺激を和らげるメカニズムって?
「カプサイシンは水だけでは十分に流れにくい一方で、脂に溶けやすい性質を持つ。脂肪やタンパク質を含んだ乳製品を取ると口内の辛みを和らげる効果が期待できます」
辛みによる腹痛にも乳製品が役立つ?
「乳製品はあくまでも口内に残った辛みを軽減するだけで、胃や腸への刺激をなくすことはできません。腹痛や下痢などの症状が出ている場合は、むしろ乳製品の摂取により悪化する可能性もあります」
辛みを取りすぎて死ぬことはある?
「辛みの摂取量に基準は設けられておらず、辛みそのもので命を落とす危険性は極めて低いです。しかし、激辛チャレンジなどで大量のカプサイシンを一気に摂取すると、体に強い刺激を与え、激しい嘔吐を伴う食道損傷や、可逆性脳血管攣縮症候群による激しい頭痛、重症の脱水など、いずれも非常にまれですが発症例が報告されています。辛みはあくまでも嗜好品。無理はせず、おいしく味わえる範囲で楽しみましょう」
食べすぎには注意が必要だが、一度ハマると病みつきになる「辛み」。ここからは、そんな辛みにまつわる雑学を紹介していこう。
そもそも、なぜ人は辛みに引かれるのか。激辛・うま辛料理専門家の金 成姫氏は次のように語る。
「激辛料理を食べて刺激を感じると、痛みを抑えるために快楽ホルモンといわれるβ-エンドルフィンや興奮・覚醒などの効果があるアドレナリンが分泌されるといわれています。それらが高揚感や多幸感をもたらすので、クセになり、もっと強い刺激を求めるようになります」
ひと口に辛みと言っても、唐辛子とわさびでは辛さの感じ方が異なる。違いが生じる理由について、信州大学農学部で唐辛子の研究を行なう松島憲一教授が教えてくれた。
唐辛子の中の種子に囲まれた「胎座」と「隔壁」でカプサイシンが作られるため、その部分が最も辛い
「唐辛子の果実の中には種がついている『胎座』という部分と、それに続く『隔壁』と呼ばれる平たい部分があります。カプサイシンはここで生成されるため、種子が一番辛いのではなく、胎座と隔壁の部分が最も辛いです。
一方のわさびは、アリルイソチオシアネートという揮発性の成分が辛みのもとになっています。これは口内の温度によって気化し、そのガスが鼻を通って出ていくときに粘膜を刺激するので、ツーンとした独特の感覚が生まれます。これに対して唐辛子のカプサイシンは揮発しにくいので口の中だけで辛いのです」
ちなみに、世界で一番辛い食べ物ってなんだろう。
「世界一辛い唐辛子として『ペッパーX』がギネス世界記録に認定されています。辛みを測るスコヴィル値は269万の数値をたたき出しています。これは日本の一味唐辛子に使う品種の80倍以上の辛さに匹敵します」
世界中で数えきれないほどの品種があるといわれる唐辛子。海外にはこんな個性的な唐辛子も存在するという。
「ミャンマーのナガ族が食べる唐辛子に『アササトゥトゥ』という、グレープフルーツのような香りがする唐辛子があります。爽やかな香りとは裏腹に、一味唐辛子に使う品種の35倍以上の辛さを有している激辛唐辛子です」
日本で生産している唐辛子のことも知りたい。
「個人的にオススメなのが、長野県北部の中野市や信濃町の在来品種『ぼたんこしょう』です。ピーマンのような形をしていて、辛みもそこまで強くないので食べやすいです。
この地域では、細かく刻んだミョウガ、丸ナスや大根のみそ漬けなどとぼたんこしょうを一緒に混ぜて『やらた』というウエットなふりかけを作ります。これが本当においしく、ご飯3杯は食べられます。
ほかにも、大阪府でなにわの伝統野菜に選ばれた鷹の爪純系品種『堺鷹の爪』や青森県の『清水森ナンバ』など、全国津々浦々にたくさんのローカル唐辛子があります。お土産にもオススメですよ」
松島教授オススメの辛すぎない唐辛子、長野県の「ぼたんこしょう」
日本で改良された唐辛子といえば「ししとう」を思い浮かべる人も多いはず。ししとうに関する雑学も聞いた。
「ししとうって、たまにめちゃくちゃ辛い〝当たり〟が混ざっているじゃないですか。うちの研究室で『種の少ないししとうは辛い』という事実を突き止めました。
ししとうのめしべを切って受粉できないようにして、果実だけを肥大化させる処理をして種のないししとうを作ってみたところ、とても辛いししとうが出来上がったんです。
外側から見分けるのはなかなか難しいのですが、もしカチカチに硬いししとうがあったら、それは種が少なくて辛い可能性が高いと言えます」
昔から唐辛子には虫が寄ってこないといわれるけど、その理由について金氏に聞いた。
「唐辛子にはテルペノイド系化合物という植物由来のかんきつ系の香り成分が含まれています。この成分を虫が嫌い、害虫よけになるとされています。ただし、すべての虫に効果があるわけではありません」
最後に、今年の夏にはやりそうなうま辛グルメを金氏が教えてくれた。
「昨年から大ブームを巻き起こしている『麻辣湯』に続き、今年は『麻辣串』が流行する予感です。韓国発の麻辣串専門店『小麻辣』が今年日本に上陸しました。
麻辣串とは、串に刺さった新鮮な食材を特製麻辣オイルで味つけし、カラッと揚げたもの。お好みの具材と辛さを選べるのも楽しく、若者の間で早くも話題を呼んでいます」
夏バテ気味の体に良い刺激を与えてくれる辛み。体調に配慮しながら上手に取り入れて猛暑を乗り切ろう。