
渡辺雅史
わたなべ・まさし
渡辺雅史の記事一覧
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。
フードデリバリー業界は出前館、ウーバーイーツ、ロケットナウの三強時代になりました
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第169回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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9月30日、menuがフードデリバリー事業から撤退します。2020年4月7日、コロナ禍というフードデリバリー業者にとっては追い風となる状況から始まった事業がわずか6年半で撤退となりました。そして、「Wolt撤退、特別報酬の大幅アップ......。この春に起きたフードデリバリー業界の大きな変化」でも書いた通り、menuと同じ20年に事業が始まったWoltも今年撤退しました。
なぜ撤退する企業が相次いでいるのか。その事情やフードデリバリーの未来をウーバーイーツ配達員視点から考察したいと思います。
私が配達を始めた18年1月、フードデリバリーの最大手は出前館でした。おぼろげな記憶ですが、出前館は当時、配送業者と契約して、その業者がこれまでデリバリーを行なっていなかった飲食店の商品を配達。新しい形の出前として知名度を固めた時期だったと思います。
19年に入るとウーバーイーツの配達員が増えるとともに配達エリアが拡大。個人が配達を請け負うスタイルで配達員を増やしているウーバーの動向を見て、出前館も個人配達員に門戸を広げていきます。
この頃、ウーバーイーツは配達員の増員と配達エリアの拡大に力を入れていて、新規配達員を紹介すると3万円の紹介金を支払うキャンペーンや、新たにサービスを開始するエリアで一定数の配達をすると特別報酬が出る制度など、特別ボーナスを出しまくって配達員を確保していました。
この時点でフードデリバリー事業を行なっていたのは、出前館、ウーバーイーツぐらいだったと思います。
20年になると多数の企業がフードデリバリー事業に参入。menu、Woltだけでなく、フードパンダ、フードネコ、Chompyが東京エリアでサービスを開始します。
本来であれば、ここで配達員の奪い合いが激化するところですが、新型コロナウイルス感染症の拡大でたくさんの人がフードデリバリーで働くようになり、配達員の供給過剰という事象が発生。配達員が増えすぎて1社の配達だけでは稼ぐことができないことから、複数のフードデリバリーを兼業する配達員が増えました。注文需要も増えていたため、この頃がフードデリバリー各社の絶頂期だったと思います。
ですが21年、22年にフードネコとフードパンダ、23年にはChompyと、規模の小さい事業者から撤退が始まります。残ったのは出前館、ウーバーイーツ、menuとWolt。配達エリアを見る限りWoltは少し弱いものの、国内のフードデリバリー事業はこの4社で落ち着くのだろうと感じていました。
ちなみにこの時期、ウーバーイーツはマックデリバリーや7NOWなど、大手チェーン店が独自に運営するデリバリーサービスの代行配達事業を開始。配達員が店内で買い物をするため、店のスタッフに負担のかからない買い物代行サービスピック・パック・ペイ(PPP)や処方箋が必要な薬の配達など、新たな試みを始めていました。
そんな状況が大きく変わったのが25年。ロケットナウの参入です。
これまでのフードデリバリーは、事業者が飲食店と注文者から利用手数料を徴収。その手数料を配達員への報酬や社員への給料、企業の利益としていました。飲食店は利用手数料を商品の価格にプラス、つまり、店頭で販売する価格よりもフードデリバリーで注文する価格を高く設定することで利益を確保していました。
そんな中、ロケットナウは「送料・サービス料無料」「店と同価格」という安さ重視で事業を展開。配達エリアも急拡大しました。
このロケットナウの攻勢に対し、ウーバーイーツも一部のチェーン店で店と同価格のキャンペーンを展開。Woltはロケットナウの参入以前から店頭と同価格を押し出していましたが周知されず、独自のストロングポイントが消えてしまいました。
menuは配達員確保のために採用していた、配達を行なうほど配達料のベース金額が上がるランク制度が裏目に。ロケットナウに注文が流れることで注文数が減少。配達員はランクの維持ができず、専業配達員をしていた人が他の事業者へ。注文者、配達員がともに離れる負のスパイラルに陥ってしまいます。
そうしてWoltとmenuが撤退。出前館、ウーバーイーツ、新興のロケットナウの三強時代となりました。結果的にコロナでデリバリー需要が増えた際に事業を拡大しなかった企業、安売り合戦に耐えられなかった企業が撤退、というのが現在の状況です。
では、この三強時代の将来はどうなるのか。鍵を握るのは、ロケットナウの体力がいつまで続くのかです。
ロケットナウの配達員に話を聞くと「以前より稼げなくなった」という声ばかりが聞こえてきます。また、フードデリバリーで一番注文のあるマクドナルドの商品をロケットナウから注文することはできません。
この不利な状況でも、安さ重視の路線を押し切る体力があれば、ウーバーは買い物代行に力を入れるなど、フードデリバリーの中で住み分けを画策していく可能性があります。また、各社の現在のサービス提供エリアの展開状況であれば、都市部はロケットナウ、その他の地域は出前館といった分散も起こるかもしれません。
ただ、早い段階でロケットナウが撤退となると、出前館、ウーバーイーツともに価格を値上げ。配達員の報酬も下がって、フードデリバリーは気軽に注文できない存在となる可能性が高いでしょう。