【短期集中連載②】「世界は広い、冒険しろ」。海外で日本人起業家300人を成功に導いたコンサル・土居正英が明かす成功への"棚卸し"<諸橋穂乃佳氏のケース>

取材・文/林壮一


「ビザを取り、海を渡れ!」と挑戦者を鼓舞。海外20か国でビジネスにチャレンジする300名近い日本人を成功に導き、その後も無期限で支え続けるコンサルタントがいる。土居正英(47)がその人だ。

P&Gスイス本部でグローバル市場を担当し、ファーストリテイリングなどでCMOを歴任後に自ら起業。

年商4億円以上を売り上げる眼鏡店をイングランドで経営する一方、自らのノウハウと人脈を惜しげもなく提供することで海外での起業に挑む日本人たちをサポートするコンサル業務に着手、月収200万のウェブマーケターや年商1億円超えの企業を輩出するなど、成功者を生み出し続けている。

土居の助言を受け、海外で羽ばたいた事業者たちの成功までの道のりを紹介していく連載の一回目では、フランスで起業した後にオランダに移住し、現在では月収200万を稼ぐ諸橋穂乃佳さんを紹介する。

「自分が売れる人になる」よりも「クライアントの売上を上げられる人になる」ことが本質であり、長く収益を生み続けられると言い切る土居は、諸橋さんとどのような"棚卸し"を行ったのか?

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1994年神奈川県生まれの諸橋穂乃佳は大学卒業後、ワーキングホリデーでフランス・パリに滞在した。言葉の壁が存在したが、どうしても当地に残りたいと足がかりを探るなか、土居の存在を知る。そして、「移住したいのであれば己の事業を持て」という助言を胸に動き始めた。第一歩として、LP作成、メール配信、LINE配信、会員サイト構築、決済機能を一つにまとめたマーケティング公式サイトを活用する。

「昨今はAIの発達により、マーケティング変化のスピードが本当に速いんです。私が諸橋さんに勧めた『UTAGE』は、複数のチャネルを横断して管理し、お客様との継続的な関係構築を設計するプラットフォームです。

私自身がビジネスに導入してみて、顧客管理ができる最強のツールだと感じましたし、市場でも注目を集めていました。私はコンサルティングする折、どんな方にもマーケティングの景色が見えるようになって頂きたいのです。ですが、仮に今『UTAGE』で上手く行っても、数年後にはAIに代わられている可能性があります。とにかくスピードに追いつかないとビジネスとして成立しません。

認知→興味→信頼→購入→継続という一連の導線を、設計・運営するための仕組が大事なのです。『UTAGE』は興味から購入までに適応できました。諸橋さんはこの『UTAGE』を入口にして学び、クライアントのマーケティングキャンペーンを設計・運営する経験を積みました。その結果、顧客を獲得し、大きな信頼を得ていきました。

彼女が次のステップとして取り組んだのが、Meta広告やGoogle広告などの運用です。広告を単に出稿するのではなく、いかなるターゲットにどんな訴求を行い、どのような導線で購入につなげるかまでを設計し、数字を改善していくのです。売上を決めるのは<誰に何を伝えるか><どう導線を設計するか>という戦略です。

私が20年以上マーケティングに携わってきた中で、売上に直結する本質は、ブランディング、導線構築(ファネル設計)、広告の3つしかありません。逆に言えば、それ以外には極力時間を使わないという考えですね」

諸橋のケースでは起業から僅か2週間で初クライアントを得た。そして4カ月後には、月収が100万円を超えた。

「諸橋さんは以前、一般消費者向けにブログを書き、自分の商品を販売して収益化することに挑戦していました。現在でいうSNSで講座やコンテンツを販売するようなモデルです。しかし、その方法では成果が出なかった。なので、外部ツールを学んで取り入れ『私はこれが出来る』という状況を作り出す必要がありました。対企業に対するスキルを身に付けた方が、収益化しやすいですからね。

過去・現在・未来を彼女と一緒に棚卸しして、何が得意なのか、どんな仕事なら成果が出るのかを言語化していきました。その結果、諸橋さんは自分の商品を売るよりも、"誰かのマーケティングを支援する裏方"が圧倒的に向いていることが分かりました。私のコーチングでは、過去・現在・未来を徹底的に聞き、その人の等身大の強みを見つけます。強みと市場を組み合わせ、<最も収益化できるチャンスがどこにあるか>を一人ひとり個別に判断します」

土居は、「自分が売れる人になる」よりも、「クライアントの売上を上げられる人になる」ことが本質であり、長く収益を生み続けられると言い切る。

「世の中には短期間で大きく稼げる方法論が腐るほど語られていますが、私はそのようなものは長続きしないと感じています。地道ではありますが、マーケティングを学び、クライアントの売上向上に貢献し、その結果として深い信頼関係を築き、長期的な収益につなげることを一貫して伝えています。それが私の考え方です」

土居は、AIの発達により多くの人間が職を失っていく日が到来する、という論についてはこう述べる。

「AIエージェントとは、Claude Codeのような生成AIを活用し、マーケティング業務や実行プロセス全体をマネジメントする仕組みを指しています。AIは業務効率を大きく高めてくれます。でも私は、AIが売上を増加するわけではない、と感じます。

作業スキルは今後、ますますAIへ置き換わっていきます。ですが、<未来を描き、戦略を立て、意思決定する>作業は人間にしかできません。だからこそ私は、AIを使いこなすのではなく、AIを使って売上をつくるマーケティング戦略家となることを重視します。そして、戦略を実行できるディレクション力を磨くことが、クライアントの売上を伸ばし、自分自身が最も高い収益を生み出せる道だと思うからです」

起業してビザを手にし、フランスに居を構えた諸橋は年収1200万円を超え、確かな手応えを感じるようになる。だからこそ、もっと長くヨーロッパ圏で活動したいと願うようになった。ところが、フランスは10年スパンのビザしか出ない。そこで、永住権を手にしようと、2026年1月にオランダに移住した。オランダに住めば、同国の永住権だけでなく、EUにおける永住権を得られる可能性も出てくる。さらに広告とAIエージェントを学んだことで、諸橋の月収は200万円以上になった。彼女は日本語で、日本人を相手にしたビジネスで自身の価値を高めたのだ。

「諸橋さんはクライアントに信用され、マーケティング顧問と、広告、AIを手がけるようになりました。顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでのプロセスを設計・可視化し、各段階での離脱を防いで成約率を高める仕組みを作るファネル構築にも着手し、戦略全体を俯瞰し、評価を得たのです」

教え子の飛躍に目を細めながら、土居は言う。

「キャッシュができたら、自分の事業に入れる。広告を作る。そうすれば、認知されるスピードが上がります。SNSでフォロワーを増やすよりも大事なのは広告です。P&Gも物凄く広告を打ちます。僕の眼鏡屋もやりました。マーケティングの力でビジネスを作ったんです。基本を理解すれば、どんな業界にも対応できます。諸橋さんも、そうやって顧客を広げていきましたね。要するに、売り上げを作るディレクションスキルを身に付けることが肝心です。

今や、諸橋さんはあらゆる業界に対応できるようになりました。店舗をお持ちの方や、オンラインビジネスのクライアントさん、コンテンツ販売の方とも契約していきました。もう、チャンスだらけですよ。個人マーケティング顧問なったことで、収益が倍増したんです。

原則は一切変わりません。いかにクライアントの売り上げを増やすか、という課題をこなしていくことがニーズを産みます。彼女はお客さんの横に立って、一緒にビジネスを見ていく行為が面白い、と語ります。言われたことをやるだけ、という仕事ではないんですね。得意先と深い関係になっていきます。

しかもブランディング→導線設計→広告認知拡大という3つの要素は、万国共通ですから、外貨を稼ぐことにも繋がります。自分をブランディングしていく。つまり、進化していくんですね。すると、BtoBからBtoCに移っていきます。加えて、市場は瞬く間に変化しますから、一つのもので稼ぎ続けるのは難しいということも認識しなければいけません。場所に縛られない収益の土台と、 それを拡大する仕組みを学習し、人生を設計していってほしいですね」

  • 土居正英

    土居正英

    どい・まさひで

    欧州在住10年の経営者。慶應義塾大学卒業後、P&Gスイス本部でグローバル市場を担当し、ファーストリテイリングなどでCMOを歴任。その後、英国で起業し、現在は年商5億円規模の眼鏡事業とコンサルティング事業の2社を経営する。大企業での海外赴任、英国での起業、永住権取得という自身の経験を生かし、現在は海外に挑戦する事業家の育成にも力を入れている。

  • 林壮一

    林壮一

    1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイビーシー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。

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