レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏

記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。今回も平成レトロ時代に忘れられ、記憶の底に埋没しがちな遺産を、一緒に掘り返していきましょう。

さて、皆さんが思い浮かべるシングルCDはどんな大きさでしょうか。アルバムと同じ直径のマキシシングル? それとも平成初期の小さいCDでしょうか。音楽サブスクが主流の今では、物理的な大きさをイメージできないかもしれません。今回は8㎝の短冊形CDについて振り返りたいと思います。

7インチレコードに短冊CDを重ねるとほぼ半分です7インチレコードに短冊CDを重ねるとほぼ半分です

7インチレコードの半分のサイズでした7インチレコードの半分のサイズでした

12㎝のアルバムCDにしか対応してないプレイヤーで再生するには、12㎝アダプターを装着するという強引な手段が必要でした12㎝のアルバムCDにしか対応してないプレイヤーで再生するには、12㎝アダプターを装着するという強引な手段が必要でした

CDが登場した当時は、直径12㎝のアルバムサイズだけでした。CDが普及した後も7インチレコードが販売され続け、そこに登場したのが短冊形CDです。 

この短冊形は、すでにレコードショップで使われていた7インチレコードの棚を流用するための規格で、横2列に並べるとぴったり収まる幅になっていました。

しかし7インチレコードの棚を流用した場合、正方形のジャケットだと縦方向の尺が足らず、上からCDのタイトルが見えづらい。その解決策として縦方向が長い、短冊デザインが採用されたのです。なので、ジャケットの裏面には、〝折り畳んで正方形にする〟ための説明も表記されていました。

専用のウォークマンも登場して高音質を持ち運べる時代に!専用のウォークマンも登場して高音質を持ち運べる時代に!

8㎝CD専用のCDウォークマンも登場しました。このシリーズには、ディスクの受け軸を外側へズラし、ディスクを本体外側にハミ出させた状態で回転させ12㎝CDの再生にも対応するという、ぶっ飛んだ機種もありました8㎝CD専用のCDウォークマンも登場しました。このシリーズには、ディスクの受け軸を外側へズラし、ディスクを本体外側にハミ出させた状態で回転させ12㎝CDの再生にも対応するという、ぶっ飛んだ機種もありました

平成初期の世はドラマやCMからミリオンヒットが連発。若者は流行を追い求め、あえてアルバムより割高なシングルを買っていました。それらを畳まず大切に保管する人が増え、ジャケットのデザインは〝折り畳まない前提〟のものになっていったのです。

かつては別売りされていたプラケースも折り畳む前提の正方形だったものが、折らずに収納できる長方形となり、皆が短冊CDを大切に保管する時代が長く続きました。そして、90年代終わり頃からサイズが12㎝のアルバムと同じマキシシングルが増えていったのです。

当時の人気バラエティ番組『伊東家の食卓』(日本テレビ)では、短冊形CDのプラスチックの網部分で〝卵の白身と黄身を分離する〟って裏ワザをやっていましたので、ぜひとも入手して試しましょう。

さまざまな便利グッズがありました! 外側が紙製の短冊CDを守る別売りのプラケース。タイトル部分にカマボコ形の拡大レンズを採用した商品も登場。これで文字が大きく見えます。個人的にノーベル賞をあげたいさまざまな便利グッズがありました! 外側が紙製の短冊CDを守る別売りのプラケース。タイトル部分にカマボコ形の拡大レンズを採用した商品も登場。これで文字が大きく見えます。個人的にノーベル賞をあげたい

●山下メロ 
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある

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