
ピエール瀧
ぴえーる・たき
ピエール瀧の記事一覧
1967年生まれ、静岡県出身。ミュージシャン、俳優、声優、タレント。
「無駄こそ宝なり」が信条。好物はもやしソバ。
公式Instagram【@pierre_taki】
幻のもやし「大鰐温泉もやし」の生産者さんを訪ねます! 生産者の八木橋順さんと
「もやしソバ」をこよなく愛するピエール瀧が、名店をめぐりながら、もやしソバとは何なのかを考えたり考えなかったりするこの連載。連載1周年企画第2弾。幻のもやしといわれる「大鰐温泉もやし」の生産者の方にお話を聞きました。大鰐温泉もやしを作るのって、思ったよりもかなり大変です。でも、だからこそおいしい!
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――今回は、青森県南津軽郡大鰐町にやって来ました。連載1周年記念で〝幻のもやし〟と呼ばれる「大鰐温泉もやし」ソバを食べる前に、まずは関係者の方にお話を伺います。生産者の八木橋順さんと、プロジェクトおおわに事業協同組合の船水英俊さんです。
ピエール瀧(以下、瀧) 本日はよろしくお願いいたします。
船水英俊さん(以下、船水さん) こちらこそ、よろしくお願いします。大鰐温泉もやしは約400年前の江戸時代初期から、その栽培方法は一切口外されることなく、一子相伝で守り継がれてきた伝統野菜です。大正時代には最大29軒のもやし農家がありましたが、後継者不足のため2004年には4軒まで減少してしまいました。
瀧 そうなんですね。
船水さん そこで、伝統の大鰐温泉もやしの栽培を絶やさないために、町が地元の人に後継者育成に向けた新規就農者を募集したんです。そして、厳しい審査を経て選ばれたうちのひとりが、こちらの八木橋順さんです。
八木橋順さん(以下、八木橋さん) よろしくお願いします。自分は30代半ばまで勤め人でした。元農家とかではありません。大鰐温泉もやしは、朝、スーパーに並んだらすぐになくなってしまうくらいで、地元に住んでる人でもなかなか口にできません。だから、このままだと本当になくなってしまうかもしれないと思ったんです。
船水さん 八木橋さんは新規就農者になってから、先輩のもやし農家さんについて5年くらい修業したんです。
瀧 それで、ようやく一本立ちですか。もう何年くらいやられているんですか?
八木橋さん 15年くらいです。
船水さん 実は、彼はこの15年間、一日も休んでいないんですよ。
瀧 マジですか?
船水さん 大鰐温泉もやしは、基本的に冬野菜なんです。気温の低い冬に温泉の熱を使って育てるんです。夏は気温や湿度が高くて、雑菌が繁殖しやすいのでなかなか育たない。だから冬場しか作っていなかったんですが、今は全国から注目されて、もやしを食べたくて町に観光に来られるお客さまにお応えするために、八木橋さんには夏場も作ってもらっています。ほかの生産者さんは、夏はリンゴやほかの農作物を作ったりしています。
八木橋さん 夏場は午前中にもやしをやって、午後はほかの仕事をしています。出稼ぎですね。
瀧 失礼を承知で言いますけど、もやしってそんなにデリケートなものなんですか? 豆って強そうじゃないですか。畑にまいて、鳥に食われなかったら芽吹くみたいなイメージがあるんですが。
八木橋さん もともとはそういうものですよね。田んぼのあぜにまいたりしていましたから。
船水さん 大鰐温泉もやしが、ほかのもやしと何が違うかというと、まず豆は「小八豆」といって、大鰐町にしかない地域在来種です。一般的な大豆と違ってめっちゃ小さいんですよ。こちらです。
瀧 本当だ。大豆の半分くらいの大きさですね。
船水さん そして、大鰐町に湧く温泉の温泉水と温泉熱を使って、日本で唯一ともいわれるもやしの土耕栽培をしています。さらに、土も大鰐町の黒土を使っています。小八豆、温泉、黒土、この大鰐町の3つがそろわないと大鰐温泉もやしとは言えないんです。そして、30~40cmの長さまで育ちます。
大鰐町の小八豆、温泉、黒土、この3つがそろって大鰐温泉もやしです
瀧 やっぱり、この大鰐町がもやしを育てる場所に適していたということなんでしょうね。それにしても、さっきから忍者の里の話を聞いている感じなんですよ。一子相伝とか、修業期間とか、この町にしかない小八豆とか。まるで〝もやし忍者の里〟の話ですよ。
八木橋さん (笑)。
瀧 今やられているのは、どんな作業なんですか?
八木橋さん 洗浄作業です。収穫したもやしの根っこを違う温度の温泉水で2段階で洗って、最後にひと晩冷ました冷たい温泉水で締めるとシャキッとなるんです。水道水は使っていません。
瀧 で、それをワラで縛ると。1日に何束くらいできるんですか?
八木橋さん うちは100~120束くらいですね。
瀧 一束何gくらいですか?
八木橋さん 300gです。
瀧 ということは、1日に30kgしかできないってことですよね。短いもやしを抜いたり、超丁寧ですもんね。奥にある土室みたいな所で、もやしを作ってるんですか?
船水さん 生産者の間ではこの土室を「沢」と呼んでいますが、トップシーズンになると沢を7本使うんです。植えつけから収穫まで1週間かかるので、毎日収穫するためには7本必要なんです。
瀧 ローテーションで7本休まないんなら、今、自分がこの沢にいるってことで曜日がわかりますね。
八木橋さん もやしを収穫した後は土を沢からいったん取り除いて、また新たに用意した土を沢に敷き詰めてから小八豆を植えつけます。
もやしを収穫したら土を取り除き、新たに土を入れて植えつけます
瀧 穴掘って土を埋めてって、半分以上は土木作業じゃないですか。
八木橋さん そうですね。
船水さん もやしの生産に取りかかるのが、毎朝5時くらいからなんですが、冬は雪が何十cmも積もるので、まずは雪かきから始まるんです。その雪かきを始めるのがだいたい2時くらいなんですよ。
八木橋さん 車を入れたりする必要があるので。
瀧 聞くだけで大変な仕事ですね。でも、そういうことを耐え忍んでこその〝もやし忍者〟ですもんね。そして「おいしい」という声が八木橋さんに届くことで、きっとやりがいも出るんでしょうね。
八木橋さん はい。だから休めないんです。
瀧 この土地に来なければ、ほぼ食べられないもやしですもんね。
八木橋さん そうですね。だから、ぜひ来て食べてほしいです。
瀧 本日は、お忙しいところ本当にありがとうございました!
――次回、ついに大鰐温泉もやしソバを食べに行きます!
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※おいしいもやしソバなどの情報は【moemoyashisoba@gmail.com】まで
■ピエール瀧(ぴえーる・たき)
1967年生まれ、静岡県出身。ミュージシャン、俳優、声優、タレント。
「無駄こそ宝なり」が信条。好物はもやしソバ。
公式Instagram【@pierre_taki】