唯一無二の味わいと存在感。市川紗椰が愛する「魚肉ソーセージ」の魅力

魚肉ソーセージ色の花と。フランスのジヴェルニーにて魚肉ソーセージ色の花と。フランスのジヴェルニーにて

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「魚肉ソーセージ」について語る。

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スーパーに行けば今でも普通に売っているし、特別な珍味でもない。むしろ当たり前すぎる存在。なのに、あのピンク色の円筒形を見ると、うれしくなるのはなぜでしょう。ああ魚肉ソーセージ。

魚肉ソーセージ、略してギョニソーの味は、少し説明に困ります。なぜなら、あの味は「魚肉ソーセージ味」としか言いようがないから。ソーセージとも違う。かまぼことも違う。ちくわでもない。ハムでもない。正直、魚でもない。あの独特の食感もそう。弾力があるのに軟らかい。練り物なのに肉っぽさも少しある。結局、「魚肉ソーセージ食感」としか表現できない。唯一無二とはこういうことを言うのでしょう。

そして何より、輪切りにしたときの断面が好きです。あの均質なピンク色。気泡の少ない、滑らかな表面。ぎゅっと詰まった密度感。切るたびに「今日もきれいだな、こんなムラのないピンクなかなかないな」と思います。映ばえ文化以降、食べ物を断面で語ることが増えましたが、ギョニソーの美しさは見落とされがちだと思います。

〝儀式〟としてのギョニソーも魅力的。あのオレンジのフィルム、すっと気持ちよくむける日もあれば、途中で切れて格闘になる日もある。でも不思議なことに、それすら嫌いになれません。むしろ、魚肉ソーセージという食べ物は、あの包装をむく儀式込みで完成しているような気がします。

そして忘れてはならないのが、端っこです。あの金具の近く。少しだけ硬く、少しだけ締まった部分。好き嫌いが分かれる場所ですが、私はけっこう好きです。ギョニソー好きには、端っこ愛好家が意外と多い気がしています。

万能なのも魅力。サラダにも炒め物にも使える。チャーハンにも参加できる。決して出しゃばらず、料理の主役を奪わず、それでいて確かな存在感を示す。さらに偉いのは、常温でもおいしいところ。冷蔵庫から出したばかりでなくてもいい。むしろ常温のほうが、香りと食感を楽しめる気すらします。

もちろん焼いても素晴らしい。表面に軽く焼き色がつくと急に香ばしくなり、大人のつまみの顔を見せる。しかし、焼きすぎはいけません。焦げるほど焼くと、魚肉ソーセージが魚肉ソーセージでなくなってしまう。魚肉ソーセージ性、大事。

私の好きな食べ方は、輪切りにしてからのケチャップ炒め。ナポリタンの息吹を感じられる、シンプルギョニソー。あとは、丸かじり。1本そのまま持って、かじる。噛み跡が残る。またかじる。この原始的な食べ方が、なぜこんなにしっくりくるのでしょう。

私は知っています。午後3時頃。昼食からは時間がたったけど、夕食にはまだ早い。そんな小腹がすいた時間に1本かじるギョニソーが、実はかなり完成された食体験であることを。決して主役ではないけど、「今日はなんだか魚肉ソーセージの気分だな」という日が確かにあります。

そしてその期待は、ほぼ裏切られません。ギョニソーはいつ食べても同じ場所にいて、同じようにおいしい。メーカーごとの風味の違いはあるけど、流行も気分も関係なく淡々と実力を発揮する。魚肉ソーセージ、優秀すぎます。

●市川紗椰 
米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。元大相撲力士で漫画家の琴剣淳弥さんに生前、「魚肉ソーセージをちゃんこ鍋に入れるといいだしが出る」と教えてもらって以来、実践してる。オススメ。公式Instagram【@its.sayaichikawa】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!

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