
村上隆保
むらかみ・たかほ
村上隆保の記事一覧
編集者/ライター 『週刊プレイボーイ』では、特集記事のほかに爆笑問題、リリー・フランキー、ひろゆきの連載を担当。公式X【@takapoda4】
9月19日に開幕する「愛知・名古屋アジア大会」
9月19日に開幕する「愛知・名古屋アジア大会」。世界が注目するこのスポーツの祭典を前にひそかに進化し、今まであまり知られていない「名古屋新グルメ」の大会を開催することになった。今回はその決勝戦だ。予選を勝ち抜いた8つのメニューから金・銀・銅を決める!!
さあ、始まりました「名古屋新グルメ決戦2026」。
実況は庶民の舌を持つ男・編集M、そして解説はフードジャーナリストのはんつ遠藤氏でお送りいたします。
まず、最初は「幅広きしめん」です。「芳乃家(よしのや)」さんの「ざるきしめん」(850円)がエントリーしています。
「20~30年前くらいまで、うどん店にとってきしめんは脇役のような存在でした。それで10年ほど前に印象に残るきしめんを作ろうと思って、麺の幅を今のように4㎝くらいに太くしたんです。
長さは約90㎝。ざるきしめんの1人前はそれが2本。今は9割以上のお客さまがきしめんを注文されます」(店主の野嶋氏)
幅広きしめん(ざるきしめん)850円
「芳乃家」名古屋市昭和区桜山町2-38-1 ℡052-841-6884
「幅広だけに歯応えがすごく、モチモチした食感が楽しめます。甘めのつゆとの相性もいい。
きしめんはうどんの生地を作ってから平たく延ばすわけですから、うどんより手間がかかる。しかも幅広にするにはさらに時間がかかります。それを毎日手打ちでやっているわけですから、本当に頭が下がります」(遠藤氏)
2番目は「清須からあげまぶし」。「まつ寿司」さんの「戦(いくさ)まぶし」(1430円)です。
「2021年の12月から始めたメニューです。コロナ禍のときに地元飲食店のメンバーが名物グルメを作ろうということで集まりました。
そこで、清須会議が豊臣秀吉の天下〝取り〟のきっかけになったということで、〝鶏〟肉を使った料理を作ることを決めました。また、日本料理店でも中華料理店でも喫茶店でも作れるメニューということで、唐揚げにしたんです。
『清須市産の味噌を使った唐揚げ』『ひつまぶし方式で提供する』『愛知県産の野菜を使う』ことが条件です。現在は9店舗で提供しています」(店主の後藤氏)
清須からあげまぶし(戦まぶし) 1430円
「まつ寿司」清須市清洲1-8-1 ℡052-400-4955
「唐揚げは味噌味と甘酢味の2種類あって、その間にレタスを置くことで戦をイメージしています。また、まつ寿司さんは、味変の調味料としてタルタルソースを提供しています。これは宮崎県のチキン南蛮のスタイルです。いろいろなご当地グルメを研究して、このメニューになったことがわかります」(遠藤氏)
3番目は「鯱市(しゃちいち)」さんの「カレー煮込うどん」(1067円)です。
「味噌煮込みうどん専門店『山本屋本店』のカレー好きスタッフが、山本屋本店のメニューのラインナップを広げたいと思って開発していたのですが、専門店として出せるクオリティのものができたので、13年に別ブランドとしてお店を出しました。
麺もだしも味噌煮込みうどんと同じものを使っていますが、つゆに溶かすものは味噌ではなくカレーです。でも、それだけでまったく新しい味になりました。さらに生卵やチーズ、串カツなどをトッピングすることで、お好きな味にアレンジできます」(山本屋本店の永田氏)
カレー煮込みうどん 1067円
「鯱市 錦通伏見店」名古屋市中区錦2-16-21 ℡052-223-2531
「カレールーにカツオやムロアジなどで取っただしを使っているんですが、カレーのスパイスを利かせすぎると、魚介系のいい香りも消してしまいます。でも、このカレー煮込みうどんはそのバランスがとてもいい。懐かしい、お母さんが作ったカレーといった感じです」(遠藤氏)
4番目は「星が丘製麺所」さんの「台湾きしめん」(1050円)。
「台湾きしめんは、星が丘製麺所がオープンした5年ほど前からあるメニューです。きしめんは、昔は名古屋の日常食でしたが、最近は後継者不足などの問題もあって廃れてきてしまっています。
そこで『もう一度、きしめん文化を世の中に広めたい』という思いから、この店を始めました。でも、今までと同じものを出しても伝わらないので、台湾まぜそばのような新しさをきしめんで表現しようと思って作りました」(星が丘製麺所の篠氏)
台湾きしめん 1050円
「星が丘製麺所 久屋大通店」名古屋市東区東桜1-1-1 ℡052-228-8737
「台湾ラーメンから始まって、台湾まぜそば、皿台湾など、今、台湾ミンチを使った台湾〇〇というメニューが増えています。そのきしめんバージョンです。
さらに約2.5㎝の幅広きしめんなので、今の名古屋の流行をふたつ合わせて味わえます」(遠藤氏)
5番目は「おでん&ワイン カモシヤ」さんの「名古屋ハヤシ」(979円)です。
「名古屋ハヤシは、11年に名古屋市内の飲食店8店舗が集まって作った新しいご当地グルメ8種のうちのひとつでした。でも、その活動は約3年で終了。その後、15年に『名古屋ハヤシ倶楽部』として、改めて名古屋ハヤシだけを提供する組織をつくりました。今は10店舗くらいに協力してもらっています。
新しいご当地グルメを作ろうとしたとき、やはりカレーライスが作りやすかった。でも、カレーはいろいろな地域で出している。そこでカレーと似ているけれど、レトロ感のあるハヤシライスにしたんです。
ご飯とルーをあらかじめ混ぜてあるのは、別々で提供すると炊き立てと時間がたったご飯とで味に差が出てしまうから。味を安定させるためなんです」(店主の橋本氏)
名古屋ハヤシ 979円
「おでん&ワイン カモシヤ」名古屋市中区錦3-16-8 ℡052-963-6730
「デミグラスソースと赤味噌を使うことでコクが出るし、一気に名古屋テイストになります。また、卵黄を混ぜることで味がマイルドになる。さらにスパイスの八味唐辛子をかけると味が複雑に変化する。ひつまぶしの要素を取り入れているところも、新しいご当地メニューにしようという意気込みを感じます」(遠藤氏)
6番目は「和風ラザニア専門店 Y」さんの「台湾ミンチドリア」(1078円)です。
「この店は3年前にオープンしました。平日はビジネスマンの方が多くいらっしゃるので、ガッツリしたメニューが欲しかったんです。そこでドリアに、当時、名古屋で名物になっていた台湾ミンチをのせたら面白いんじゃないかということで作りました。
台湾ミンチは激辛なことが多いんですが、うちは少しマイルドなピリ辛にしています」(店員の稲熊氏)
台湾ミンチドリア 1078円
「和風ラザニア専門店 Y」名古屋市中区二の丸1-3 ℡052-291-4139
「2層に分かれているため、最初にチーズドリアのまろやかさを感じられて、後から台湾ミンチの甘辛さが追いかけてくる。とても楽しいメニューです。
ドリアはヨーロッパの料理のように思えますが、実は横浜(神奈川県)の『ホテルニューグランド』で生まれた日本独自のメニューです。台湾ミンチも名古屋が発祥。これはもう、日本料理と言っていいでしょう」(遠藤氏)
ここからはベテラン勢の登場です。まずは「手打うどん 牛コロ宮内」さんの「牛ニコ」(1300円)です。
「うちは1983年の創業です。そのときは『牛コロ』を出していました。コロとは、ゆでたうどんをコロコロとした玉にして、そこにツユをかけたもの。市場などで働く人たちが食べていたんです。そのコロに牛肉をのせたものが牛コロです。
そして創業から5年後くらいに、温かい味噌煮込みうどんに牛肉をのせたらいいだしが出るんじゃないかということで『牛ニコ』を出し始めました。牛肉は主に愛知県産のバラ肉を使っています」(店主の柿島氏)
牛ニコ 1300円
「手打うどん 牛コロ宮内」名古屋市北区大蔵町22-2 ℡052-914-0144
「味噌煮込みうどんを上質に進化させたメニューです。温かいのでとても肉の香りを感じますし、鍋一面に牛肉がのっていて映えるので、インスタなどにアップされて、最近、かなりバズっています」(遠藤氏)
最後は「名古屋式たこ焼き」。「吉川屋」さんの「たこ焼き」(5個300円)です。
「昭和47(1972)年創業なので、もう50年以上営業しています。祖母が始めたお店なんですが、大阪の醤油味のたこ焼きをアレンジして売り始めました。名古屋式のたこ焼きは、キャベツやネギなどの野菜が入っていて、醤油ベースのだしで焼くのが基本です。タコは、うちは北海道産を手切りして使っています」(店主の新美氏)
名古屋式たこ焼き 5個/300円(写真は15個900円)
「吉川屋」名古屋市熱田区青池町2-22 ℡052-683-0044
「たこ焼きは、大阪の『会津屋』が発祥とされていて、最初は小麦粉を醤油味のだしで溶いて焼いていたんです。その後にソースなどをかけるようになりました。なので、名古屋式たこ焼きは本家を継いでいる味です。それが今、注目されています」(遠藤氏)
ということで、この8品からアジア大会にちなんで、金・銀・銅を選びたいと思います。遠藤さん、お願いします。
「名古屋は新しいグルメや、今まであまり知られていなかったものが、どんどん出てきています。しかも、今回紹介したものは全部おいしい。そこがすごいんです。ですから、あえて順位をつけますが、とても僅差だということを初めに言っておきたいと思います。
まず、銅メダルは『台湾きしめん』。台湾ミンチときしめんという、大御所ご当地グルメのコラボレーションはパワーがありました。
銀メダルは『清須からあげまぶし』。地元のひつまぶし的な食べ方と宮崎のチキン南蛮を参考にした、全国のグルメを研究している点を評価しました。
そして金メダルは『カレー煮込みうどん』。味噌煮込みうどんの老舗が、新しいものに挑戦する。その気持ちが素晴らしいと思います」
それでは、「名古屋新グルメ決戦2026」は、このへんで終了です。ごきげんよう。さようなら。




