
渡辺雅史
わたなべ・まさし
渡辺雅史の記事一覧
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。
PPPは利用者にとって便利な一方、配達員には思わぬリスクがあって......
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第158回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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この連載で何度も書いている、スーパーマーケットなどの商品を配達する買い物代行サービスのピック・パック・ペイ(PPP)。ウーバーイーツ配達員が品物を店で購入するスタイルのこのサービスは、他の大手フードデリバリーではやっていない上、店舗側に買い物代行のためのスタッフを確保する必要がないこともあり、利用者、取扱店ともに右肩上がりで増えています。
配達員にとっては配達距離が短い割に報酬は高額となるケースが多い一方、利用者が指定する商品をスムーズに見つけられないと時間がかかってしまうという、メリット・デメリットがある案件。なので「たまに依頼を受ける」「報酬金額によって受けるかどうかを考える」といった考えの人は少数派で、ほとんどの配達員は「基本受ける」「絶対受けない」に二分されている感じです。
私の場合、普段からスーパーマーケットを利用していて「この商品なら、この棚にあるだろう」という予測ができるタイプで、バイク配達員ほど長距離の配達依頼が振られない自転車配達員なことから、配達の回数を増やすためPPPの依頼を基本受けています。週によっては収入の3割がPPPという時もあります。
そんなわけで、私にとっては稼ぎの大事な柱ですが、同様にPPPで稼ぐ配達員から「リスクが大きくなっているので、依頼を受けるのをやめようかな」という声が聞こえるようになりました。
なぜ、そう思う配達員が増えているのか。今回はここ最近起きているPPPの問題点や配達員、注文者双方のリスクについて書こうと思います。
まず、配達員にとって一番のリスクは「条件を満たすと〇%OFFキャンペーン」です。ウーバーイーツでは「〇個まとめ買いで〇%OFF」「〇〇円以上お買い上げで〇%OFF」といったキャンペーンを行なうことがあります。
先日書いた、「ウーバーイーツでもスタートした『お店と同価格』プログラムで配達はどう変わったのか?」でも触れましたが、条件を満たすと〇%OFFキャンペーンと「店と同価格キャンペーン」を併用すると、自分で買い物に行くより安くなります。
キャンペーン期間中は対象スーパーへの買い物代行依頼が増えるのですが、特に「〇個まとめ買いで〇%OFF」の場合、依頼された商品が売り切れている、もしくは注文数が5個なのに3個しかないというケースがときどきあります。夕方以降の買い物になると、その可能性はさらに高まります。
この場合、注文者に連絡を取り、代替品を購入するか、ある分だけ購入するかなどの指示を仰ぎます。その際によく指示されるのが、こんな言葉です。
「じゃあ、買い物自体すべてキャンセルで」
対象商品が割引とならない場合、PPPで頼むと自分で買い物に行くより割高になるからキャンセルするのは当然の判断です。「〇〇円以上お買い上げで〇%OFF」のケースでも、一部商品が売り切れていて条件を満たせない場合も、買い物を全キャンセルということがよくあります。
注文者の都合でキャンセルの場合でも、配達員にはウーバーから補償金のようなものが支払われます。ただ、その金額は200円。800円から1200円ほどの報酬を見て依頼を受け、10分から15分ほど自転車を漕いで店へ行き、商品探しに20分ほどかけた結果、得られる収入が200円。しかも配達を達成したことにはならないため、一定の配達回数を達成すると得られるクエストと呼ばれる特別報酬の対象にもなりません。200円もらえるとはいえ、感覚としては単なる時間の浪費です。これが第1のリスクです。
続いてのリスクは、同時配達の可能性が高まるというものです。
PPP配達を行なうためには「プラスカード」というクレジットカードとひもづいた特殊な電子カードを作る必要があります。この手続きが面倒でPPPをやらない配達員もいます。
このように配達ができる配達員が限られているので、スーパーでPPPの買い物をしていると、追加で2件目、3件目のPPPの依頼が入ってくることが多々あります。
店内で3件分の商品を探し出し、買い物カゴに入れたものの中から、レジで1件目の注文者の商品を取り出して精算、レシートを撮影して運営に送信。続いて2件目の精算、レシート撮影。そして3件目の精算、レシート撮影。効率よく買い物ができたとしても、店内での作業は30分以上。そこから荷物の詰め込み、3件分の配達を行なうと、短く見積もっても1時間以上はかかります。
配達にかかった時間に見合う報酬となることが多いのですが、買い物の作業とレジでの作業が複雑で、相当気を張ってとりかからないとミスが起こりやすい環境。他の配達より気を遣った結果、ミスを起こしてBAD評価がつくと心へのダメージが大きい。こういったリスクから、PPPの配達をやめようと考えている人が増えているようです。
一方、注文者にとっての一番のリスクは、知らないうちに配達員から連絡が入っていることだと思います。
買い物代行を頼む最大の理由は、買い物に行くヒマがないから。他の作業で忙しいから頼んでいるのに、ちまちまと届くメッセージや頻繁にかかってくる電話に対応するのでは、買い物代行の意味がありません。
続いてのリスクは、商品売り切れの可能性があること。特に野菜や果物など「これが売り切れなんてあり得ないでしょ」というものが売り切れとなっていることもあります(台風の翌日など、流通の関係で商品が入荷していないケースもありました)。
意外と大きなリスクは、しっかりと代替品を指示しないといけないこと。自分で買い物をする場合、大根1本を買おうと思ったけど売り切れで、近くに1/2カットの大根が置いてあった場合、1/2カットをふたつ買えばそれで終了となります。ですがPPPの場合、配達員が1/2カットの大根を買おうとすると「それは注文の商品ではありません」というメッセージが出て買うことができません。
そのため、売り切れの場合の代替品を指示しなければならないのですが、1/2カットの大根が代替品の候補として出てこないなんてことがよくあり、スマホで注文や代替品の指示を完了するまでで、かなりの労力が必要となり、だったら自分で買い物したほうが、と考えてしまいます。
このように、現状では課題も多いPPPですが、フードデリバリーを始めた頃も大きな問題がありつつも、改善されていった流れがあります。またPPPの利用者は確実に増えています。なので、代替品の候補を出すAIの能力が上がるなど、ウーバーのPPPに関する機能は改善されていくでしょう。