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『週プレ』復活シリーズ、完璧超人始祖編ラストJC『キン肉マン』60巻をおぎぬまXがレビュー!!
第38巻から始まった『キン肉マン』の新章「完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)編」が、今巻でついにフィナーレを迎えます! 悪魔超人軍を率いる悪魔将軍と完璧(パーフェクト)超人軍の総帥・超人閻魔ことストロング・ザ・武道(ブドー)による数億年にも渡る長い因縁の決着は、どういった結末を迎えるのか!? さっそく本編のレビューを熱く、本気で語っていきます!!
レビュー投稿者名 おぎぬまX
★★★★★ 星5つ中の5
前巻では、ストロング・ザ・武道が悪魔将軍の地獄の九所(きゅうしょ)封じといった必殺技を軽々と破り、圧倒した展開が描かれました。そんな状況下で、将軍がついにダイヤモンドパワーを発動!さらに両腕からダイヤモンドソードを伸ばしたシーンから第60巻スタートです!
ダイヤモンドソードといえば、往年の読者にはおなじみの"あの技"のセットアップですね。そう、地獄のメリー・ゴーラウンドです!
「『地獄のメリー・ゴーラウンド』というネーミングセンスには当時から痺れてました。特に「ランド」ではなく「ラウンド」な点が、語感のよさも相まって最高なんです!」(おぎぬまX)
キン肉マンを苦しめたこの大技で、悪魔将軍は一度武道の腹に切り傷を負わせることに成功します。が、二度目の被弾の直前に武道も硬度10ダイヤモンドパワーを発動。なんとダイヤモンドソードを素手で受け止めてしまいました。
ダイヤモンド対ダイヤモンド。この試合展開は、キン肉マン対ネメシスの一戦を彷彿とさせますね。キン肉マンが使う肉のカーテンに対してパーフェクト・ディフェンダーを発動させたネメシスのように、対戦相手のファイトスタイルが自身の源流となっている構図です。果たして、将軍は完全上位存在ともいえる武道を相手に勝機を見出せるのでしょうか。
双方がダイヤモンドパワーを発動したことによって、闘いは再び五分の状況に。いや、もともと悪魔将軍が劣勢だったので、圧倒的な実力差は埋まらぬままです。
武道はもっとも期待していた弟子であるゴールドマンですら、師を模した劣化コピーに過ぎず、己を超えることはできなかったと苦悩すると、数億年にわたって晴れることのない怒りをぶつけるように、「無欠雁字搦(がんじがら)め」を仕掛けました。スーパーヘビー級の武道の芸術的な立ち関節技によって、将軍の全身が悲鳴をあげます。
「悪魔将軍の巨体を、わりばしをへし折るかのように極める武道の立ち関節技...読む側の全身もズキズキとする迫力ですね!」
武道の拷問技によって全身のダイヤモンドが弾け飛ぶ中、悪魔将軍の脳裏に、かつてペインマンと行なったスパーリングの光景がよぎります。「お前は頭が固すぎる。もっと柔軟にならんとな」という同志の言葉を思い出し、全身をダイヤモンドとは真逆の硬度ゼロ・軟体ボディにチェンジ! 力づくでは攻略できなかった立ち関節技から見事脱出しました。いやはや...通常の超人レスリングなら反則級のチート技の応酬ですね。あらゆる必殺技や関節技を無効にするこの軟体ボディ、読者によってはダイヤモンドボディよりもトラウマだった方も多いのではないでしょうか。
「下等超人の進化は"成った"」――ペインマンから預かった最期の伝言を、将軍は武道に伝えます。柔軟な考えを持つペインマンは、完璧超人始祖の中で誰よりも早く、下等超人の可能性を認めていました。ですが、武道は聞く耳を持ちません。無情にも試合は再開され、武道は将軍に向かって、自身の必殺技(フィニッシャー)「完璧・零(ゼロ)式奥義 千兵殲滅(せんぺいせんめつ)落とし」をとうとう繰り出しました。
「全身を破壊し尽くす、圧倒的必殺技(フィニッシャー)ですね。零式奥義に相応しい、無慈悲なフォームに、震えが止まりません!」
武道の奥義をまともにくらった悪魔将軍は、受け身も取れずにダウン。技の衝撃でマスクもヒビ割れ、中からゴールドマンの素顔が顕(あらわ)になります。あまりにも壮絶な光景に、キン肉マンも「これは本当に現実なのか?」と戸惑います。しかし、武道は悪魔将軍を見つめながら「なぜだ」と眉を顰(ひそ)めました。なんと、KO必至と思われた悪魔将軍が、ゆっくりと立ち上がってきたのです...!
「作画担当の中井先生の気迫が伝わる熱いカットです! そして、悪魔将軍はもはや完全に主人公の風格を漂わせていますね!」
武道は自身の奥義をくらいながら、なぜ立ち上がれたのかと問い質(ただ)しますが、不思議なことに悪魔将軍自身もその理由がよくわかっていません。激高した武道は、〝零の悲劇〟で悪魔将軍のパワーを吸い尽くそうとしますが、それに対抗するように今度は悪魔将軍の全身が発光しました。悪魔将軍の異変を目にしたミートくんは、「もしやこれは...友情パワーに目覚めたのでは!?」と推測しますが、バッファローマンが「それはあり得ない」と断言します。
バッファローマンいわく、完璧超人始祖のひとりである悪魔将軍(ゴールドマン)は、普通の超人と異なり、感情といった類(たぐい)をいっさい持ち合わせていないようです。
彼ら完璧超人始祖にあるのは、かつて神だった者から授かった唯一の指令、「神をも超える力を得る」という使命感のみ。そんな無機質に近い存在が、友情パワーなどといった力を宿すわけがありません。そこでバッファローマンは、仮に悪魔将軍が友情パワーに近い力を発揮できるとしたら、それは数億年前からスパーリングを重ねた相手であるザ・マンだけ、と結論づけました。
ここにきての伏線回収...! ゆでたまご先生のストーリーテリングが光る!
なんという皮肉でしょう。バッファローマンが言ってることが本当なら、大きな隔たりと上下関係があった、完璧超人始祖と下界の超人たちの価値観が逆転します。
これまで感情のない始祖たちからすれば、下界の超人たちが重んじている「友情」などという言葉は、切磋琢磨を単なる馴れ合いに変えてしまう、堕落の象徴でした。正義超人が掲げている「他者とわかり合うために闘う」という思想など到底理解することができません。
ですが...キン肉マンを中心に下界の超人たちの間で蔓延(はびこ)る「友情パワー」こそが、「神をも超える力」なのだとしたら? 悪魔将軍がザ・マンのみにできる発動できる究極の戦闘形態を、下界の超人は理論上、誰に対しても発動できる可能性を秘めているのです!
改めて...なんという皮肉でしょうか。ザ・マンにもっとも近かった存在である10人の始祖たちこそが、「神をも超える力」からもっとも遠い存在にあったのです。悪魔将軍、いやゴールドマンは、自分たちが感情を有していないのは「孤高」だからではなく、「欠陥」であることを悟り、下界に降りました。そして、数億年という時を経て、本来なら持ち得ない不思議な力を模倣することに成功したのです。
悪魔将軍は10人の始祖を代表して、今こそ師を超えると宣言します。そして、ダイヤモンドパワーを超える力、その名もダイヤモンドパワー#(シャープ)「ロンズデーライトパワー」を発現しました...!
友情パワーにも似た新たな力・ロンズデーライトパワー! ちなみにロンズデーライトとは六方晶ダイヤモンドとも呼ばれる物質で、理論上は通常のダイヤモンドよりも50~60%ほど硬いと言われている
ついに、悪魔将軍の反撃が始まります。ジェネラル・ディスコス、ロンズデーライト・クローズラインといった新技を炸裂させ、武道に甚大なダメージを与えていきます。将軍の変化に、武道も硬度に関していえば自分を上回っていると認めますが、「それだけでは自分を超えたことにはならない」と断じます。確かに柔軟性ならペインマン、すばやさならカラスマンなど、一芸に特化した始祖は存在しましたが、それだけではザ・マンを超えたことになりません。そこで最後の審判として、武道は今一度、零式奥義を将軍に放ちます。
かつての師弟であるザ・マンとゴールドマンとしてではなく、超人閻魔と悪魔将軍として決着を狙う両者...!
正真正銘、全力の千兵殲滅落としを受けた悪魔将軍が再びダウン...と思いきや、技の掛け手であるはずの武道の全身がヒビ割れました。技から解放された将軍はダウンすることなく、リングに着地。そして、これまで未完としていた壱式奥義、「地獄の断頭台・改」こと「神威(かむい)の断頭台」によって、武道をマットに沈めました!
数億年に渡る因縁に決着をつけた、悪魔将軍の必殺技。さすがの武道も、この断頭台の刃(やいば)からは逃げられない!
悪魔が神を断頭台にかける...なんと壮大で、背徳的な結末でしょう。この悪魔は神の一番弟子であり、言ってしまえば裏切り者なわけです。そんな天から堕ちた悪魔が、堕落した神に鉄槌を下した。あまりにも美しく、切ない物語です。これはもはや、超人プロレスではなく、少年漫画という形式で語られた神話と呼べるでしょう...!
神威の断頭台を受けた武道のマスクは砕かれ、その下からザ・マンの素顔が現れます。それでもなお立ち上がるザ・マンでしたが、悪魔将軍の奥義を褒め称えると、満足げにリングに倒れました。ここでゴングが鳴り、試合終了。シリーズ最後を飾る頂上決戦、そして数億年にも渡る因縁に決着がつきました。
とはいえ、これで「めでたしめでたし」とはいきません。試合終了後、悪魔将軍は竹刀を手にすると、ザ・マンにとどめを刺そうとしました。...が、そこにキン肉マンが待ったをかけます。
普段はドジでマヌケなキン肉マンでも、ここぞという場面では大王としての矜持(きょうじ)を見せる!
キン肉マンの説得を受け、悪魔将軍はザ・マンの処刑を取りやめます。その代わりに、ザ・マンに不老不死の永久廃止を要求しました。短い余生で新たな愛弟子と生き恥をさらし続けることを、ザ・マンに対する罰にしたわけです。
目的を果たした悪魔将軍は、生き残った悪魔超人軍を引き連れて撤収します。颯爽(さっそう)と戦場を去る悪魔将軍の周囲には、これまでの闘いで散った悪魔超人たちの幻影が...。そして、去り際にキン肉マンに微笑むバッファローマン。ここまでの激戦に思いを馳せながら、思わず目頭が熱くなりました...!
思えば、本シリーズの冒頭はキン肉タツノリの言葉から始まりましたが、最後のシーンも彼の言葉で物語は締めくくられます。破天荒な展開が有名な『キン肉マン』でしたが、あまりにも完璧すぎる構成です。素晴らしき名勝負の数々に、超人たちの美しき友情物語に、僕は心からの賛辞を贈りたいと思います...!
正義とはなにか、慈悲とはなにか。そして正しい超人のあり方とは。偉大なる大王・タツノリの残した言葉は、超人ならずとも胸に刻むべき!
続く第61巻からは、新たなシリーズが開幕します。まだまだキン肉マンレビューは続きますが、これからも熱く、激しく語らせていただきます! どうかお付き合いくださいませ!
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完璧超人始祖たちの試合で挟まれた数々の回想シーンは、今シリーズの大きな魅力のひとつでした。リングの上では現代の超人に立ちはだかる強敵だった彼らにも、ザ・マンの下で切磋琢磨をしていた輝かしい時期があったことがわかります。
ガキ大将みたいに突っかかるアビスマン、仲間をからかうサイコマン、それをたしなめるシルバーマン...妙にほのぼのしてるというか、ほとんど学校の休み時間ですよね(笑)。バトル漫画における回想シーンは、場合によっては読者のフラストレーションを貯める原因になりがちですが、これほど挿入されることを心待ちにする回想シーンはありませんでした。完璧なる本編の対となる、完璧なるバックストーリーといえるでしょう!
●おぎぬまX(OGINUMA X)
1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン。『笑うネメシス―貴方だけの復讐―』(原作担当)全4巻が発売中。そして、『キン肉マン』コラボミステリ小説シリーズ『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』、『キン肉マン 禁断の超人タッグ殺人事件』が好評発売中