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「可愛いだけじゃない!?ピングー展」にて。ピングー語をしゃべれる展示でピングー語を極めた
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「ピングー」について語る。
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傑作クレイアニメ『ピングー』。子供の頃から好きだけど、ここ数ヵ月、私の中で空前のピングーブームが来てます。展覧会や人気ブランドとのコラボも急増していて、「今ピングーが熱い!」という記事も目にするようになり、どうやら世間的にもピングー人気が再燃してるよう。Noot noot!(ピングー語の感嘆符)。
でも、なぜ今ピングーなのか。クレイアニメならではのアナログな魅力が大きいのは間違いない。CGじゃないのに立体感のあるアニメーションって、実はすごく不思議。人形劇とアニメの間のような動きと物質感が唯一無二だし、ピングーがいかにアニメーションとしてぜいたくな作りなのかわかります。
初期シリーズは、すべて本物の粘土を使ったストップモーションアニメ。人形をほんの少し動かしては1枚撮影するということを、何千回も繰り返す。あの絶妙な表情を作るために数千ものパーツが用意されている。完成した画面には、粘土についた指紋さえ見えます。その「不完全さ」が美しい。
CGならもっと滑らかに、もっと正確に動かせるけど、ピングーは違う。少しゆがみ、少し揺れる。その一コマ一コマに、人の手が触れた痕跡が残っている。その手仕事のぬくもりは、デジタル技術が発達した今だからこそ、以前にも増して価値を持つようになってますよね。
レコードが見直され、フィルム写真が人気を集め、手作りの器や機械式時計が愛されるように、「誰かが時間をかけて作ったもの」の魅力が再認識されている昨今。ピングーも、その流れの中にいると思います。
でも、ぬくもりうんぬんより、クレイアニメ特有の動きの面白さが最高です。パタパタ歩く動き、伸びるクチバシ、横目でにらむ表情。ピングー特有のコミカルでチャーミングな動き、たまりません。シンプルにかわいい。そこに「ピングー語」なる人間界には存在しない言葉が入り(ひとりのイタリア人男性が全キャラを担当)、まるでチャップリンのサイレント映画のように、文化や言語を超えて感情が伝わるのです。
怒った顔、気まずそうな表情、悔しそうに足を踏み鳴らす姿。セリフがなくても伝わるリアクションは、SNSやショート動画、ネットミームとの相性が驚くほどいい。説明はいらない。国境も超える。40年前の作品なのに、最初からTikTokやリールのために作られたかのようなテンポと表現力があります。ショート動画全盛の時代を先取り!?
ピングーのプロモーション担当者も、インターネット文化との相性の良さを理解して、ファンの動きを温かい目で見ながら公式のSNSに力を入れている、というようなことをおっしゃってました。
そう思うと、単なる懐かしさによるリバイバルでもない。世界がようやく、ピングーの価値に追いついた! グッズのキャラクターとしてしか知らない人は、ぜひ映像で見てほしい。とりこになります!
ちなみに、世界最高峰のクレイアニメーションスタジオである英アードマン・アニメーションズによる新作の制作が決定してます。実は10年ほど前に日本でもCGアニメシリーズが作られましたが、最新作は原点回帰。興味深い。
●市川紗椰
米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。ピングーのダンスセンスはピカイチ。公式Instagram【@its.sayaichikawa】