選手生命の危機から這い上がり『超RIZIN.5』へ復帰するYA-MAN。いま明かす「大怪我の真相」と「壮絶すぎる幼少期」【前編】

取材・文/松下ミワ 撮影/武田将敏


正々堂々のド付き合い、劣勢でも決して諦めない類まれなるファイティングスピリットで観る者の心を掴み、常に会場を熱狂の渦に巻き込むYA-MAN。

キックボクシングではRISEを、MMAではRIZINを主戦場とし、二刀流でそれぞれ戦績を積み重ねている。とくにMMAでは昨年7月、長らくフェザー級トップ戦線を歩んできた実力者・金原正徳(かねはら・まさのり)をKOで破り存在感を発揮。

その後、大晦日開催の『RIZIN師走の超強者祭り』に参戦し斎藤裕(さいとう・ゆたか)と対戦する予定が、練習中に左眼窩底(がんかてい)骨折という大ケガを負い、引退かと囁かれるほどの状況に。

しかし、無事に手術を終え、1年強の時を経て今年9月10日に開催される「ANGEL CHAMPAGNE presents 超RIZIN.5 浪速の超復活祭り」(京セラドーム)での斎藤裕戦でいよいよ復帰を果たす。絶望の淵から這い上がってきた現在の心境、また、たびたび話題になるYA-MAN自身の壮絶すぎる生い立ちについてじっくり語ってもらった。
『超RIZIN.4真夏の喧嘩祭り』(2025年7月27日/さいたまスーパーアリーナ)におけるYAーMAN vs金原正徳戦(写真提供/RIZIN)『超RIZIN.4真夏の喧嘩祭り』(2025年7月27日/さいたまスーパーアリーナ)におけるYAーMAN vs金原正徳戦(写真提供/RIZIN)

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【眼窩底骨折で引退危機! 絶望感しかなかった】

――9月10日に行われる『超RIZIN.5』斎藤裕戦は1年以上ぶりの試合です。大ケガ(左眼窩底骨折)からの復帰戦になりますね。

YA-MAN やっとです。去年7月に金原正徳さんに勝って、自分のMMAのレベルが一気にバーンと上がったところで練習中にケガしてしまったんで......。昨年大晦日での対戦がキャンセルになってしまった斎藤選手には凄く申し訳ない気持ちでしたし、ボク自身もいままでの人生で一番キツかったですね。

――波瀾万丈のYA-MAN選手の人生でも"一番"だったんですか。欠場となった大晦日興行ではリングで挨拶だけされていましたが、手術後のチューブが入ったままの姿での登壇、そのとき発した「このリングでしゃべるのは最後になるかも......」という言葉に、会場は静まり返りました。

YA-MAN あのときはそれが本心でした。目ん玉も正常じゃなく、上向いちゃってたし。

――それはなぜ? 復帰できないかもと?

YA-MAN 手術自体はうまくいったんですよ。ただ、ChatGPTとかGeminiに聞くと、治ることのほうが少ないケガだし、完全に治ることはなかなかないだろうって。だから「これ無理だろうな」って。

――AIのシビアな返答に、絶望的になってしまった。

YA-MAN ただ、あの挨拶がニュースになって、いろんな人から連絡をいただいて。「絶対この先生に診てもらったほうがいい」ということで、眼窩底手術の名医である鹿嶋友敬先生とつながって「すぐ手術しよう」と。それまでは、朝起きたら視界が二重になる毎日で。「今日も照明が二つだ......」から1日がはじまっていたし、スマホを見ても二重で何も読めない、飲み物も二重に見えるのでめちゃめちゃこぼしてましたね。

――鹿嶋先生の手術が成功して、ようやく安心できたんですか?

YA-MAN いや、それでも安心できなかったんで、じつはお祓いにも行きまくりました。

――お、お祓いですか!?

YA-MAN 去年1年だけで靭帯は2~3回切ってましたし、目のケガもあるし、斎藤選手への申し訳なさもあるし......。とにかく、去年はいろいろ重なりすぎたので。先月もお祓いに行きましたけど、それでようやく落ち着きました(苦笑)。

【MMAファイターとして腕が試される斎藤裕戦!】

――大晦日で試合がキャンセルとなった斎藤選手とは、超RIZIN.5で再び対戦が決まったのでひと安心ですね。

YA-MAN うれしいですよね。もし、ずっと対戦できなかったらやっぱりわだかまりが残るというか。ケガをしたボクが絶対的に悪いんで、自分から「治ったので対戦してください」というのもなんか違いますし。ボクは斎藤選手に「やってもいいよ」と思ってもらえる選手として、振り向いてもらえる選手であり続けることしかなかったです。

――ケガで状況が複雑になりましたが、もともと大晦日の対戦は斎藤選手からのラブコールだったんですよね。


YA-MAN そこはもちろん光栄だなと思います。斎藤選手はボクが格闘技をはじめた頃には、もう活躍していた選手なので。テレビの向こう側の選手という感覚ですね。

――斎藤選手は現在38歳。MMA選手としてキャリアの集大成を見据える中で、ここでYA-MAN選手とだったらいい試合ができるという信頼があったんでしょうね。

YA-MAN そう思ってもらえたんだなと思ったんですけど、一回飛ばしちゃったので。今回はそのぶんも盛り上げないといけないですし、対策もずっと練ってきたので、仕上がりはバッチリです。

――斎藤選手もオールラウンダーですが、そこは昨年、実力者・金原選手に3ラウンドKO勝ちしたことが自信にもなっていますか?

YA-MAN あの試合はMMAファイターとして凄く自信になりました。1~2ラウンド押されていたのはわかっていますけど、寝技の強い金原選手に極められなかったですし、スタミナで勝てたというのは自信になりますよね。最後の酸欠はヤバかったですけど。

――KOしたあとYA-MAN選手もブッ倒れて、バケツに嘔吐していましたよね(笑)。

YA-MAN ボクも今年30歳になりました。ボクは19歳でキックボクシングをはじめて、MMAは27歳からなので、ギュッと詰め込まないと追いつけなかったんですよ。でも、ちょっとギュッとやりすぎてたなと思うんで、今年は無茶をしないように。練習では「ケガするな」と思ったら、やめる勇気も必要ですよね。

【幼少期にそばにいた、"普通"じゃない大人たち】

――先ほど19歳で格闘技をはじめたという話がありましたが、YA-MAN選手の人生はそれ以前も壮絶ですよね。RISEのリング上では「父が違法薬物で服役、祖父母が養育費3000万円を持ち逃げ」という過去を語られてました。

YA-MAN 父親の話はボクが生まれてすぐぐらいで、祖父母の話は3~4歳ぐらいのことですけど、物心ついてちゃんと知ったのは18~19歳ぐらいですね。だからまあ、普通の母子家庭......いや、わからないです。何が普通だったのか。

――ご自身もけっこう喧嘩していたと聞きますが、それはグレてたわけではなく?

YA-MAN もちろん家庭環境はあると思いますよ。お母さんはスナックで働いているんで夜は家にいないし、お母さんの彼氏がめちゃめちゃ悪かったこともあって、小学生のとき、朝起きたら家で全身入れ墨の人たちがみんなで徹マンしてたりしてましたから。

――それは絶対に"普通"の環境ではないですね!

YA-MAN ゲーセンのクレーンゲームってあるじゃないですか。ボクが「あれ欲しい」と言ったら、お母さんの彼氏の友だちが挑戦して一個も取れなくて。そしたら、その人、機械ごとひっくり返して落ちてきた景品を取って「いっぱい取れたぞ!」みたいな。

――ぶっ飛びすぎていますね......。

YA-MAN そんな中で育てられたらねえ。ボクの父親もけっこうヤバイ人だったんで、その血筋もあるのかなと思いますけど、でもやっぱりボクの人格形成は環境の影響が強いんじゃないですかね。


――その雰囲気に流されず、ちゃんと勉強して大学(東海大学工学部)へ進学したのはなぜだったんですか?

YA-MAN そこは反面教師ですよね。お母さんからも「絶対こういう人たちみたいになっちゃダメ」と言われていましたし、入れ墨を入れてる人たちもやっぱりみんな後悔してて。「入れなきゃよかった」「もっと真面目にやっておけば」という話を子どもながらに聞いてたんで。だから、ボクもそういう大人を見て「勉強しないとこうなっちゃうんだ」と危機感を覚えたんです。

――高1のときに、お母さまのガンが発覚したことも転機になったそうですね。

YA-MAN お母さんがいなくなると誰も身寄りがいなくなるから。「このままお母さんが死んだらひとりぼっちだな」と。そこから自分の力で「稼ごう」と腹を括って、勉強もしはじめました。

――周りもザワザワしますよね。YA-MAN選手が急に勉強しはじめたら。

YA-MAN もともと勉強はできてたんで、高校生ぐらいからちょっとずつ「勉強って楽しいな」と思うようになりました。めっちゃ"バカ高"だったんですけど、学年1位を取ったりすると「一番っていいよな」と思えたりして。まぁ、初めて河合塾の模試を受けたときは、偏差値25を叩き出しましたけどね(笑)。

●YA-MAN 
1996年5月31日生まれ、埼玉県出身。173cm、66.0kg。TARGET SHIBUYA所属。19歳でキックボクシングをはじめ、RISEでプロデビュー。2023年にはRIZINでMMAデビューを果たす。同年、ABEMAと共同でプロデュースしたオープンフィンガーグローブのキックボクシングイベント『FIGHT CLUB』で朝倉未来と対戦し1RKOで勝利したことが話題に。2025年末以降、左眼窩底骨折で戦線離脱していたが、2026年9月の超RIZIN.5斎藤裕戦で復帰を果たす。会場を爆発させるド突き合いのファイトスタイルが代名詞。

9月10日(木)「ANGEL CHAMPAGNE presents 超RIZIN.5 浪速の超復活祭り」が京セラドーム開催!
https://jp.rizinff.com/_ct/17853585#c17853585_h5

  • 松下ミワ

    松下ミワ

    まつした・みわ

    プロレス・格闘技雑誌『紙のプロレス』編集部員を経てフリーとなり、現在は選手インタビューを中心に執筆。

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