おぎぬまXのキン肉マンレビュー【特別編】~完璧超人始祖編、総括!~

構成/石綿 寛(樹想社) 撮影/中里 楓 ©ゆでたまご/集英社

『キン肉マン』完璧超人始祖編全22巻をおぎぬまXが総括!!『キン肉マン』完璧超人始祖編全22巻をおぎぬまXが総括!!

第38巻から始まり、第60巻まで約6年208話を数えた「完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)編」。歴代シリーズでも最も長く続いたシリーズだけに、語りたいことはまだまだ山のようにあります! ということで今回は延長戦として、シリーズ全体の感想を熱く語らせていただきます! ぜひ第60巻のレビューと合わせてお読みくださいませ! 

 ●JC『キン肉マン』第38~60巻(「完璧超人始祖編」)

レビュー投稿者名 おぎぬまX
★★★★★ 星5つ中の5

【本シリーズ最大の敵は「読者」だった!?】

それではさっそく、本シリーズを振り返っていきましょう! 『キン肉マン』の正式な続きとして描かれた完璧超人始祖編は、当時珍しいWeb連載スタートだったにも関わらず22巻分の大長編となりました。『週刊少年ジャンプ』での連載が36巻だったことを考えると、本シリーズがいかに大ボリュームだったのかがよく分かりますね。しかも当時は『週刊プレイボーイ』本誌で『キン肉マン世』の連載が終わり、苦境とまでは言わずともまったく先が見えない状況での始まりだったことでしょう。それでも終わってみれば、シリーズ最長を記録し、旧キャラの人気を食うほどの新超人や、いくつものベストバウトが生まれました。 

「本シリーズの最大の敵は、かつての読者なのではないか?」。これは過去のレビューでも何度か語ったことなのですが、改めてこの場で叫ばせていただきたいです!

完璧超人始祖編は肉ファンの間でも「シリーズ最高傑作」「今が全盛期」と言わしめたほどのアツさと完成度を誇る人気エピソードです。しかし、連載をリアルタイムで追いかけていた僕は、リングで闘う超人たちを応援しながら、自分もまた『キン肉マン』という作品と闘っていたのをよく覚えています。 

これは、どういうことかというと...自分にとって『キン肉マン』という作品はバイブルであって、もはや単なる漫画作品ではなくなってしまっているんですよね。自分が漫画家を目指したきっかけは『キン肉マン』を読んだからですし、一度、お笑い芸人を目指した時に相方とコンビを組んだきっかけも、お互いが『キン肉マン』を好きだったからですし、漫画家もお笑いもうまくいかず就活した時も、履歴書に「『キン肉マン』の超人募集コーナーに100枚ハガキを送って、そのうちの一枚が採用されたことがある」と書いたのがきっかけで、デザイン会社に就職できました。

他にも、苦手なカラオケを『キン肉マン Go Fight!』で乗り切ったり...例を挙げれば、キリがありませんが、僕にとって『キン肉マン』は単なるコンテンツではなく、恩人であり、親友であり、ヒーローなんです。だからこそ、『キン肉マン』の続きが描かれるという告知を耳にした時、正直ちょっとこわい部分もあったんです。 

「キン肉マンの試合をまた見たい!」という期待と、「思い出を壊さないでくれ〜!」という不安を抱きながら、僕は本シリーズの連載を追いかけることになりました。完璧超人始祖編は完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)の襲来から始まりましたが、この時はまだジャンプ時代への愛が深すぎるあまり、「完璧・無量大数軍〜? はは〜ん、なんだかどいつもこいつも、王位争奪戦の中堅、副将クラスの強さって感じだなぁ。果たして、この中の何人がマンモスマンに勝てるんだぁ〜?」などと、意味不明な感想を僕は口にしていました。大小の違いはあれど、僕と似た感情を抱いた読者は少なからずいたのではないでしょうか。

「ぽっと出の新超人より、悪魔将軍やフェニックスのほうが強かったぞ!」「王位争奪戦以降のスグルなら、こんなヤツら瞬殺できるはずだ!」と猛(たけ)った人もいたはずです。本シリーズは、懐かしい超人たちの再登場によって、同窓会のような盛り上がりがあった一方で、『少年ジャンプ』連載時代の『キン肉マン』を愛してやまない、ある意味で一番厄介で手強い読者たちを相手にしなくてはならなかったのです。

 実は『キン肉マンⅡ世』のセルフオマージュにもなっている襲来シーン。テリーマンの靴ひもが切れるシーンなど、序盤からファンを喜ばせる要素が満載だった(JC第38巻より)実は『キン肉マンⅡ世』のセルフオマージュにもなっている襲来シーン。テリーマンの靴ひもが切れるシーンなど、序盤からファンを喜ばせる要素が満載だった(JC第38巻より)

もっとも、手強い相手とは「輝かしい思い出」。そう、この構図自体がある意味、本シリーズのメタファーなのだと僕は思うのです。懐古主義vs公式新作ともいえるこの闘いは、本シリーズで描かれた正悪連合軍(ドリームリーグ)vs完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)の図式とそのまま一致します。過去にとらわれて現在に目を背ける始祖たちは、まるで旧シリーズを神格化し、頑(かたく)なに「あの時はすごかった」と吠える歪(ゆが)んだ信者のようではないですか。 

もしかしたら、この文章を読んでる方の中には、僕の主張がまったくピンとこないという方もいるかもしれません。実際のところ、ほとんどの読者は本シリーズが始まってからすぐに、ゆでたまご先生の「本気」が伝わり、新たな物語を快(こころよ)く受け入れていたはずですから。 

まず、記念すべき緒戦となったテリーマンvsマックス・ラジアルからして、異常な面白さがありました。短い話数ながら二転三転する攻防、体格差をものともしないテリーの泥くさいファイト、そして最後のブレーン・バスター......いやはや、なんでいきなり旧シリーズを含め、ベストバウト級のアツい試合が飛び出すんですか! 

正直...僕もこの時点で、すでに心をつかまれていました。だから、先ほど僕がわあわあと叫んだのは単なる意地なんですよ。今の『キン肉マン』が面白いのは認める! ただ、僕にとってのベストバウトはジャンプ時代「キン肉星王位争奪戦編」のロビンマスクvsマンモスマンであって、さすがにそれを超えることはないだろう...と今思えば、やせ我慢をしていたのかもしれません。

そんな懐古派の複雑な心境とは裏腹に、本編では不在となったアイドル超人に代わって、まさかの7人の悪魔超人たちが電撃参戦! しかも、ステカセキングvsターボメン、ブラックホールvsダルメシマン、アトランティスvsマーリンマンと名勝負を連発し、さらに待ちに待ったキン肉マンvsピークア・ブーでは、必殺技(フェイバリット)に懐かしの「風林火山」をチョイスするという、オールドファンも大歓喜の異次元の面白さに突入していきます。

 キン肉星王位争奪編のキャラクターにも変身できるように、バージョンアップして再登場を果たしたステカセキング。健闘むなしく敗れたものの、その雄姿は多くの読者に感銘を与えた(JC第39巻より)キン肉星王位争奪編のキャラクターにも変身できるように、バージョンアップして再登場を果たしたステカセキング。健闘むなしく敗れたものの、その雄姿は多くの読者に感銘を与えた(JC第39巻より)

もちろん、本シリーズの素晴らしさは「懐かしさ」だけではありません。ジャンプ時代の栄光や遺産に頼るのではなく、むしろ本シリーズから登場した新キャラクターたちが、旧シリーズの人気超人を食うほど魅力的だったことが大きなポイントでしょう。なかでも、完璧超人始祖のサイコマンは強烈でしたね! マグネット・パワーの発明者という重要な設定に加え、シルバーマンとの歪(いびつ)な友情...数億年にわたってすれ違い続けたふたりがたどる、最期のシーンは漫画史に残る名シーンでした。 ニャガニャガという個性的な口癖と豊かな表情が特徴のサイコマン。時にはコミカルに、時にはシリアスに物語を盛り上げた(JC第55巻より)ニャガニャガという個性的な口癖と豊かな表情が特徴のサイコマン。時にはコミカルに、時にはシリアスに物語を盛り上げた(JC第55巻より)

それにしても、「今シリーズのMVPは誰か?」という質問に、十人十色の回答があるくらい、今シリーズでは実に多くの超人が大活躍しましたね。主人公のキン肉マンをさしおいて表紙を飾り、最終決戦も任された悪魔将軍などその筆頭でしょう。トリックスターとして、物語を掻き回したサイコマンはもちろん、キン肉族の影なる部分を象徴したネメシス、序盤戦を盛り上げた7人の悪魔たち...振り返れば、全22巻で28試合もの試合が描かれたことも驚愕です。バトル漫画のトーナメントでありがちな、試合内容がバッサリとカットされるようなことは一度もなく、28試合すべてが名勝負でした...! 本当に、ゆでたまご先生には「お疲れ様です」と叫ばせていただきたいです...! 「完璧超人始祖編」初のタッグマッチでも、悪魔超人が登場。要所で悪魔超人の活躍が光ったシリーズ(JC第43巻より)「完璧超人始祖編」初のタッグマッチでも、悪魔超人が登場。要所で悪魔超人の活躍が光ったシリーズ(JC第43巻より)

【完璧超人始祖編のターニングポイント】

では、「厄介な読者」こと僕が本シリーズに屈した瞬間はいつだったのか? 先ほども語った通り、僕は本シリーズの面白さを早々と認めながらも、人生のベストバウトとしている「ロビンマスクvsマンモスマン」をまだ超えていない、と悪あがきを続けていました。いや、「僕の思い出を超えないでくれ...!」と願っていたのかもしれません。僕にとってあの一戦は、自身のアイデンティティーと直結するほどの名勝負だったからです。 

しかし、JC4445巻で描かれたロビンマスクvsネメシス戦で、とうとう押し殺していた感情のダムが決壊しました。正義超人軍、無量大数軍の代表格同士がぶつかったものの、次第に双方には覆(くつがえ)せない実力差があることが分かってきます。それでもロビンは諦めることなく立ち向かい、やがてネメシスも相手の気迫に冷や汗を流します。そして、まさかの新必殺タワーブリッジネイキッドで勝利目前まで迫るものの、最期はネメシスの<完肉>バトルシップ・シンクによって敗れてしまう...。まさに、敗北の美学を体現した名勝負でした。 

ロビンがタワーブリッジネイキッドを仕掛けたことがあだとなり、両腕が自身の首を圧迫し、このままでは窒息死してしまうという状況の中で、あろうことか、ネメシスを追い詰めるために勢いよくジャンプした時――僕は心の中で叫びました。「今の『キン肉マン』は、ジャンプ連載時を超えた!」と。本当に悔しいけど、認めざるを得ません。かつて、マンモスマンとの真剣勝負で、僕の人生に深い影響を与えたロビンマスクは、大人になった僕に再び感動を与えてくれたのです! 正義超人のリーダーとして、ネメシスを相手に最期まで果敢に闘い抜いた(JC第44巻より)正義超人のリーダーとして、ネメシスを相手に最期まで果敢に闘い抜いた(JC第44巻より)

リブート作品、リスタート作品の難しさは、旧作キャラの扱いにあると思います。どのバトル漫画も最終章時点の主人公やその仲間たちは、もはや闘う相手がいないくらい最強レベルになってるわけで、新章の敵勢力はそんな怪物たちと闘わなくてはなりません。

旧キャラを立てすぎて味方が全勝してしまえば茶番となりかねませんし、逆にぽっと出の新キャラに旧キャラが負ければ、今までの闘いはなんだったんだよと納得がいきません。そんな中、完璧超人始祖編は、バトルバランスが非常にうまく取れていて、旧キャラへの忖度(そんたく)もなく、人気キャラであろうと負ける時は負ける。反対に、第一線についてこれなかったような中堅キャラが意外な勝ち星を拾ったりと...勝敗が全く予想できずに、常にハラハラとしました。悪魔将軍が超人墓場を侵攻し、超人の蘇生システムを破壊したのも、その後の展開に緊張感を与えるスパイスになりましたね。 悪魔将軍やザ・マンの心を溶かした、キン肉マンのお言葉。この世に絶対的な正義はない!(JC第60巻より)悪魔将軍やザ・マンの心を溶かした、キン肉マンのお言葉。この世に絶対的な正義はない!(JC第60巻より)

改めて、完璧超人始祖編は「シリーズ最高傑作」「今が全盛期」という評価に偽りのない、完璧な続編でした。もし、このコラムを読んでいながら、いまだに本シリーズを見ていない方がいるとするならば、今すぐ本屋に走って『キン肉マン』を大人買いしましょう。「原作を読んだのは子どもの時だから」、「昔の頃のテイストが好きだった」などといった心配は無用です。僕ほどの厄介な『キン肉マン』ファンが、心から最高の少年漫画だと豪語できるのですから。 

本シリーズでは、輝かしい過去の象徴である完璧超人始祖たちがひとり、またひとりと現代の超人たちを認めていきましたが、その中のひとり、ペインマンの言葉を一部お借りして、このコラムを締めくくらせていただきたいと思います。厄介なファンを代表して断言しましょう。

――『キン肉マン』の"進化"は成った!

おぎぬまX(OGINUMA X)
1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン。『笑うネメシス貴方だけの復讐』(原作担当)全4巻が発売中。そして、『キン肉マン』コラボミステリ小説シリーズ『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』、『キン肉マン 禁断の超人タッグ殺人事件』が好評発売中

JC『キン肉マン』最新第93巻好評発売中!

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ナレーション:大塚明夫、アシュラマン役:神谷浩史
超スーパーキャスト!!
YouTube「週プレChannel」にて、キャラクターPV第4弾「アシュラマン」編

『キン肉マン』キャラクターPV第3弾「テリーマン」編      テリーマンスペシャルボイス:小野大輔 ナレーション:燃え殻 音楽:APAZZI 

●TVアニメ『キン肉マン』 完璧超人始祖編Season 3 制作決定

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