
山本萩子
やまもと・しゅうこ
山本萩子の記事一覧
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。
こんにちは、野球大好き山本萩子です。今回はホワイトソックスについて語らせてください。
ヤクルトから村上宗隆選手が加入したホワイトソックスですが、ここ数年は苦しいシーズンが続いていました。しかし、今年はうってかわって大躍進を遂げます。
3年連続で100敗した翌年にポストシーズンに進んだチームは、長いMLBの歴史でも前例がありません(2年連続もなし)。惜しくもディビジョンシリーズで敗退しましたが、「シンデレラチーム」と呼ぶにふさわしい復活と輝きを見せてくれました。2026年は黄金時代の始まりになるかもしれません。
私はこの1年、ホワイトソックスを追い続けました。きっかけはもちろん、村上選手の移籍です。プロ1年目の宮崎・西都キャンプから見てきた村上選手が海を渡る。そのドラマはもちろんのこと、ひとつのチームを軸に追うことで何が見えてくるのか知りたくなったのです。
2019年にメジャーリーグ専門番組のキャスターになってから、MLBの魅力にどっぷり浸かる日々でしたが、ひとつのチームに肩入れしたり、軸足を置いて観たりすることはしてきませんでした。ただ、メジャーは移籍が盛んで、刹那的な世界。目まぐるしく変化を遂げていくからこそ、メジャーのチーム作りとは何かを知りたかったのだと思います。
当初は、再建途上の若いチームで村上選手がどう活躍するかを見守るつもりでしたが、気づけば村上選手だけでなく、チーム全体に情が移り、いっそう勝利を願うようになっていました。
振り返れば、開幕戦を2-14と大敗し、開幕シリーズは3連敗。「今年も苦しいシーズンになるのかな......」と予感させる幕開けでした。ところが、本拠地開幕のブルージェイズ戦でピーターズ選手がサヨナラヒットを放つなど、昨年のリーグ王者をスイープします。
さらに4月21日のダイヤモンドバックス戦では、村上選手、バルガス選手、コルソン・モンゴメリー選手が3者連続本塁打。それ以降も、「さすがに快進撃もここまでかな」という予想を何度も覆してくれました。プレーオフでは敗れましたが、再建途中のチームがここまで勝ち上がり、最後まで期待を抱かせてくれた。まさに「予想外」です。
今シーズン、私は試合を見ながらスコアをつけ、気になったプレーや出来事をノートに記録しながらシーズンを追いかけました。
「ダブルスチールで勝った。これは強いかも。士気高い」(5月20日マリナーズ戦)
本塁打だけでなく、足を使うなど細かなプレーでも勝てる。「これはいけるかもしれない」と感じ始めた頃で、チームの成長と、自分がチームに惹かれていく様子がよくわかります。そして、その中心にいたのが村上選手なのです。
一番記憶に残っているのは、4月28日のエンジェルス戦の逆転3ラン。なぜなら、ここからチームの連勝が始まったからです。日本時代もそうですが、村上選手のひと振りは試合だけでなく、シーズンの流れを変えます。
移籍の際に速球への対応を不安視されていましたが、前年から取り組んだスイング修正が今年の活躍につながったという話も聞きました。真剣に練習に取り組む様子が他の選手にも刺激を与えたことも、監督やコーチ、チームメイトが語っています。成績はもちろん、周囲に与える影響も含めて、村上選手がいるチームの強さをあらためて感じました。
村上選手の活躍は、年齢も近く、心を通わせられるチームメイトがいたことも大きかったのではないでしょうか。そこで、今季のホワイトソックスで輝いた選手たちを紹介させてください。
今年春にメジャーデビューを飾ったアントナッチ選手は、全力プレーで攻撃の起点となり、強打者が並ぶ打線に違う"味"を加えました。ポストシーズンでも、先頭打者として四球を選んだ時のガッツポーズや、常に次の塁を狙う前のめりなプレーがチームに勢いを与えました。
昨年デビューのマイドロス選手は、小さな身体でがむしゃらにプレー。長身のコルソン選手との二遊間も魅力的です。ゴールドグラブ賞二塁手部門にノミネートされた守備力はもちろん、攻撃では起点にもポイントゲッターにもなります。
2年目ながらルーキー資格を持つピーターズ選手は、サバンナ・バナナズ(巡業型エンターテインメント野球チーム)でプレーした経験もある選手。サイクル安打、オールスター出場と、チームの躍進を象徴する存在です。
打席での堂々とした佇まいが印象的なブレイデン・モンゴメリー選手は、今年6月のデビュー戦でのサヨナラ本塁打が衝撃的でした。電車を乗り過ごしそうになりながら見た、忘れられない瞬間です。
バルガス選手は2024年7月、ドジャースから、当時どん底だったホワイトソックスに移籍。当時の、ベンチで呆然とする姿も印象的でした。もともとポテンシャルが高く評価され続けていた選手でしたが、同学年で仲のいい村上選手をはじめ、仲間たちと試合に出ながら経験を重ねて、まさに開花のシーズンになりました。
そして、コルソン・モンゴメリー選手。大型遊撃手として守備を担いながら長打力もある、ロマンのある選手です。静かな佇まいの内にある熱さにも惹かれました。シーズンでは三振数のメジャー最多記録を更新しましたが、スタイルを変えない信念を感じました。どれだけ三振しようと、村上選手、バルガス選手との「30本塁打トリオ」は最強です。
若いチームのなかで、ベテランのベニンテンディ選手は、村上選手がチームに馴染めるよう気を配る存在でした。レッドソックス時代にポストシーズン出場経験があり、ここぞという場面での頼もしさがありました。
グリチック選手も同じくベテランの力でチームを支え、類まれなる"左キラー"として存在感を放っていました。彼もチームリーダーとして、あらゆる場面でチームを引っ張っていました。
プレーオフ最後の試合の先発は、バーク投手でした。レギュラーシーズンは先発陣トップの172回2/3を投げて11勝7敗。ホワイトソックスの投手がふた桁勝利を挙げたのは4年ぶりです。「バークでダメなら仕方ない」と、ファンも信頼を置いていました。
離脱中のバジル投手も、「魔法の杖」を手にベンチを盛り上げました。試合に出られなくても、一緒に戦っている。最後まで杖を振っていました。
投手陣は先発・ブルペンともに層が厚いとは言えませんでしたが、ポストシーズンでもクローザーのグラント・テイラー投手らが役割を固定せず、必要な場面で投げるなど総力戦でした。
再建中のチームならではの"もろさ"もまた魅力でした。最後まで何が起こるかわからない試合展開は、ヤクルトを応援してきた自分には馴染みのある光景。その人間らしさも愛しいチームです。
最後に、ベナブル監督という存在について。MLBでは毎年「最優秀監督賞」が選ばれますが、いい意味で期待を大きく裏切った監督に贈られることが多い賞です。今年はほぼベナブル監督で決まりでしょう。3年連続で100敗していたチームを、優勝争い、そしてポストシーズンへ導いた若き名将です。
シーズン開幕前は、アメリカを訪れた高津臣吾さんに、村上選手についてあらゆることを質問していたそうです。選手に寄り添う姿勢は、若い選手たちの成長にとって非常に重要だったはずです。
本当に、開幕前は想像もしなかったところまでチームに連れていってもらいました。ひとつのチームを追うことで、チームが生まれ変わる様子を目の当たりにできましたし、反対に相手チームの「嫌なところ」こそが強みであり魅力であることにも気づきました。
来年にまたスコアブックを開く日までしばしの休憩ですが、「来年こそはチャンピオンリングを!」と願い、この原稿を締めたいと思います。
それでは、また来週。