
黄 孟志
こう・たけし
黄 孟志の記事一覧
編集会社かくしごと代表。多様性時代の10代メディア『Steenz』元チーフエディター。表参道&原宿のローカルメディア『OMOHARAREAL』元編集長。経済メディア『Forbes JAPAN』オフィシャルコラムニスト。
1988年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科中退。
https://www.kakushigoto.com/
https://twitter.com/KOH_TAKESHI
ドミノ・ピザの店頭に以前あった「お持ち帰り半額」ののぼり(下)が現在は「お持ち帰り割」になっている(上)
ドミノ・ピザが「お持ち帰り半額」サービスを終了。この施策は何を意味する!? 宅配ピザ業界の現状をあらためて識者に分析してもらった!
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宅配ピザチェーン売り上げトップのドミノ・ピザ(以下、ドミノ)が約6年間にわたり人気を博した「お持ち帰り半額」サービスを終了。「デリバリーじゃ高すぎて頼めない」「半額じゃないならスーパーのピザでいいよ」などの声が多く上がる事態に。宅配ピザ業界はやはり売り上げに悩んで苦戦している!? その現状を探ってみた。
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今回の料金体系変更では、半額だった持ち帰り価格は30%オフとなり、デリバリー価格は約600円値下げとなった。これは何を意味する? 小売・サービス業界コンサルタントの岩崎剛幸氏に話を聞いた。
「ひと言で言えば『抜本的な改革が必要なほど業績が良くない』ということです。現在、ドミノの日本法人単体の業績は公表されていませんが、2024年7月時点で1015店あった国内店舗数が今年1月には763店に。この1年半で250店舗以上が閉店しています。
今回の料金変更の最大の狙いは、デリバリーの利用者を増やすことによる〝粗利率の改善〟。例えば3000円のピザをデリバリーで売る場合、原材料費と配送費を差し引いても一定の粗利が残りますが、同じピザを『お持ち帰り半額』で1500円で売ると配送費はかからないものの、残る粗利は下がってしまう。顧客数は増やせましたが、経営を圧迫してしまう施策でもあったんです」
ドミノとしては「お持ち帰り半額」をやめても、顧客は離れず、デリバリーで注文してもらえるという考えでしょうか?
「それを理想としつつも、不安は大きいと思います。その証拠に『お持ち帰り半額』終了直後である今もホームページには『お持ち帰り2枚目半額』をうたうクーポンが目立つ位置に表示されています。しばらくは様子を見ながら進めるのではないでしょうか」
ちなみに、なぜこのタイミングで切り替えたのでしょう?
「サッカーワールドカップ期間中であることとは無関係ではないでしょうね。日本戦が休日の昼間にありましたが、こういったスポーツイベント時は、宅配ピザチェーンは大繁忙期で注文を受けきれないほどの状態になります。
一定の需要が見込めるタイミングで料金体系の変更を紛れ込ませようという狙いはあると思われます。ただ、平常時に戻れば、だんだんと消費者が冷静な判断をしていくことになります」
「お持ち帰り半額」終了によってドミノから離れた消費者は別の宅配ピザチェーンに流れるのでしょうか?
「これは宅配ピザ業界全体の課題だと思いますが、どこも割引ルールが複雑で価格の比較が非常に難しい。2枚目の注文、持ち帰り、デリバリー、セット、クーポン、アプリ限定......などなどの条件で価格が変わり、結局どこで頼むのがお得なのか、消費者はなかなか見極められません。
だからこそ『半額』という言葉のイメージが強力だったとも言えますが、すぐにどこかに流れるとも言えない状況でしょう」
業界トップであるドミノが不調ということは、ほかの宅配ピザチェーンもピンチということですか?
「24年以降、トップ3社(ドミノ、ピザハット、ピザーラ)の中で唯一店舗数を増やしているのがピザハット。九州を地盤として存在感を持つ総合商社・ヤマエグループHDの事業のひとつであるため、ピザハット単体ではなくグループ全体での相乗効果を見据えた投資判断が可能であることが強みです。
コロナ禍にはひとりや少人数向けのメニューを開発するなど、時代の変化に合わせて柔軟かつスピーディな対応をしています」
では、ピザーラはどうでしょう?
「22年から500店舗台をキープしていて、無理な安売り競争に参加することもなく、季節限定商品などのクオリティにこだわりながら現状維持をしている印象です。CMでファミリー向けに新商品をアピールするなど、ブランドイメージづくりにも力を入れています」
宅配ピザチェーンが新施策を打ち出しているのは、新たなライバルの好調が要因だと岩崎氏は続けて語る。
「日常使いでピザを食べるのであれば、個人的にはスーパーのコスパに魅力を感じます。今はライフやサミットなどの大手スーパーが店内に窯を持ち、焼きたてのピザを販売していて、とてもハイクオリティ。
私が特にオススメするのはオーケーのピザシリーズ。直径30cmで500~600円台。家に帰ってトースターやオーブンで温め直せば、チーズは再びとろけ、生地のもちもち感も戻る。今後、ドミノの持ち帰りからスーパーの持ち帰りに切り替える方は少なくないのではないでしょうか」
スーパー・オーケーのスモークチーズ入りシーフードピザ。30cmで600円台と安価だ
最近はコンビニでもピザを扱っているのを見かけますが影響はありますか?
「確かに、コンビニの冷凍ピザのクオリティも急速に上がっています。ローソンでは有名店のラ・ピッコラ・ターヴォラが監修した冷凍ピザを、セブン-イレブンではダ・イーサが監修した冷凍ピザを展開しています。
そのセブン-イレブンは24年から店内のオーブンで焼いたピザを最短20分で届けるサービスを開始。持ち帰り注文でも2分で焼成を打ち出しています。
25年に埼玉県内29店舗でピザを含む店内焼成型の出来たて商品を導入して本格テストをしたところ、導入前から売り上げが3.2%、客数が4.2%増加したという結果が出ています。今後、郊外を中心に実施店舗が拡大していけば、デリバリーシーンでも宅配ピザチェーンのライバルとなりえます」
2024年からセブン-イレブンでは店内焼成のピザの宅配を実施。もちろん持ち帰りもできる
今回の料金体系変更と併せて、ドミノは「チーズの増量」や「具材を端までのせる」ことで味わいの向上を掲げていますが、この影響はどうでしょうか?
「今後、物価高対策で食料品の消費税が1%に減税される可能性が高く、そうなると店内飲食よりもテイクアウトやデリバリーが減税されてお得感が出ます。有名イタリアン店やピザ専門店がコロナ禍と同じようにこぞってテイクアウトやデリバリーメニューを開始するでしょう。味での勝負も簡単ではありません」
コスパではスーパーやコンビニが、味では本格ピザ店が立ちはだかるというピザ業界の激戦時代が訪れている。
ドミノ・ピザは「チーズの増量」や「具材を端までのせる」などの新しい施策を実施
では、宅配ピザチェーンは今後どうなっていくと予想されますか?
「勝機は〝日常〟でなく〝イベント〟での需要。大人数が集まるシーンではコスパよりもタイパが優先されます。
ワールドカップやオリンピックなどの観戦、家族の誕生日や職場のお祝いなどの際はスーパーで買ったピザをひとつひとつ温めるよりも、熱々のピザとサイドメニューをまとめて届けてもらいたい。
そんな『家や職場で手軽に盛り上がれる選択肢』として、どう存在感を出していくかが大切になっていくと思います」
食料品の消費税が1%に減税されれば、有名イタリアン店もデリバリーに力を入れてくることが予想される
具体的には、どんな方法があるのでしょう?
「宅配ピザチェーンが今後打ち出すべきなのは、単なる値引きではなく『その日に頼む理由』です。例えばスポーツイベントであれば、観戦しながら食べやすいメニューや応援気分を盛り上げる限定セット。クリスマスやハロウィン、子供の誕生日であれば、見た目にも楽しく、写真を撮りたくなるような限定メニュー。地域ごとの食材を使ったエリア限定ピザなども、その土地で頼む理由になります。
スーパーやコンビニのピザは安くておいしいですが、こうした〝イベント感〟を演出する部分では、宅配ピザチェーンにもまだ十分に可能性があります」
ドミノの「お持ち帰り半額」終了で、再び考えさせられた宅配ピザのあり方。以前のように『家や職場で盛り上がるためのイベント食』として存在感を示す施策が今後どんどん増えていくかもしれない。