日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『ユースフル・ゴースト』をレビュー!

日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。亡くなった妻の魂が掃除機に宿って夫の元へ帰ってきた!?
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『ユースフル・ゴースト』

評点:★4.5点(5点満点)© 2025 185 FILMS, HAUT LES MAINS, MOMO FILM CO.© 2025 185 FILMS, HAUT LES MAINS, MOMO FILM CO.

映画的な「勧善懲悪」は死者のためにこそ必要

奇想に次ぐ奇想で織りなされた美しいタペストリーのような作品だ。

若くして亡くなった妻がある日、掃除機に憑依して戻ってきた!

という設定にも驚かされるが、ユーモアを交えつつ語られる生者と死者の物語が、イエをめぐる確執や同性愛差別の問題、さらに国家による犯罪まで巻き込みながら怒涛の勢いで流れていく展開には息を吞む。

活人画を思わせる静的なカットを多用した作品だが、その静けさの中に怪異と笑いとショックと愛が立ち上がるさまは文字通りシネマティックと言うしかない。

アジア圏に特徴的な、生者と死者それぞれの世界がときに重なり合い、ときに絶望的なまでに遠く感じられる感覚をうまくとらえているところも味わい深い。

死者の存在が記憶と忘却の間で宙ぶらりんになっている、という概念は比較的ありきたりなものだが、本作はそこに幾重ものエモーションを重ねることで、その概念が持つ切なさややりきれなさを伝えることに成功している。

ホラー的な要素も多分に含まれるが、本作が死者に向ける眼差しは「生者としての責任」に基づく優しさに満ちている。

映画的な「勧善懲悪」は死者のためにこそ必要とされているのだ、という確信がそこにはある。

STORY:呼吸器疾患で妻ナットを亡くしたマーチ。ある日、妻の魂が掃除機に宿り、ふたりは愛を確かめ合う。一方、家族の工場でも従業員の霊が機械に憑依。ナットは工場の除霊に協力し、役立つ幽霊として真実の愛を証明しようとする

監督・脚本:ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク
出演:ダビカ・ホーン、ウィットサルート・ヒンマラートほか
上映時間:130分

全国公開中

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