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WS3連覇を目指すドジャースが早くも独走態勢に入っている。勝率も失点の少なさも得失点差もMLB30球団トップを誇っているが、ポストシーズンへ向け不安要素はないのか!?
※成績はすべて日本時間7月19日時点
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WS3連覇を目指すドジャース。前半戦でナ・リーグ西地区2位に最大14.5ゲーム差をつけるなど独走態勢に入り、後半戦もその勢いは止まらない。勝率も失点の少なさも得失点差も、MLB30球団トップを誇っている。
現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBにも精通する野球評論家・お股ニキ氏は、今季好調を維持するチームの根幹を「編成力と運用力」に見る。
かじを取るのは、アンドリュー・フリードマン編成本部長。MLB屈指の低予算だったレイズで2006年から球団運営を担い、堅実な補強で常勝軍団を構築。2014年秋にドジャースへ移った後も、しばらくは効率重視の編成を貫いてきた。
「そのフリードマンが、レイズ仕込みの節約志向から一転、スター獲得へかじを切りました。象徴は大谷翔平の6億8000万ドル後払い契約。これでCBT(ぜいたく税)の枠に余裕が生まれ、昨オフもカイル・タッカーやエドウィン・ディアスといったMLB屈指のタレントを補強しました」
もっとも、大型補強で獲得した選手たちが計算どおりに活躍しているわけではない。
今季、鳴り物入りで加入したタッカー。出塁力は健在も、本来の長打と守備の復調が待たれる
今季、守護神として加入するも、4月に故障離脱したディアス。メジャー復帰も近そうだ
「タッカーとディアスに関しては、期待どおりとは言えません。タッカーは出塁こそできても長打が少なく、守備も物足りない。ディアスも序盤に苦しんだ末に故障。それでも独走できてしまう選手層の厚さこそ、今季のドジャースの怖さなのです」
その象徴が、故障者を出しても崩れない投手陣だ。
「タイラー・グラスノーやブレイク・スネルが離脱しても崩れないのは、チームで負担し合う『ワークシェア』の設計が効いているから。特定の選手に頼り切らず、状態のいい投手でローテを回す。独走の土台はここにあります」
野手陣も、看板選手の不振がそのまま失速につながらない。ムーキー・ベッツが状態を落としても、打線全体は高水準を保ってきた。
「先発投手としてフル稼働を続ける大谷が打撃でも結果を残し、守備シフトの洗練により、フレディ・フリーマンとマックス・マンシーは守りでの貢献度も絶大です。
打撃を伸ばし、ゴールドグラブ賞級の守備も光るパヘス。大谷の後ろの2番を担う急成長株だ
若手のアンディ・パヘスもポール・スキーンズ(パイレーツ)ら好投手対策の練習で打撃面が成長し、ゴールドグラブ賞級の守備も健在でオールスターに初選出。大谷の後ろの2番という難しい打順を任せられるほどです」
選手層の厚さには、外からの補強だけでなく、控えや若手の突き上げも効いている。
「正捕手のウィル・スミスが離脱しても、若手のダルトン・ラッシングが穴を埋めました。投手でも、ジャスティン・ロブレスキーのような若手先発が急成長。ミゲル・ロハスら控えのベテランも確実に仕事をこなします。
高額補強組に誤算があっても、元からいる選手たちの奮起でチーム力が維持できており、育成と補強の『ハイブリッド型』が完全に機能しています」
また、昨季は苦しんだ中継ぎ陣に関しても、着実に整備・運用できている。
「ディアスの離脱後は勝ちパターンを完全固定せず、復活したタナー・スコット、台頭してきた若手のカイル・ハートやエドガルド・エンリケス、ベテランのアレックス・ベシアらでうまく回しています。ディアスの復帰も含めて、最終的にどのように完成させていくか見ものです」
独走を支える日本人トリオ、大谷、山本由伸、佐々木朗希の現在地は三者三様だ。
防御率1点台、サイ・ヤング賞級の投球を貫く大谷。後半戦はポストシーズンへ向けた調整が鍵を握る
「打者・大谷は打率.290前後、20本塁打超え、OPS.900台半ば。過去2年の爆発に比べればおとなしい印象を抱くファンも多いかもしれませんが、先発でフル稼働をした上でのこの数字は文句なしのMVP級です。弱点だった左投手の内角に食い込む球への対応も進んでおり、ポストシーズンへ向けた好材料と言えます」
ただ、投手・大谷には懸念も残る。3、4月期に「投手部門」で自身初となる月間MVPを受賞し、現在も規定未満ながら防御率1点台の好投を続けているが、最高の状態ではないという。
「腕の振りが横振り気味でスイーパー依存となり、シーズン序盤で見せていた圧倒感は薄れています。左膝や右肘の不安もあり、後半戦は投球回を増やすより、ポストシーズンに向けて球数や登板間隔をきっちり管理していくことが重要になってくるでしょう」
6月14日には8回2死までパーフェクトピッチングを披露した山本。安定感抜群の投球を継続している
最も計算が立つのは、MLB3年目でローテの柱となっている山本だ。6月14日(日本時間。以下同)には完全試合まで残り打者4人に迫る快投を演じている。
「山本は17試合に先発し、9勝6敗、防御率2点台と安定感抜群。カッターやシンカーを左右に散らし、カーブやスプリットも駆使して、打者を縦にも横にも揺さぶれる。四球で自滅せず、被打率も低いため、短期決戦でも試合を壊しにくい。最大出力は大谷に譲っても、シーズンを通して『6~7回を2失点』という投球が期待できます」
不安があるとすれば、蓄積疲労だ。今季は前半戦だけで110イニングを超えている。
「数字は安定していますが、球速やスプリットの落ち、カーブの精度にわずかな変化が出れば一気に打ち込まれかねない。故障よりも、小さな出力低下やリリースのズレを早く察知できるかどうか。後半戦は勝ち星よりもコンディション維持が鍵です」
オールスター休み明けから状態を上げる佐々木。ポストシーズンではジョーカー起用にも期待がかかる
そして、ここまで17試合に先発し、3勝5敗、防御率4点台の佐々木。復調と停滞を経て、今は状態が上向き始めているという。
「フォームもスピードも球威も、だいぶ上がってきている印象です。5月にスプリットを改良して一度は上向いたものの、6月後半に再び停滞。しかし、オールスターブレイクを経て、再び状態を上げてきています。このまま順調にいけば、ポストシーズンでも十分に期待できそうです」
7月10日にナ・リーグ西地区の2位に今季最大となる14.5ゲーム差をつけたドジャース。その強さが本物であることは数字が証明している。
「62勝36敗で貯金26、勝率.633は30球団トップ。失点の少なさ、得失点差+150もMLBで一番です。強さは本物ですが、ドジャース以外のチームが伸び悩んでいるからこそ、ここまで独走状態が続いていると言えます」
この状態ならば、地区優勝は間違いないだろう。だからこそ、後半戦のテーマは100勝を目指すことではないという。
「首位を守りながら、ポストシーズンで主力の調子やコンディションを最大化するための調整が何よりも大事になってきます。
大谷と山本をどのように登板させるのか。佐々木を先発で使うのか、リリーフで使うのか。ほころびが見える守備をいかに整えられるか。そういったパズルを完成させるため、レギュラーシーズンの残り期間での見極めや運用が求められます」
WS3連覇を目指すドジャースだが、ナ・リーグには不気味なライバルがいる。お股ニキ氏がその完成度の高さを警戒するのはブルワーズだ。
「60勝37敗、得失点差+127でリーグ最高勝率をドジャースと争うブルワーズが最も怖い存在です。投手力が高く、守備や走塁も安定していて大崩れしない。
また、攻撃にバントを絡め、リリーフエースのアーロン・アシュビーを競った局面を狙って送り込むなど、スモールボール的な発想もある。若き剛腕ジェイコブ・ミジオロウスキーの存在も含め、完成度では一番の強敵と言えます」
古豪ブレーブスも、対戦相手としては不気味だ。
「ブレーブスは56勝40敗、得失点差+106。今季、クリス・セールがサイ・ヤング賞級の復活を遂げました。打線と投手陣が噛み合えば手がつけられなくなるので、短期決戦での怖さがあります」
打線の圧力で相手をのみ込むのがフィリーズだ。
「フィリーズはチーム全体の得失点差こそマイナスですが、打線の圧力と守護神ジョアン・デュランの制圧力は圧倒的。先発には大谷が苦手とする左のクリストファー・サンチェスもいる。
完成度ならブルワーズ、爆発力ならブレーブス、相性の悪さならフィリーズ。この3球団がポストシーズンでドジャースの前に立ちはだかりそうです」
対するア・リーグは、アストロズの王朝が終わり、絶対王者不在の混戦だ。
「ア・リーグ全体で上位のレイズやヤンキースも、明確に抜けた存在ではありません。ヤンキースは得失点差+90と順位以上の実力があり、投打が噛み合えば怖い。
それでもア・リーグ各地区の戦いがシーズン最終盤までもつれ、ポストシーズンでも拮抗した試合が続いて投手陣が消耗すれば、WSで戦うドジャースにとっては好材料です」
では、今季のドジャースに隙はないのか。お股ニキ氏が〝唯一にして最大の不安〟を挙げる。
「レギュラーシーズンで同格との真剣勝負が少ないのは不安要素です。ナ・リーグ西地区での独走のツケが短期決戦で出る可能性もあります」
果たして、今季のドジャースは球史に残る大偉業、WS3連覇を成し遂げられるのか。独走の価値が問われるのは、10月になってからだ。