
小山田裕哉
おやまだ・ゆうや
小山田裕哉の記事一覧
1984年生まれ、岩手県出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映画業界、イベント業などを経て、フリーランスのライターとして執筆活動を始める。ビジネス・カルチャー・広告・書籍構成など、さまざまな媒体で執筆・編集活動を行っている。著書に「売らずに売る技術 高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密」(集英社)。季刊誌「tattva」(BOOTLEG)編集部員。

2026年末での引退を表明した人気セクシー女優のMINAMOが、9月14日に初となる半自伝的小説『母の泥舟』(KADOKAWA)を刊行した。
これまで詳しく語ってこなかった〝家族〟をテーマにした本作。互いに傷つけ合いながらも求め合う母と娘の葛藤を通じて、彼女は何を描きたかったのか。小説家デビューを果たしたMINAMOを直撃した。
――小説を書くことになったきっかけは?
MINAMO KADOKAWAの編集さんからお声がけいただいたのが始まりです。不安もありましたけど、子どもの頃から本が好きで、小説を出すことは夢だったので、「書いてみたい」と思いました。
――〝家族〟をテーマにすることも最初から決まっていた?
MINAMO いえ、「テーマも設定も自由に考えていいから」と言われました。前に出したエッセイを読んでいただいて、「こういう文章を書く人が物語を書いたら、どうなるのか読んでみたいんです」と言ってくださって、それがすごく嬉しかったんです。
だから、最初の頃はけっこういろいろな案を出しました。ラノベとかSFとか(笑)。でも、やっぱり真面目に書くことを考えると、今の実力では、自分が経験してきたことや感じてきたことをベースにしないと、内容が薄っぺらくなるだろうなと思って。それで人生の中で印象深い出来事を振り返ったときに、「やっぱり家族のことかな」と。それでこのテーマでいこうと決めました。

――「半自伝的小説」と銘打たれていますが、自身の経験とフィクションの境界線はどのように意識しました?
MINAMO 自分の経験がベースではあるけど、細かいところには脚色も入っています。ただ、「ここが本当で、ここは創作です」とは、あえて言わないようにしています。それをやると、読む側のロマンがなくなってしまうじゃないですか。かといって、私小説として出すには、自分がまだまだ経験不足だなとも思うので、こういう「半自伝的小説」というかたちになりました。
――読者としてはMINAMOさんの処女作ということで、「恋愛」や「エロ」の要素を期待する人も多いかと思いますが、本作ではまったく出てこないですね。
MINAMO そこは意図的に切りました。期待されるだろうなとは感じていました。でも、あらためて考えたら、私の恋愛事情が家族のことに影響したことって、あんまりないなと思って。だから、今回は「家族の物語」に焦点を絞ることにしました。
別に「恋愛」や「エロ」が書きたくないわけじゃないんですよ。今回は違うってだけで。「次回作以降に期待してください」という感じですね(笑)。

――主な登場人物は主人公を含めて5人。しかも、父親以外は全員女性(主人公、母、妹、祖母)という設定です。しかも、家族以外の人物が登場しないだけでなく、登場人物たちに名前も付いていない。この理由は?
MINAMO 最初は他人が介入して家族の揉め事が解決する展開も書いていたんです。主人公が結婚して、その旦那さんが家族の中に入ってくる。旦那さんからの評価を聞いて、「お父さんってこんな人だったんだ」「お母さんってこんな人だったんだ」と気が付く、みたいな。
でも、リアリティが足りなかったんです。私は結婚したことがないから、書いていても説得力がなくて。それに、家族の中のしこりって、やっぱり本人たちの意識や、それぞれの努力で解決してもらいたいなと思ったんです。だからあえて、ちょっと閉じた世界にしました。家族って、狭い視野で成り立っている世界だとも思うので、そういう物語を書きたかったんです。

――本作で描かれるのは、機能不全に陥った家族です。今は和解に至っている様子も描かれていますが、MINAMOさんは執筆にあたり、自身のご家族に「あのとき、どう思っていたの?」と取材までされたそうですね。
MINAMO プロットを組み立ててから、家族に直接取材をしました。小説の内容イコール、うちの家族の話ではないけど、母から聞いた言葉を物語の中に入れる、なんてことはしましたね。
――執筆を通じて、MINAMOさんも自分の家族と向き合ったというか。
MINAMO だから、小説を書き終わる頃には、私の中に詰まっていたものがストンと落ちたような感覚がありました。特に父との関係は変わったかもしれないですね。この物語を書く機会がなかったら、いまだに父とはあまり話していなかったかもしれません。
多分、執筆中に私自身の心境の変化があったんだと思います。子供の頃って、欲しかった愛情をもらえないと、大人になっても両親を「ひとりの人間」として見ることがなかなかできないと思うんです。でも、この小説を書いたことで、両親の人生や考え方を知ることができ、ようやく親を「ひとりの人間」として見られるようになりました。
――じゃあ、この作品を書いたことによって、MINAMOさん自身もすっきりできた?
MINAMO そうですね。けっこうモヤモヤはなくなったかも。でも、幸せな人の書く文章って面白くないと思っているから、逆に「これじゃダメだ」って。わざと機能不全家族が出てくる暗い映画をたくさん観て、めっちゃ暗い気持ちを作ってから書くようにしていました(笑)。

――もともと読書は好きだったんですか?
MINAMO 小学3年生くらいのときに、親の教育方針で実家からテレビが消えたんです。だから家の中にあった娯楽が読書くらいしかなくて。外にいるときも図書館で『はだしのゲン』や『火の鳥』、あとは学習用の歴史漫画なんかをひたすら読んでいました。
――小説は?
MINAMO 父の趣味で、山本周五郎、村上春樹、村上龍、宮沢賢治の4人は家にあったんですよね。だから、しばらくはそればっかり読んでいました。村上春樹さんの性描写を読んで、「こんな文章を書ける人、すごいな!」って衝撃を受けていました(笑)。
――ご自身で本を選ぶようになってからは、どんな作家を?
MINAMO 村山由佳さんや山本文緒さんなど、女性作家さんが多いです。透明感のある綺麗な描写と、ストーリーの面白さが好きで。あとは食べ物が出てくる小説も大好きです。柚木麻子さんの『BUTTER』とか、アンソロジーの『カレー記念日』とか。文章だけで食欲をそそる表現って、本当にすごいと思います。

――活字を読む際、リーディングトラッカー(読みたい行に集中できる特殊なしおり)を使われているとか。
MINAMO そうなんですよ。昔から長文を読めない特性があって、トラッカーを使わないと、集中力を持続できないんですよね。
――でも、そういうツールを使っても読みたいくらい本が好きなんですね。
MINAMO 大好きですね。漫画も好きですし。今はBLなんかも含めると、膨大な時間を読書に費やしていると思います(笑)。
――それだけ本が好きだったら、自分の本が完成したときには感慨深かったのでは?
MINAMO うれしかったですけど、まだ実感はないですね。見本を手に持ったときは、「パソコン上の文章でしかなかったものが、物質になった!」とは思いましたけど(笑)。
――小説執筆は大変だった?
MINAMO 吐くかと思うくらい大変でした。リアルな経験や思いを乗せているからこそ、ブレちゃいけないし、どこまで書いていいかわからない葛藤もあって。途中で「全部空想だったらどんなに楽だったか!」とは何度も思いましたね。
――では、これっきりにしたい?
MINAMO 「もう2度とやらない!」と思ったときもありましたけど、たぶん、また書くと思います(笑)。実は次に書くならこれ、というテーマも決まっているんですよね。ただ、今は年末の引退に向けて忙しいので、執筆は来年以降になるとは思います。
――最後に、この小説をどんな人に読んでほしいですか?
MINAMO 「誰かの子供である人」ですね。あとは「自分はひとりで生きてきた」と思っている人かな。男女は問わないですね。一見平穏そうに見える家庭でも、個々に複雑なものを抱えていると思うので、いろんな人に響く物語になっていればうれしいです。

●MINAMO(みなも)
2000年生まれ 京都府出身 身長153㎝
○2021年5月に、セクシー女優デビュー。唯一無二の個性的な雰囲気が多くのファンを魅了している。今年12月をもってセクシー女優を引退することを発表した。
公式X【@M_I_N_A_M_O_】
公式Instagram【@minamo_j】
公式YouTube『MINAMOジャンクション』
■『母の泥舟』
株式会社KADOKAWA 1980円(税込)
