オグマナオト
おぐま・なおと
オグマナオトの記事一覧
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。
東京五輪世代を中心としたメンバー構成で"史上最強"の呼び声も高かった第2次森保ジャパン。北中米W杯では王国ブラジルの前に惜しくも散ったが、4年後のW杯に向けて、さらなる積み上げや進化への期待は膨らむばかりだ!
※2030年の各選手の年齢はW杯開幕時(2030年6月13日)のものです。
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北中米W杯で王国ブラジルに惜敗したサッカー日本代表。4年後の2030年大会では、今度こそ決勝トーナメント初戦の壁を越え、さらにその先の景色を期待したいが、具体的なメンバー構成はどうなりそうか?
「今回の日本代表で特に名を上げた選手といえば、ボランチの佐野海舟とGKの鈴木彩艶。佐野は4年後が29歳、彩艶は27歳とまさにサッカー選手として脂が乗る時期ですし、このふたりがこれからの4年間、日本代表の軸になるのは間違いないでしょう」
こう語るのは、日本代表を長く追い続け、今大会も現地で取材したスポーツライターのミムラユウスケ氏だ。
「ふたりとも今夏、ステップアップが期待できます。特に佐野は『日本人過去最高額での移籍になる』と噂されるレベルで、名実共に代表の中心として注目されます」
同じく「佐野と彩艶が軸になる」と語り、移籍先にも注目するのは、戦術分析官としてYouTubeで人気を博し、自身もクラブチームで監督を務めるレオ・ザ・フットボール(以下、レオザ)氏だ。
「彩艶の能力はすでに申し分ないだけに、さらに高みを目指す上ではGKとしての〝格〟を身につけてほしい。あるレベルを超えると格で守るというか、存在感だけで1対1でも有利に立てます。
そのために大事なのは、第1GKとして期待されるクラブに移籍すること。ハイレベルな環境でも、第2GKでは格が身につきませんから」
その彩艶の前を守る守備陣の新たなリーダー候補は?
「鈴木淳之介に期待したいです。今大会ではもっと出番があると思っていただけに、本人も期するものがあるはず。この4年で特に伸びた選手と言えるだけに、26歳になる4年後はさらに成長し、今度こそ主力になってほしいです」
攻撃陣の注目は誰か?
「佐野と同学年の中村敬斗、1学年下の久保建英と鈴木唯人に注目しています。特に久保と唯人は今大会、出番が1試合だけと不完全燃焼でした。次の大会では活躍を期待したいです」(ミムラ氏)
オランダ戦でチームを勢いづかせる同点弾を叩き込んだ中村。欧州強豪クラブへの移籍も秒読みか
自身2度目のW杯も負傷に泣いた久保。選手として脂が乗る29歳で次回大会を迎える
同様に不完全燃焼に終わったアタッカーといえば、今大会の最年少コンビ、21歳の塩貝健人と後藤啓介だ。
「今大会、ほぼ外からチームを見るカタチになったことで、『自分が活躍したい』という気持ちがより強くなったはず。共に2年後のロサンゼルス五輪に出られる年齢ですが、その世代を率いる現U-21の大岩 剛監督から『五輪に呼びたくても呼べないくらいビッグになれ』とハッパをかけられています」
このふたりがFWで切磋琢磨することが、日本代表のレベルアップにつながっていく。
スーパーサブとしてオランダ戦に途中出場した塩貝。4年後はエースとしてチームを引っ張れるか
191cmの万能型ストライカーとしてW杯デビューを果たした後藤。今夏ブンデス初挑戦を果たす
「ワントップであればどちらが出るかの競争になりますし、タイプが違うのでツートップでの共存もできる。漫画『SLAM DUNK』の桜木花道と流川楓のようなライバル関係を期待したいです。今大会では、上田綺世がFW陣全員をリスペクトし、お互いに影響を受け合う環境をつくっていたので、その空気をぜひ引き継いでほしい」
その上田は4年後に31歳。まだ活躍できるか?
「まだまだ成長段階にありますし、今大会で見せたような、オフサイドラインで張るのではなく、中盤まで下りてチャンスメークするカタチは日本代表の武器になります」(レオザ氏)
上田をはじめ、今大会で中核を担った東京五輪世代は4年後に30代を迎える選手ばかり。その中で注目は誰か?
「ボランチの田中 碧、DFでは伊藤洋輝と冨安健洋が4年後は31歳ですが、まだまだできる。クロアチアのルカ・モドリッチが40歳で健在だったようにボランチは職人的な要素も強く、田中も活躍できるはず。
冨安の場合は『健康体ならば』という注釈がつくものの、別格の能力を考えれば当然期待したい選手。オランダのフィルジル・ファン・ダイクが今大会開幕時34歳で世界屈指の存在感を示したように、守備陣のリーダーとして活躍してほしいです」
そして、今大会直前に太もも肉離れのケガをして、メンバー入りを逃した三笘 薫は、4年後に33歳。今大会で活躍した伊東純也が33歳だったことを考えると、「次こそは」と期待したくなる。
では、30代で衰えるアタッカーと伊東のように活躍できるタイプの違いは何か?
「若い頃にポテンシャル頼みだった選手は、ある程度の年齢で動けなくなることが多い。ただ、三笘は若手時代からずっと練習の虫と聞きますし、サッカーIQはさらに高まっていくはず。今回のケガが尾を引くようなことがなければ、4年後も活躍の可能性はあると思います」
日本代表の伸びしろという意味では、W杯敗退後に久保が「4年後、僕の下の世代が何人、W杯メンバーに入っているか?」と問題提起したことが話題になっている。
今大会メンバーでパリ五輪世代は久保、鈴木唯人、鈴木彩艶、鈴木淳之介の4人だけ。しかも、実際にパリ五輪に出場した選手は誰もメンバー入りできていない。久保が語るとおり、パリ五輪世代、そして次のロス五輪世代の飛躍が重要なテーマと言える。
「パリ五輪世代の注目は、ボランチの松木玖生。ここから年齢を重ねてトップレベルでのプレーメモリーがたまると、もっとプレス対応が良くなるはず。ボランチとしてまだまだ伸びしろがあります。ボランチには藤田譲瑠チマもいて、引き続き日本の強みと言えるポジションです」
パリ世代のアタッカーで期待したいのは誰か?
「昨季は英国2部ハル・シティでプレーした平河 悠です。そもそも、今大会にもぜひ選んでほしかった選手。平河がいたら中村をあそこまで酷使せず、ブラジル戦にフレッシュな状態で臨めたはずです」
ミムラ氏は北野颯太の名前を挙げる。
「今年1月のバイエルン戦でものすごいプレーをしていて、ポテンシャルを感じる選手です。セレッソ大阪からザルツブルクへ移籍した経歴も含め、南野拓実の後継者と言えるかもしれません」
パリ五輪に19歳で選ばれた高井幸大は今大会メンバー入りも期待されたDFだ。
「以前は技術的な粗さから、ディフェンスラインの選手にしては軽率なプレーも見られました。でも、その技術の使い方がうまくなった。軽率さがなくなり、ケガがなければ、冨安に匹敵する存在になれる選手です」(レオザ氏)
昨季はレンタル先のボルシアMGで研鑽を積んだ高井。冨安健洋の後継者になりうる逸材だ
一方のロス五輪世代。後藤や塩貝以外にはどんな逸材がいるのか?
「今回の代表では若手CBが手薄でした。そこで期待したいのは高井以外に、今冬オランダへ移籍した市原吏音、今夏レアル・ソシエダに完全移籍した喜多壱也です。いずれも20歳の若さで欧州でのキャリアをスタートできているのは楽しみでしかないです」(ミムラ氏)
今冬にオランダ移籍を果たしたU-20&U-23アジア杯連覇の主将CB市原。A代表入りにも期待がかかる
レアル・ソシエダへの完全移籍が決定した喜多。空中戦に強い屈強なCBとしてA代表入りを目指す
レオザ氏は今冬フランクフルトへ移籍した20歳のSB、小杉啓太の名を挙げる。
「かつては長友佑都、内田篤人、酒井宏樹と潤沢だったSBが今大会では少なかった。SBがいないから3バックを選んだとも言えます。そこで期待したいのが小杉です。クロスから散々やられた日本代表のウイークポイント改善に向け、新世代SBにはぜひ台頭してほしい」
このほか、世代が上でも、今後の飛躍を期待したい選手は誰なのか?
「25歳のDF、綱島悠斗です。彼の魅力はサッカーに対する真摯な姿勢やストイックさも含めたメンタリティ。決して順風満帆なキャリアではないですが、むしろその雑草魂的な部分でチームのバイタリティになってほしい存在です」
「史上最強」と評されたチームでも突破できなかったW杯決勝トーナメント初戦の壁。それを打ち破るためには、新世代の台頭を期待する以外に、何が求められるのだろうか?
「今回負けたブラジル戦でいえば、前半は良かったのに、後半に相手が攻め方を変えてからの対応が課題として残りました。
このような試合展開はこれまでほぼ経験がなく、選手個々の対応力ではどうしても限界がある。ベンチワークでカバーしなければならない点です。選手個々の判断やアイデアを重視する〝ボトムアップ型〟に限界があったことは否めません」(ミムラ氏)
となると、懸案は監督問題。一部報道では、森保一監督に契約延長オファーを出しているとも、別の監督を検討しているとも報じられている。
「森保監督はチームをまとめるマネジメント力は高いものの、修正やアドリブは苦手。といっても、まとめる力もアドリブ力もある監督なんて、世界中を探してもなかなかいませんし、金銭的に呼ぶことはまず不可能。
候補として挙がっている監督も何人かいますが、日本代表をうまくまとめられるか、という点ではガチャ要素が強すぎる。ならば、森保監督続投は現実的な路線で悪くない選択だと思います」(レオザ氏)
そこで鍵を握るのがコーチ人事だとレオザ氏は指摘する。
「森保監督が続投した場合、コーチ人事から森保監督自身が今大会で何を評価し、課題と思ったかが見えてきます。
個人的に注目するのは長谷部 誠コーチの去就。最近になって日本代表のプレスが良くなったのは、24年に就任した長谷部コーチの存在が大きかったとみています。
森保監督のまとめる力を生かしつつ、森保監督にない海外経験を持つ長谷部コーチが守備を整備する。日本サッカーの進化を目指す上では一番リスクが少ないように思います」
ミムラ氏は、若手時代から欧州を経験する選手が増えている環境に期待を寄せる。
「上田は『プレミアやチャンピオンズリーグで戦うことが当たり前、という選手が増えないとW杯優勝は狙えない』と言っていました。プレミアでレギュラーを張る田中や鎌田大地がW杯で活躍したことがその証明でもある。早くから欧州に身を投じる選手が増えているのは、理想的な進化です」
加えてミムラ氏は、過剰に「決勝トーナメント初戦の壁」を意識しすぎることへの弊害も指摘する。
「これで5回連続、決勝トーナメント初戦で敗れているわけですが、2002年大会のトルコ、2018年大会のベルギー、2022年大会のクロアチアはいずれも3位まで躍進しており、そういう国といきなり当たるクジ運の悪さは否めません。
にもかかわらず、過剰に『壁』を意識すると自分たちのパフォーマンスを落としかねない。かつて苦しんだ『アジアの壁』と同様に、『決勝トーナメント初戦の壁なんてなかった』と言える時代がきっと来るはずです」
ミムラ氏もレオザ氏も「4年あれば、驚きの進化を遂げる可能性がある」という意見は共通している。
「佐野は4年前、まだJ2時代の町田ゼルビア所属でした。そこからの飛躍を考えれば、4年後に信じられない活躍を見せる選手が出てくるでしょう」(ミムラ氏)
「谷口彰悟は30歳を過ぎてからさらに進化し、34歳で迎えた今大会、見事にDFリーダーを務めました。若手時代に評価される選手と、A代表で活躍する選手が違うケースはよくあること。私の予想を裏切る日本代表をぜひ見たいです」(レオザ氏)
11月にはブラジルとのリベンジマッチを計画中との報道もある。これから先の日本代表がどんな進化を遂げていくのか。楽しみは尽きない。