結成48年! "世界一快適な音楽"を奏でるゴンチチが語る"快適"な音楽とは?「ゴンチチって『パンクギターデュオ』だと思っているんです」

取材・文/大久保和則


今年で結成48年、デビュー43年を迎えたゴンザレス三上とチチ松村によるアコースティックギターデュオ、GONTITI(ゴンチチ)。

彼らが、約6年半ぶりとなる待望のニューアルバム『Two Old Pilots After Twilight』をリリースした。「2人のパイロットによる世界旅行」をコンセプトに制作された本作は、旅の高揚感と哀愁を漂わせながら、聴く者を穏やかな幸福感で包み込む全15曲が収められている。

"世界一快適な音楽を奏でるギターデュオ"と評され、国内外で高く評価され続ける彼らは、今作にどのような想いを込めたのか。アルバムの制作秘話から、彼らが考える"快適な音楽"の真意に至るまで話を訊いた。

*  *  *

──結成から48年を迎え、約6年半ぶりのニューアルバム『Two Old Pilots After Twilight』が完成しました。今作もボサノバやジャズ、ムードミュージックなど世界各国の音楽がブレンドされた、エキゾチックで最高に心地良い音世界が全編に広がっています。「2人のパイロットによる世界旅行」をコンセプトに制作されたそうですが、いつも明確にコンセプトを決めてアルバムを制作されているんですか?

三上 松村さん、どうですか?

松村 三上さんは日常的に写真を撮っているんですけど、その中に夕焼け空を飛行機が飛んでいるすごくいい写真があって。僕は三上さんがそこから発想を得たコンセプトなんじゃないかと思っているんですが......どうですか?

三上 まさにその通りです(笑)。今までのアルバムは「なんとなくこんな感じかな」って、コンセプトを決めずに作っていたんですよ。でも、今回のアルバムはその写真がきっかけで、「2人のパイロットによる世界旅行」というコンセプトを決めました。自分たちの存在にもダブるなと思ったんです。僕らは人生の黄昏時にさしかかった2人のパイロットですから(笑)。コロナ禍もありましたけど、そんな時期を越えて、音楽で世界を旅するのもいいかなと。

ゴンザレス三上さんゴンザレス三上さん
──その写真はいつ頃に撮影されたものなんですか?

三上 3年ぐらい前です。自宅の近くにある夕焼けスポットで撮りました。夕焼けの写真はいつもXに上げてるんですけど、その写真は上げずに、今回のアルバムのジャケットに使っています。

松村 そのコンセプトがあったので、「何曲かの曲名に国際空港の名前を入れてほしい」というリクエストが、三上さんからあったんです。それで世界の国際空港をネットで調べて、興味が沸いた空港の名前を3つほどタイトルに入れました。そういう曲名の付け方は、今までやったことがなかったので、新鮮で楽しかったですね。

三上 コンセプトありきでアルバムを作ったことがなかったので、最初は自分でもどうなるかわからなかったんです。でも、レコーディングが進むうちに、いつも通り一生懸命に集中して演奏して、結果的に「いい意味でなるようにしかならない」って感覚になっていって。そこは、コンセプト有無に関わらず、変わらなかったですね。

松村 コロナ禍を乗り越えてアルバムが完成させられたことも、すごくうれしかったです。その時期は人間関係も希薄になって、世捨て人みたいに閉鎖的になってしまってましたから。そんな時期を経て、閉じられていた門が開き、また新しい場所に旅立った感覚があります。

三上 デビューアルバムを作ったような気持ちもありますね。「ここからまた再出発するんだ」というか。マイナーブルース調の2曲目(『Jumping VoVo』)とか、今までやったことのないスタイルにも挑戦してますし。いや、挑戦というと大げさか(笑)。でも、今また新しいことがやりたいって気持ちがあったし、このアルバムが今の世界にどんなふうに届くのか、自分自身すごく興味があります。従来のファンに満足してもらうことは重要だけど、若い人の耳に届くことがあるのか、もし届くとしたらどういうふうに伝わり方をするのか、期待がありますね。

──若い世代の新しいリスナーも意識しているんですね。

三上 僕は日本の最新ヒットチャートも聴くんですけど、自分たちが若い頃と比べて隔世の感はあります。その中で、どこまで通用するのか。何が当たるかわからない、どこで気に入ってもらえるか読めない、混沌とした時代ですからね。音楽以外の世界でも、昔のマイナーなキャラが急に若い人たちの間で流行したりしてますし、何が起こるかわからない面白さがあります。

──普段、ゴンチチは、"快適なインストゥルメンタル音楽を奏でるギターデュオ"と呼ばれ音楽ファンに愛されています。2人がパーソナリティを務めるラジオ番組(『NHK-FM『世界の快適音楽セレクション』/1999年から放送されている)にも"快適"という言葉が冠されていますし、ゴンチチの音楽を語る上で"快適"はキーワードになっていると思います。

松村 これ、実はむずかしいところで(笑)。僕ら自身は別に快適な音楽を作ろうとは意識しているわけではないんです。自分が好きな音楽、作っていて「これはいいな」という音楽は、"快適"というより"快感"に近いです。

三上 僕は、ゴンチチって「パンクギターデュオ」だと思っているんです。

チチ松村さんチチ松村さん
──ゴンチチがパンク!?

三上 はい(笑)。音楽性はパンクではないけど、本質的なアティテュード(姿勢)が。では、自分たちが作ろうと思っているわけではないのに、なぜ"快適な音楽"というカテゴリーに収められているかというと、僕らがやっている音楽がほかにない音楽だったから、便宜上そう呼んだという部分が大きいと思います。自分たちから快適さを求めたわけではなく、他にない音楽、メインストリームの権威的な音楽に対する「これじゃない」というアンチテーゼを自分たちの音楽に反映させたら、結果的にみんなが快適さを感じる音楽になった。それだけなんです。だから、基本的には反骨精神なんです。

──既存の音楽に対するカウンター、アンチテーゼであるという意味で反骨ということですよね。

三上 そうです。誰かが作った既成概念にとらわれないのがパンクスピリットですから。だから、ゴンチチはパンクギターデュオだと思っているんです。

松村 自分たちがやりたい音楽を他にやっている人がいないから、「自分たちがやらないと」っていう精神もありますし。

──DIY精神もまさにパンクスピリットですね。

三上 あと、既存のジャンルに収まりが良い音楽より、収まりがついていない音楽のほうが面白いと思うんですよね。そう考えるのも、反骨的なパンクスピリットがあるからかもしれません。

松村 そのマインドで自分たちのやりたいことしかやってこなかったわけですから、幸せ者です。売れることを第一に考えてやっている人たちもいらっしゃるでしょうけど、そういう音楽との向き合い方に反発し続けている部分もあるんでしょうね。

三上 そんな僕たちを支えてくれている周りの人たちには、本当に感謝しかありません。「好きだからやる」という、まるでアマチュアのようなスタンスで活動を続けさせてもらっていますから。ある意味、プロとしての意識がないわけです。

──そんなスタンスを貫きつつ、結成から48年、デビューからは43年の長きにわたってゴンチチは続いています。

三上 長く続けようと思ってやってきたわけではないんですよね。「消滅するなら、それも構わない」と思ってやってきて、それが結果的にここまで続いてきた。さっきも言いましたけど、ゴンチチが続いてきたのは、僕らにたずさわってくれた方々のおかげです。

松村 今回のアルバムもそうですけど、支えてくれる周りのスタッフの方たちには、痛いほどの感謝しかないですね。

──お二人は、放送開始から28年目に突入しているラジオ番組で様々な音楽を紹介しています。ここで最近のオススメの1枚を挙げていただけますか?

三上 最近は、ナット・キング・コールなどのスタンダード、古いものを根こそぎ聴いているんですよ。オススメは......ちょっとタイトルは忘れてしまいましたが、ナット・キング・コールが代表曲の『L-O-V-E』を日本語で歌ったバージョンが収録されている、底抜けに明るいアルバムがあるんです。あれは、すごくいいですね。

松村 サム・ウィルクス(2025年にリリースされた星野源のアルバム『Gen』に収録された『Mad Hope』にも参加しているベーシスト)っているじゃないですか。彼とドラマーのクレイグ・ウェインリブ、ギタリストのディラン・デイの3人が2024年にリリースした『サム・ウィルクス、クレイグ・ウェインリブ、ディラン・デイ』というアルバムがおオススメです。僕はディラン・デイのスライドギターがむちゃくちゃ好きなんですけど、彼のギターは本当にすごいですよ。


──今後の音楽活動については、どんな展望を持たれていますか?

三上 ライブやコンサートをするにしても、体と相談しながら進めていきたいなと思っています。もう72歳ですからね(笑)。

松村 僕は、三上さんに従っていきます。導いてもらおうという感じですね。

三上 1曲か2曲なら体力的に問題ないと思うから、どこかで路上ゲリラライブをするかもしれない(笑)。それも、パンク的アティテュードですから。

──今後の活動も楽しみにしています!

三上 まずは、ぜひ新しいアルバムを聴いてみてほしいですね。どこにもない音楽なので。

松村 どこにもない僕と三上さんにしかできない音楽です。「絶滅危惧種なので今聴いておかないとダメだよ」って(笑)。今までゴンチチを聴いたことのない方も、今回のアルバムを聴いて、それぞれの世界が広がっていったらうれしいです。

三上 毎日聴いても飽きない、すごく長い間聴き続けることができる、今まで聴いたことのない音楽がそこにあると思います。

●GONTITI(ゴンチチ)
ゴンザレス三上とチチ松村によるインストゥルメンタル・アコースティック・ギターデュオ。1978年結成、1983年デビュー。 現在まで制作したアルバムは40枚を超え、10数枚のアルバムは全米、アジア他でも発売されている。
案内役をつとめる、ラジオ番組『世界の快適音楽セレクション』(NHK-FM)は開始27年目を迎え、現在も高い人気を誇っている。


GONTITI
『 Two Old Pilots After Twilight 』
\3,850(Sony Music Labels)

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