
青木タカオ
あおき・たかお
青木タカオの記事一覧
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営。
茨城県つくばみらい市にある「バイク王つくば絶版車館」を徹底取材。名車の数々に囲まれ、のっけからテンション爆上がりの青木氏
お宝化した中古バイクが並ぶ〝絶版の聖地〟と呼ばれる「バイク王つくば絶版車館」。いったいどんな逸品が並んでいるのか!? モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が現地に乗り込むと、そこは幻の激レアマシンだらけだった!!
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青木 昨今、絶版バイクの人気が高まっています。特に入手困難な歴史的価値のあるレアモデルになると、驚愕の価格で取引されているんです。
――らしいですね。
青木 その最高峰のひとつが、Z2(カワサキZ750RS)で、1280万円です!
――はっ、今なんと?
青木 1280万円です。実はZ2の1973年式、600番台は初期生産、いわゆる最初期ロットにあたり、〝幻のモデル〟として極めて高い価値を持ちます。現存数を考えれば納得の価格です。ほかにも500万円超の車両を数多く取材してきました。若い頃の憧れを大人になった今かなえる。その熱量が価格を押し上げています。
黒澤 恒店長(右)も太鼓判を押すカワサキZ750RSの極上車。希少な初期モデルが持つ圧倒的なオーラに、青木氏(左)も驚きを隠せなかった
――絶版バイクは、もはやお宝なんですね。で、どこで見たんですか?
青木 茨城県つくばみらい市にある「バイク王つくば絶版車館」です。今回、カワサキのZ1こと900Super Four、ヤマハRZ350、ホンダNSR250Rといった伝説の名車にも乗ってきました。
――ファン大興奮ですね。
青木 はい、順を追って説明します。「バイク王つくば絶版車館」は、バイクファン垂涎の〝お宝バイク〟が並ぶ絶版車専門店です。
店内に入るとまず圧倒されます。何しろショールームには常時200台以上を展示。カワサキZやマッハ、ホンダCB750フォア、ヤマハやスズキのレーサーレプリカ、ネイキッドまで、すべてミュージアム級のマシンがズラリ!
店内には常時200台以上のお宝マシンが密集。ファン垂涎のラインナップが男心をガツンと刺激する
――通常の中古車店ではまずお目にかかれない名車がワンサカあるわけですね。
青木 しかも倉庫スペースには、販売前提の車両が100台以上ストックされています。その規模だけでも一見の価値があります。
――それにしてもテレビCMでもおなじみのバイク王が、なぜ絶版車専門店を?
青木 その疑問を黒澤恒店長にぶつけると、「年間10万台以上のバイクの買い取りを扱っていると、希少な絶版車も数多く入ってくるんです。その受け皿として2019年に絶版車館を立ち上げました」とのこと。
――なるほど。絶版車がガンガン集まってくると。
青木 そうなんです。現在は取材したつくば店と神奈川県茅ヶ崎市にある2拠点体制で絶版車を扱っています。
強みは仕入れ。一般的な中古車店がオークション主体なのに対し、バイク王は95%がユーザーからの直接買い取りです。年間約30万件の相談と全国70店舗超のネットワークから車両が集まります。そのため履歴の怪しい車両をふるいにかけ、質の高い個体だけを選別できるのが強みです。
――なるほど、入り口の段階で質が担保されていると。
青木 ええ。でも本当に驚いたのはその先でした。専門メカニックが整備を担当し、車両によってはフレーム単体まで分解して仕上げることもあるそうです。実際に工場を見学すると、車両は丸裸の状態から徹底的に手が入れられ、新車と見間違うほどのコンディションへと生まれ変わっていたんですよ。
――そこまでやる!
青木 絶版車はパーツ単体でも高値で取引される世界だけに、状態の良さがそのまま価値につながります。「気に入って複数台購入されるお客さまも多いです」と黒澤店長。旧車につきものの不安を減らし、安心して乗れる状態で送り出す。その積み重ねが信頼につながっているようです。
車両は専門メカニックの手でこのように徹底的に整備・点検されており、そのコンディションはすこぶる良好だ
――絶版車館は、相当な反響があるそうですね?
青木 ネットに掲載した直後から問い合わせが入ることも珍しくないそうです。
――掲載した瞬間に即反応が来るわけですね?
青木 そうなんです。来店客は50代、60代のリターンライダーだけでなく20代にも広がっています。黒澤店長いわく「若い世代は漫画やアニメ、SNS、YouTubeの影響で興味を持つケースが多いですね。作品に登場するとアクセス数が一気に伸びることもあります」とのこと。
――昔を知る世代だけのブームじゃないんですね。
青木 若い世代の熱量もかなり高いそうです。1980~1990年代はメーカーごとの個性が際立った時代でしたから、ZやRZ、NSRといった名車が若い世代には逆に新鮮に映るようですね。
――需要も高く、価格はまだまだ上昇中とか?
青木 そこにも驚きでした。「コロナ禍での高騰は落ち着きましたが、絶版車は別です。円安や海外需要に加え、あらゆる媒体の影響もあり〝伝説のバイク〟として再評価されています」と黒澤店長。
かつては海外から旧車を輸入していましたが、今では国産旧車が海外へ流れていく。さらに、不動産や高級時計のように投資対象となるケースもあるそうです。
――趣味の乗り物というだけではないんですね。
青木 ただ、市場のトレンドはシンプルです。改造車よりもフルノーマル。当時の姿を保った個体が圧倒的に人気とのこと。
つまりノーマル回帰です。カタログで見たままの姿を求める傾向が強く、遠方から購入に訪れる人も多いそうです。意外だったのは50ccスクーター、ホンダのDJ1RRです。値札を見ると60万円。走行約400kmのワンオーナー車でした。
――はっ、えっ、60万円!?
青木 私も驚きました(笑)。ヤマハTWもノーマル車が高値で人気を集めています。当時は身近だった車両にも懐かしさから需要が広がっていて、その感覚はファミコンやカセットデッキの再評価に通ずる感じですね。
――で、乗ったんですよね?
青木 試乗取材しました。まずはZ1。半世紀を経ても色あせないデザインで、セルボタンを押した瞬間、その場の空気が変わりました。まるで昭和へ戻ったような感覚です。
903cc空冷DOHC4気筒は荒々しく重厚。82馬力という数値自体は現代では突出していませんが、この時代にこの完成度を実現していたことに圧倒されます。
細いタイヤによる軽快さと頼りなさが同居するハンドリングも魅力で、回転を上げると一気に盛り上がる粗削りなフィーリングにしびれました。
カワサキ 900Super Four(通称Z1) プレミアムレンタル車はZ1A型と呼ばれる1974年モデル。丁寧な整備によって、Z1本来のスタイルと走りをしっかり味わえた
――やっぱりレべチ?
青木 別格ですね。続いてヤマハのRZ350。キック始動と同時に漂う2ストオイルの香り、甲高い排気音、鋭いレスポンスが特徴です。パワーバンドに入った瞬間の変化は強烈で、扱いやすさを超えた刺激があります。現代では味わえない世界ですね。
ヤマハ RZ350 RZ250の兄貴分として1981年に登場。45馬力を発揮する水冷2スト並列2気筒が鬼加速を生み出し、ナナハンキラーの異名も!
――最後はホンダのNSR250R SEですね。
青木 カードキー式の始動、軽量な車体、シャープなハンドリング。プロアームの機能美、乾式クラッチの機械音、Vツイン2ストの爆発的な加速。90年代スポーツバイクの完成度の高さを実感しました。70年代、80年代、90年代を代表する3台。震えるほど貴重な体験でしたね。
ホンダ NSR250R SE 1996年式のNSR250R SEは最終進化型MC28。2スト技術の集大成で最高傑作との評価も高く、このモデルを最後に生産は終了
――よく乗れましたね。
青木 実は「プレミアムレンタル」というサービスで、誰でも乗れます。日帰りで2万3900円。今では入手も試乗も難しい絶版車に丸1日乗れるので、購入前の確認としても、思い出づくりとしても貴重な体験です。
――取材をまとめると?
青木 絶版バイクは懐かしさだけではありません。世代も国境も超えた〝熱狂〟が、この市場を大きく動かしていましたよ!