ライター・井手隊長×YouTuber・SUSURU 味の進化、一杯1000円の壁、ヤフコメ炎上まで巨大化した業界の今を語り尽くす! 令和最強のラーメン対談!!

構成/井手隊長 撮影/榊 智朗

(左)ライターの井手隊長と(右)YouTuberのSUSURU(左)ライターの井手隊長と(右)YouTuberのSUSURU

ネット記事や専門誌で旬な情報を発信する井手隊長、YouTuberとして毎日動画を更新し続けるSUSURU。誰にでも味を想像しやすい食リポでおなじみのふたりが、令和のラーメン界隈を丸ごと語り尽くします!

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【自分たちが発信し続ける理由とは?】

ラーメンYouTuberの先駆者として、『SUSURU TV.』に毎日動画投稿を続けるSUSURU。

一方、経済メディアから専門誌まで年間100本以上の記事を執筆し、ラーメンを〝社会現象〟として書き続ける私、ラーメンライター・井手隊長。

日々ネットの荒波にさらされながらも、なぜわれわれはラーメン情報を発信し続けるのか。対談は、ラーメンという巨大コンテンツの〝現在地〟へと広がっていった。

――動画や記事でラーメンを紹介する際に最も気をつけていることは?

SUSURU やっぱりネガティブな表現ですね。単純に悪く言うなら、それなりの責任を自分で負わなきゃいけないと思うので。僕らみたいな発信側の役割って、ラーメンの良い部分を見つけて届けることだと思うんですよ。

井手 そこはすごく共感します。私も記事を書くときに「ラーメン界にプラスになるか」は常に考えますね。ラーメン界で炎上が起こると、それをネタにした記事依頼が毎回来る。でも、ラーメン専門のライターとしては、ラーメン業界にマイナスに働く記事は書きたくない。

ネット記事から専門誌までさまざまな媒体で記事を執筆する井手隊長。バズりやすい炎上系のネタはスルー。業界にプラスになる記事を心がけているネット記事から専門誌までさまざまな媒体で記事を執筆する井手隊長。バズりやすい炎上系のネタはスルー。業界にプラスになる記事を心がけている

SUSURU でも今、ネガティブなほうがPVが伸びやすい空気はありますよね。

井手 どのメディアもPVが稼げるからやりたい。でも私は「明るいバズり」を望みたいんですよ。SUSURUくんって、ずっとそれをやってきてるじゃないですか。

SUSURU もちろん、炎上系を扱うこと自体はありますけど、自分の意見を強くぶつけるというより、「こういうことがありました」という事実の紹介にとどめるようにしてます。

井手隊長が取材した千葉県流山市の「The Noodles & Saloon Kiriya」。食リポだけでなく店主のバックボーンも細部まで取材するスタイル井手隊長が取材した千葉県流山市の「The Noodles & Saloon Kiriya」。食リポだけでなく店主のバックボーンも細部まで取材するスタイル

【ラーメンは〝生もの〟。熱いうちに早く食べる】

――動画で発信する上で意識していることはある?

SUSURU ラーメンって〝生もの〟だと思ってるんです。店主さんが「この瞬間がベスト」ってタイミングで出してくれてる。だから撮影していても、なるべく早く食べ始めることはめちゃくちゃ意識してます。

井手 動画ならではですね。

SUSURU 食べ方もけっこう見られるんですよ。「麺を噛み切るな」とか(笑)。だから、初期から〝すすり切る〟のはかなり徹底しました。

SUSURUさんは二郎系のような極太麺であっても、途中で噛み切らず「すすり切る」プロ根性が信条。10年前に公開された第1回動画からすすり切ることを徹底SUSURUさんは二郎系のような極太麺であっても、途中で噛み切らず「すすり切る」プロ根性が信条。10年前に公開された第1回動画からすすり切ることを徹底

井手 文章は逆に文字が残るから、一語一句かなり気を使います。記事ってそれをメディアや有識者の方が読まれたり、印刷されて店に張られたりするじゃないですか。

SUSURU ああ、それはプレッシャーありますね。

井手 だから私は記事を書くときは「ラブレターを書く」感覚なんですよ。夜、ハイボールを飲みながら熱量全開で書いて、翌朝シラフで直す(笑)。

【ヤフコメとアンチが育てた〝鋼のメンタル〟】

――ネット時代の発信者は、コメントとの向き合い方も重要ですよね。

SUSURU だいぶ鍛えられました(笑)。YouTubeは毎日コメント来るんで。

井手 ヤフコメも相当ですよ(笑)。

SUSURU ラーメン屋さんって、アンチコメントと戦っちゃう人がけっこういるんですよ。でも、それは絶対良くないことなんです。

僕も自分で店をやるようになって(「北ノ醤油チーホー 水道橋店」)、Googleレビューとか見ると反論したくなるから、気持ちはめちゃくちゃわかるんです。でも、そこに思考を割くのが一番もったいないなって。

自身が店主を務めるラーメン店「北ノ醤油チーホー」も積極的にコンテンツ化自身が店主を務めるラーメン店「北ノ醤油チーホー」も積極的にコンテンツ化

井手 ヤフコメも、記事を読まずに紹介されているお店やタイトルだけで怒ってる人いますからね(笑)。

SUSURU それ、サムネだけ見て怒ってる人と同じ。結局、そういうアンチばかりだから、僕も井手さんも耐えられていると思いますね(笑)。

井手 あと、「金もらって書いてるんだろ!」も、ずっと言われます。

SUSURU 僕もです(笑)。

記事や動画をアップすると全方位から矢が飛んでくるというおふたり。共通しているのは「金もらってんだろ!」だそうです記事や動画をアップすると全方位から矢が飛んでくるというおふたり。共通しているのは「金もらってんだろ!」だそうです

井手 でも、本当にお金もらって紹介してたら、結局キュレーターとして信用なくなりますからね。確実に仕事がなくなる。最近すごく感じるんですけど、キュレーションの価値が戻ってきてません?

SUSURU ああ、わかります。

井手 私が食べ歩きを始めた頃は石神秀幸さんや大崎裕史さんのような「ラーメン評論家」が出てこられて、その後、食べログとかSNSで誰でも情報を拾える時代になった。でも今って、情報が多すぎて、「誰が言うか」が再び重要になってる気がするんです。

SUSURU ネットに情報は無限にあるけど、薄まってる。だから「この人の感覚なら信用できる」っていう軸が必要になってる気がします。

井手 『SUSURU TV.』で紹介されたから行く、という人はかなり多いと思います。

SUSURU 確かに情報を〝濃縮〟してくれる人が求められてる感じはあります。

【ラーメンは、絵として強すぎる】

――なぜラーメンはここまで巨大コンテンツになったんでしょう?

井手 十数年前、経済メディアで書くようになって驚いたんですよ。事件や事故、国際ニュースとPV競争しても、ラーメン記事は勝てるんです。

SUSURU すごいですよね。やっぱり一般においても関心度が異常なんですね。

井手 あと、ラーメンって絵が強い。これは他ジャンルのライターにも言われます。「カレーはだいたい茶色い。でもラーメンは全部違う」「餃子は全部包まれちゃってるけど、ラーメンは絵が強くてうらやましい」って(笑)。

SUSURU スープのバリエーションのほかに油や具材もある。サムネで並んだときのワクワク感は段違いですよ。

井手 しかも1000円前後で楽しめて、食べ歩き趣味として成立してる。

SUSURU 東京なら、どの駅にも必ずといっていいほどうまい店がありますからね。

【「1000円問題」を誰が説明するのか?】

井手 私も『ラーメン一杯いくらが正解なのか』(ハヤカワ新書)という本で扱いましたが、ラーメンってちょっとでも値上げすると異常に叩かれるんですよね。

SUSURU 「ラーメン1000円の壁」問題ですね。

井手 でも、それをラーメン屋さん自身が説明すると炎上しちゃう。だからわれわれのような外側の人間が、「なぜ高くなるのか」を説明していったほうがいいと思うんです。

SUSURU 最近思うのが、家系とか二郎系みたいに「おなかいっぱい食べられる」なら1200円でも納得される気がするんですよ。

井手 なるほど。

SUSURU 〝ボリューム〟がトレンドなんじゃないかと思ってて。「ちゃん系」とかもそうだけど、「麺が多い」「スープなみなみ」「ご飯無料」みたいな。結局みんな、満足感を求めてるんじゃないかなと。

井手 確かに高額だと高級路線に行きがちだけど、量の満足感で解決する方向もあるでしょうね。

【新店をナンバーワン!と言い切る勇気】

井手 誰よりも早く新店を紹介するときって、けっこう緊張しない?

SUSURU オープン直後に「今年ナンバーワンかも」とか言うのって、けっこう勇気いりますよね(笑)。

井手 そうそう。まだみんなが「うまい」って言ってない店を、自分は「これはすごい」って出すわけだから。

去年、東京・駒込の「らーめん3000」のオープン2日目に「今年トップクラス」ってYahoo!ニュースに書いたら、めちゃくちゃ反応が来て。

SUSURU 「何言ってんだこいつ」みたいな(笑)。

井手 それこそ「金もらってんだろ!」ってね(笑)。最終的にちゃんと評価されたから良かったんだけど。ただ、最初に出すときはやっぱりグッとくるものがある。

SUSURU オープン直後でそこまで言い切るって、かなり大風呂敷を広げることになるから。

井手 でも、そこでモゴモゴしてたらダメでもあるんだよね。「今年トップかもしれない」って思ったなら、ちゃんと言わなきゃいけない仕事でもあるから。

【お店を紹介する責任とは?】

井手 この前、ある店主さんが「井手さんの記事でちゃんと伝えてほしい」って、ちょっと涙ぐみながら話してくれて。「自分の店を正しく知ってほしい」っていう思いを、こっちに託してくれてる感じがしたんだよね。改めて責任のある仕事なんだなと感じた。

SUSURU それはプレッシャーありますね。

井手 SUSURUくんの紹介の仕方ひとつで、来月の売り上げに影響するかもしれない。

SUSURU そこはあまり考えすぎないようにはしてますね。「店主さんだけじゃなくて、そのご家族の生活もあって......」とか考えると動画にできなくなっちゃうんですよ。だから、あんまり入り込みすぎないようにしてます。でも井手さんは、ひと言ひと言をすごく精査してる感じがする。

井手 僕のは、ラブレターだからね(笑)。

SUSURU 「動画が出て売り上げが上がりました」って言ってもらえることは、本当に多いんですよ。

井手 「『SUSURU TV.』に出た後」が、店のターニングポイントだったって話、取材でもめちゃくちゃ聞く。

SUSURU でも、そこを背負いすぎると、メンタルやられちゃうんですよね。

井手 なるほど。

SUSURU だから僕は、「ラーメンを楽しく食べる」っていう最初の気持ちをなるべく忘れないようにしてます。「責任を背負って業界を変える」っていうより、まずは自分がラーメンを好きでいること。そこを崩さないようにしたいんですよね。

井手 その「力を抜く感覚」って、実はすごく大事なんだろうね。

【ラーメンの進化はまだ止まらない】

――今後、ラーメンはどう進化していく?

井手 まだまだ進化すると思います。ラーメン業界って、「みんなで巨大な道をつくってる感」があるんですよ。

SUSURU わかります。それぞれが別方向に道を延ばしてるけど、結果的に全部つながってる。

井手 ラーメンって、まだ年表が更新され続けてるんですよ。今のラーメン店さんは歴史の主役ですね。

SUSURU 本当にそうです。

――最後に、おふたりにとってラーメンとは?

SUSURU もうシンプルに、「ラーメン食いてえな」ですね(笑)。本当にそれだけ。

井手 本当にそう(笑)。

SUSURU おいしくなかったら、この仕事絶対やってないですよ。

井手 ラーメンって、今や国民食以上の存在。食べ物であり、コンテンツであり、コミュニケーションでもある。

SUSURU だから面白いんですよ。こんなに人が熱狂する食べ物、なかなかないです。

井手 動画でも活字でも、結局やってることは同じなんですよね。ラーメンって面白いよ、って伝えたい。

SUSURU そうです。もっとライトな人にも、「ちょっと食べに行ってみようかな」って思ってもらえたらうれしいですね。

●井手隊長 
ライター。年間600杯を実食し、記事を100本以上執筆するラーメンライター。話題店、町中華からカップ麺まで幅広く取材。新刊『ラーメンビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)が発売中。

●SUSURU 
YouTuber。2015年にYouTube『SUSURU TV.』を開設、それ以降ほぼ毎日チャンネルを更新。今年は東京都千代田区に「北ノ醤油チーホー 水道橋店」をオープン、ラーメン店店主としてデビュー。

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