本場のキムチが大ピンチ! 近年、韓国では自国産のキムチに代わって、価格の安い中国産キムチが市場を席巻(せっけん)している。一方、韓国から中国へのキムチの輸出は年々減り続け、昨年はついにほぼゼロ……。

キムチの母国で勃発した、仁義なきキムチ戦争。両国の食品問題に詳しい中国人ジャーナリストの程健軍(チェンジェンジュン)氏はこう話す。

「事の発端は2005年、韓国で中国産キムチから寄生虫の卵が発見されたこと。これをきっかけに、韓国当局は中国のメーカーに対し、寄生虫卵の残留検査などの対策を義務づけました。

しかし、この事件を受けて逆に中国側が輸入した韓国産キムチを調べてみると、こちらも大腸菌や寄生虫卵を大量検出。激怒した中国当局は、『100g当たりの大腸菌数が30個以内』という輸入キムチの衛生基準を厳格化。締めつけも年々厳しくなり、ついに韓国側は輸出が不可能になったわけです。

一方、中国は今や世界一のキムチ生産国。韓国市場でも、韓国産が1kg約300円なのに対し、中国産は約70円と激安なため、ほとぼりが冷めてからは順調にシェアを伸ばしています

大腸菌とか、寄生虫の卵とか……どっちもおかしいだろ!

「落ち着いて(笑)。発酵食品であるキムチは、基本成分の乳酸菌に加えてさまざまな菌が混入することで、酸味や苦みなどの個性が出るといわれます。ゴム手袋を使ったり、きちんと消毒した手で漬け込んだものは味に深みがありませんし、材料の野菜も洗剤でキレイに洗うと菌が死んでしまいます」(程氏)

食べ頃になると安全度も増す?

……だからって、手も野菜も洗わないってのは……。

「それに、韓国キムチが検査をクリアできないのには理由があります。キムチは発酵が進んで乳酸菌が繁殖していくと、大腸菌などほかの菌はどんどん殺菌される。食べ頃になると安全度も増すわけです。

しかし、韓国から中国に輸出されるキムチは、検査後に各地へ陸路で運送されるという事情があるため、消費期限を考えると生産後すぐに輸出する必要がある。この段階では発酵が不十分なので、多くの大腸菌が検出されてしまうわけです。ちなみに韓国から日本が輸入するキムチは、発酵が進んだ後に空輸されているので、殺菌も進んでいます」(程氏)

ユネスコの無形文化遺産登録が決まった韓国キムチも、実際には中国に生産量世界一の座を奪われ、「不潔だ」と決めつけられ、八方ふさがりなのだ。

結局、すべては中国側のさじ加減次第……。とにかく日本に輸出するキムチだけは、ちゃんと手も野菜も洗ってから漬け込んでください。マジで味より安全性優先を!

(取材/近兼拓史)