広島東洋カープ4連覇、そして悲願の日本一への抱負を菊池涼介が語る

■丸のヒット性の当たりを捕る

昨年、セ・リーグ3連覇を果たし、今や常勝軍団となった広島東洋カープ。だが、オフに不動の3番打者、丸佳浩が巨人にFA移籍。精神的支柱としてチームを支えた新井貴浩も引退し、戦力ダウンは必至だ。

そんななか、カープの松田元(はじめ)オーナーは今季の「キーマン」として菊池涼介を指名。その期待は今まで以上に高まることになる。

4連覇、そして悲願の日本一への抱負を菊池が語った。

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──丸選手も移籍し、今季のカープについては「戦力ダウン」と見る向きが強いようですが。

菊池 戦力は間違いなくダウンしていると思います。でも、それはピンチでもあるけれど、チャンスでもある。ポジションに空きが出て若い選手にチャンスができるし、その選手たちが活躍すれば、チームに勢いが出る。カープもより一丸となれますしね。みんなでカバーし合わなければならないと思ってます。

──戦力ダウンと言われて、逆に燃える部分もある?

菊池 そういうことはないかな。ただ、3連覇で他球団のマークも厳しくなるので、個々の力だけじゃ絶対に優勝はできないと思います。それはこの3、4年肌で感じていることなので。「個人」ではなく、「一丸」とか「家族」。そういうイメージでシーズンを戦い抜くことが一番大事だし、そこしか考えてないです。

──移籍した丸選手とはどんなやりとりを?

菊池 いや、あえて連絡は取ってないですよ。いろんなことを言われたり、環境が変わったりして今が一番大変だと思うので。また、シーズンが始まれば、話したりご飯にも行くようになるでしょうし。

──立場を考えてあえて距離を置いていると。

菊池 そっとしてます(笑)。彼ならどんなところに行っても必ずやれると思っていますし、慣れてくれば自然体の丸が出てくると思う。

──今季からは敵同士になりますが、丸選手のヒット性の当たりを捕ってやろうという思いは?

菊池 全然ありますよ。紅白戦で対戦したこともあるし、ずっと近くで見てきて、どういう打ち方をするかもわかってますからね(笑)。

■新チームリーダーはグイグイいく

オフにはチーム最高年俸にもなり、今季はチームリーダーとして期待される菊池。彼はこれまで「人とぶつかり合って人間関係を築いてきた」と公言するほど、他者との衝突を恐れない。

高校、大学時代には指導論をめぐりコーチと、とことんバトルを繰り広げ、プロ入り後もコーチと衝突。そこに「妥協」の二文字はない。だが、その後、衝突した人物とことごとく仲良くなってしまうあたりは、この男の人徳といえそうだ。

──なぜ衝突も恐れず、相手が指導者でも臆せずに意見が言えるのでしょうか。

菊池 野球も昔とは変わってきているので、間違っていることは間違っていると言わなきゃいけない。「ボールは全部、正面で捕れ」とか、「両手で捕れ」と言われますけど、実際の試合ではそんなことをしていたらアウトにならないケースもある。

チームにはそう思っていても言えない人もいるので、僕がコーチに歩み寄って「こうなんじゃないですか」と言うことで変わっていけばいいと思うんです。

──普通は一度、ぶつかってしまうとその後、険悪なムードのままというケースも多いと思うのですが。

菊池 僕はないですね。バトルした後も構わず、その人のところにグイグイいくので。もちろん、自分から謝りに行くこともありますよ。まぁ、その後も僕は変わらないですけど(笑)。

別に衝突すること自体が悪いわけじゃないし、そこからわかり合えるものがあるから、その後、仲良くなれるんだと思います。昔から先輩からは「おまえは本当に相手の懐に入るのがうまい」とよく言われました。

──「菊池はこういうヤツだから仕方ない」と周囲も受け入れているんでしょうか。

菊池 それはもう、相手に聞いてもらわないとわからないですよ(笑)。

■「メジャーでは僕レベルの選手はザラにいる」

その華麗でアクロバティックな守備から「日本球界屈指の二塁手」と呼ばれる菊池だが、気になるデータもある。14年に補殺(野手がアウトを成立させた際につく記録)でプロ野球記録となる535をマークしたものの、昨年はこれが420まで減少。

これは肉体の衰えなのか? また、昨年の契約更改の席で球団に近い将来のメジャー挑戦を直訴したが、「メジャーで通用する内野手」についてどんなイメージを持っているのか?

──個人成績で見ると、昨年は納得のいくシーズンではなかったと思いますが、体のコンディションに問題があったのでしょうか?

菊池 どうだったかな......。大きいケガはなかったと思いますよ。でも、プロで五体満足でやっている選手なんて1%いるかいないかでしょう。どこかしら痛くなるのが普通なので。

──守備では菊池選手が気にしているという補殺数がかなり減っています。

菊池 気にしているといっても補殺はピッチャーありきの記録なので。マエケン(前田健太)さん(現ドジャース)や黒田(博樹)さんみたいな、コントロールがいいピッチャーがいると補殺は自然に増えるんです。

でも、今はうちのチームにコントロールのいいピッチャーが少ないので、(打球の方向について)自分の予測と外れることが多くて。それにうちのピッチャーはピッチャーゴロを捕るのが得意じゃないんですよ。

──どういうことですか?

菊池 打球をよけたりして、ゴロがピッチャーの股の下を抜けることが多いから、僕もショートの(田中)広輔も、自然と二塁ベース方向に寄ってしまうんです。そうすると一、二塁間が広くなって、そこを打球が抜けていってしまう。その現象は正直、去年はいっぱいありました。

──ピッチャーの守備力によって、ポジショニングが変わってしまったと。

菊池 意識がずっと(セカンド方向に)寄ってしまってたことで守備範囲もだいぶ狭まったんじゃないですかね。だからピッチングコーチには「(ゴロを捕る)練習してください」って言いました。このあたりはキャンプでも言っていこうと思ってます。

──オフには球団にメジャー行きを直訴されました。昨今は「日本人内野手はメジャーリーグで通用しない」とよくいわれますが、そのあたりはどうお考えですか?

菊池 どうですかね。しないんじゃないですか。

──しない?

菊池 わからないです。向こうの選手とは体もパフォーマンスも全然、違う。僕も守備は日本では上のほうだといわれてますけど、メジャーでは僕レベルの選手はザラにいると思うんです。だから正確さとか、彼らにないところで上回らなければ勝てないんじゃないかなと。

──天然芝と人工芝の違いもありますか?

菊池 メジャーは日本以上に球場によって芝の長さも土の硬さも全然違うでしょうし、こればかりはやってみないとわからない。ただ、日本の球場の中で一番難しいのはマツダスタジアムだと思います。芝が長いときはボールが躍るし、雨の日は打球も全然違うので。

──菊池選手でいうと、捕ってからの速さが年々速くなっているように見えます。

菊池 そんなに意識はしたことないですけどね。

──曲芸みたいに捕ってから速いので、お手玉なんかも上手なんじゃないかと(笑)。

菊池 お手玉は......3つまでですね(笑)。

──最後に、今年の意気込みをお願いします。

菊池 やっぱり日本一になりたいですね。去年は新井さんの引退に花を添えられずに不完全燃焼でしたし、ファンには「リーグ優勝はしたけど日本一にはなれなかった」という思いをもう3回もさせてしまった。

リーグ4連覇も難しいことですけど、やっぱり時代をつくっていかなきゃいけない。それと、ずっとパ・リーグが強いっていわれているのでセ・リーグの意地も見せたいですね。

●菊池涼介(きくち・りょうすけ)
1990年3月11日生まれ、東京都出身。28歳。武蔵工大二高から中京学院大学を経て、12年ドラフト2位で広島に入団し、13年に二塁のレギュラーを獲得。14年にはシーズン最多記録の535補殺を記録し、16年には最多安打も獲得。身長171㎝、体重69㎏