日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『京都ALS患者嘱託殺人事件』をレビュー!

日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。話題作『マミー』監督が医師による難病患者の殺人を追ったドキュメンタリー!
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『京都ALS患者嘱託殺人事件』

評点:★3点(5点満点)©『京都 ALS 患者嘱託殺人事件』製作委員会©『京都 ALS 患者嘱託殺人事件』製作委員会

個人の尊厳が制度に押し潰されるとき

ALS(筋萎縮性側索硬化症)が進行し、身体の自由がほぼなくなってしまった女性が、ネットを通じてとある医師に依頼して薬物を投与してもらい、本人が希望する形で死ぬことができた、という事件は大きく世間の耳目を集めたし、その後の展開にも驚愕せざるを得ない部分があったが(これについては劇中でも描かれるので伏せておく)、本作は分かりやすい価値判断を避けつつ、事実関係を追う形で進行する。

随所に挟み込まれる関係者や、類似の疾病を抱えた当事者のインタビューも極めて興味深い。

そこに浮かび上がるのは、本来、人を救うために構築されたはずの医療や介助や福祉のシステムが、苦痛と恥辱と絶望を強化する装置と化してしまっている状況である。

生命と倫理にまつわる問題を処理できる「システム」などというものが本当に構築可能なのか?

という問いかけがなされて然るべきだとは思うが、なんらかの「システム」抜きに現実の疾病に対応することはできないということもある。

本作は単純な「答え」を提示する映画ではないが、個人の尊厳と制度がもたらす規制が拮抗したとき、どちらを優先すべきか、ということについての回答は自明のように思われる。

STORY:ALS患者女性の依頼で、医師が彼女を安楽死させた事件に焦点を当てたドキュメンタリー。映画『マミー』の二村真弘監督が被害者や加害者の関係者、専門家を取材。未公開DMや双方の半生から、制度の未熟さと事件の深層を描く

監督:二村真弘
声の出演:田畑智子ほか
上映時間:98分

全国公開中

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