
山本萩子
やまもと・しゅうこ
山本萩子の記事一覧
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。
今年のMLBのオールスターウィークが終わりました。
本当に見どころが多かったのですが、まずはホームランダービー。村上宗隆選手も9本塁打と立派な結果を残すなど、すごく盛り上がりましたね。決勝は、本拠地フィラデルフィアの大声援を受けたフィリーズのシュワバー選手が先に11本を記録するも、カージナルスのウォーカー選手がアウェーの中、怒涛の連続アーチ。12本塁打を放って逆転優勝するという劇的な展開になりました。
メジャー、ひいてはアメリカという国では「ホームランこそが正義なのだ」と感じることがあります。野手に触れられることなくボールがスタンドに入ることに、人々は熱狂します。だからこそ、どこの球団も強打者を欲しがりますし、アメリカで大谷翔平選手が大人気なのも、二刀流のすごさはもちろんですが、ホームランバッターとして評価されている点も大きいと思います。
オールスターウィークではMLBのドラフト会議も行なわれました。そこで注目を集めたのが、佐々木麟太郎選手。佐々木選手は、フィラデルフィアで行なわれたドラフト会議2日目に、マーリンズから8巡目(全体235位)で指名を受けました。
昨秋のNPBドラフト会議では、ソフトバンクから1位指名されています(DeNAも1位で指名したが、抽選でソフトバンクが交渉権を獲得)。花巻東高校出身の佐々木選手は、高校通算140本塁打というすさまじい記録を残し、メジャー行きを夢見てスタンフォード大学に進学。それから2年間、アメリカ屈指の強豪ぞろいのリーグでプレーを続けてきました。
8巡目という順位について、「決して評価が高いとは言えない」という声もあります。メジャーでは、10巡目以内で指名された選手のほとんどが契約に進みます。下の順位になるほどメジャーでプレーするまで険しい道のりとなりますが、かつて8巡目で指名された選手では、ゴールドシュミット選手のように大打者になった例もあります。
佐々木選手には、マーリンズに入団する、ソフトバンクに入団する、スタンフォード大学に残る、という3つの選択肢があります。マーリンズとの交渉期限は、現地時間7月27日の17時で、ソフトバンクとの契約締結の期限も今月末に迫っているため、まさに今が決断の時です。
メジャーの道を選んだ場合はマイナーリーグからの挑戦になりますが、その場合、環境としては決して楽ではないと言われています。ただ、そこで結果を残していけばメジャー昇格が待っています。今年ホワイトソックスでメジャーデビューを果たした西田陸浮選手も、ドラフト11巡目(全体329位)から昇格を勝ち取ったひとりです。
原稿執筆時点では、マーリンズ濃厚との報道が流れていますが、今回の件は野球界において、さまざまな可能性や選択肢を見せてくれる出来事となったように感じます。
ソフトバンクの育成環境の充実ぶりも話題を呼びましたね。佐々木選手も福岡県筑後市にあるファーム施設を訪れて、天井の高さ23m、広さ約5800平方mという国内最大級の屋内練習場を見学しました。
練習場には最新鋭の打撃マシンや、データサイエンス室もあって、興味を示した佐々木選手はスタッフに積極的に質問したそうです。一軍の試合を観戦した際には、「ここでなら本当に、充実した野球生活を送れるんじゃないかな」と感想を口にしたそうです。
ソフトバンクはポスティングシステムでの移籍を認めていませんが、佐々木選手の強いメジャー志向を理解した上で、柔軟に対応することも考えられたかもしれません。恵まれた環境と試合の中でじっくり力をつけていくという方針ですね。
また、大学に残った場合は、そこでさらに成長し、数年後のMLBドラフトで上位指名を目指すという選択肢もありました。
佐々木選手の代理人は、マーリンズからの指名と、ソフトバンクとのこれまでのやりとりもふまえて判断するとのことですが、もともとメジャー志向が強かった佐々木選手の気持ちは、マーリンズに傾いているのでしょうか。どんな最終決定を下すのかが今から楽しみです。
さて、佐々木選手と同じように、アメリカと日本の両方から指名を受けた石川ケニー選手もいます。昨秋にオリックスから6位指名を受け、MLBドラフトではレッズから13巡目、全体392位で指名されました。
若武者たちがどんな決断を下すのか。日本球界にとってもメジャーにとっても、注目の決断はもうすぐです。