『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』鈴木ゴータ編・前編「妹の死をきっかけに写真を始め、父の死で写真の道で生きる決意をしました」

取材・文/とり 撮影/小谷田


あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していくインタビュー連載が、週プレ創刊60周年を記念して復活。第七弾となる今回は、天羽希純写真集『きすみすき』や、8月24日(月)発売『週刊プレイボーイ36号』で十味&岸みゆ&姫野ひなの(#Mooove!)のコラボグラビアを撮り下ろした鈴木ゴータさんが登場です。

前編では、鈴木さんが写真を始めるきっかけとなった家族の死や、映像関連会社、ブライダル会社を経て、夢に向かってもがいた時期についてのお話をお聞きしました。

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*  *  *

――今日はご自宅にお邪魔していますが、猫とインコを放し飼いされているんですね。すごく賑やかです。

鈴木 動物が好きで。猫はもう20歳になるんですが、子猫のときに捨てられていたのを拾ったんです。僕の人生の半分を共にしている相棒のような存在です。インコはもともと妻が飼っていました。取材中、飛んでくるかもしれませんが、ご了承ください(笑)。

早速飛んできたクーちゃん早速飛んできたクーちゃん
――分かりました(笑)。このインタビューでは、カメラマンさんの生い立ちからお聞きしています。鈴木さんはどちらのご出身ですか?

鈴木 愛知県名古屋市です。兄と妹がいて真ん中の子どもだったので、結構お調子ものだったと思います。兄弟の中でも、いちばん僕が母親に叱られていました。でも、普通の子供でしたよ。外で遊ぶのが大好きで、友達と児童館に行っては、ドロケイやローラースケート、竹馬で遊んでいました。

――活発な男の子だったんですね。

鈴木 ただ中学2年生の夏に、3つ下の妹が病気で亡くなったんです。小学校低学年の頃に足に骨肉腫が見つかり、癌と診断され、その時点で余命宣告をされていたそうなのですが、僕は子供だったので、病気のことは詳しく聞かされていなくて。結果的に余命より2年ほど長く生きられたのですが、3年くらいずっと入院している姿を見てきたので、亡くなったときはショックが大きかったです。

――多感な時期に家族の死を経験されたんですね。それはお辛かったと思います。

鈴木 しばらく塞ぎ込んでしまって、学校にも行けなくなってしまいました。そんなとき、祖父が僕にカメラをくれたんです。ヤシカの2眼レフ、CONTAXとオリンパスのコンパクトカメラの3台です。もともと祖父の趣味だったんでしょうね。妹の死をきっかけに、母は日本舞踊、兄は美術デザインと、それぞれ前を向くために新しいことを始めていたので、僕にも何か始めてほしいと、カメラに触れることで少しでも外の空気を吸ってほしいと、与えてくれたんだと思います。実際、分からないなりに、海や空など、さまざまな景色を夢中になって撮りに出かけるようになりました。いずれは無くなってしまう気持ちや時間、空気みたいなものを残しておきたい、という気持ちに駆られていたんだと思います。

――それがカメラに触れる最初のきっかけだったんですね。

鈴木 中学を卒業する頃には、もっと写真について学びたいと思うようになっていました。ただ、塞ぎ込むようになってから全く勉強に身が入らなくなり、成績も悪かったので、進学できそうな高校がほとんどなくて......。結局入れたのは、当時の名古屋で1、2を争うヤンキー校。ヤンチャな友達が増え、写真も撮らなくなってしまいました。

――そうだったんですね。

鈴木 そんなときに、映画の『パッチ・アダムス』と『トゥルーマン・ショー』を見て、運命に抗いながら懸命に生きる姿に、すごく感銘を受けたんです。それを機に、僕も映画を撮りたい、映像の道に行きたいと思うようになりました。高校卒業後は、東京のデザイン専門学校に進学した兄を追う形で上京。映像の専門学校に進みました。

――映像の道に進まれたんですね。在学中は、自主映画を制作されたりしたんでしょうか。

鈴木 いや、そこまでは出来なかったです。カメラから音声、シナリオの作り方まで、映像技術を満遍なく学べる学科だったのですが、実践的なことは何も学べなかったんですよね。当時はまだ就職氷河期が残っていたこともあり、卒業後は1年半ほど就職浪人をして、映画ではなく映像関連の会社に就職しました。そこでは放送局や映像制作会社に対して機材の販売や施工をしていました。いわゆる営業職です。かろうじて映像業界ではありましたが、本当は映像クリエイターになりたかったので、もう全然違う道ですよね(笑)。

――何者かになろうとはしているけど、何かがズレているのか、なかなかうまくいかないといった感じですね。

鈴木 今ほどインターネットもない時代ですから。自分が本当に必要としている情報に、なかなか辿り着けなかった結果だと思います。そして、就職して3年ほど経った頃、父が癌で亡くなったんです。父は生前「鈴木コージ」という名前で、デザイナーとして絵を描く仕事をしていました。妹が亡くなったときも、写真を撮りに出かける僕の姿を絵に描いて、プレゼントしてくれました。その絵を見て自分の人生を見つめ直したとき、やっぱり写真の道に進もうと、改めて決意が固まりました。

――妹さんの死をきっかけに写真を始め、お父さんの死をきっかけに写真の道で生きる決意をしたと。ちなみに「ゴータ」というのは、お父さんのイラストネーム「コージ」から来ているのでしょうか。

鈴木 そうです。父へのリスペクトもありますが、父の作品って、ネットで検索してもほとんど出てこないんですよ。それが悔しくて。僕が活躍することで父の作品が日の目を浴びるといいな、という思いもあり、「鈴木ゴータ」として活動しています。父からもらった絵は今も額装して大事に取ってあります。思い悩んだときは、この絵を見て、初心に返らせてもらっていますね。間違いなく、僕の原点です。

――写真の道に進むと決めてからは、具体的に何をされたんでしょう。

鈴木 ブライダル会社に就職しました。というのも写真はずっと独学だったので、どうすれば仕事になるのか、何も分からなかったんです。専門学校へ行くにもお金がなかったし......。写真を学びながら働ける場所を探したところ、選択肢に上がったのが、ブライダルカメラマンと子供の写真館でした。ブライダルを選んだのは、直感的に、子供より大人を撮るほうが写真の技術が身に付きそうだと思ったからです。ただ、ブライダルカメラマンは、結婚式やその前撮り、つまり人生の思い出を撮るのが仕事なので、求められる構図やシーンのフォーマットがほぼ決まっているんですよね。それがだんだん窮屈に感じるようになったので、3年ほど会社専属のカメラマンとして実績を積んだのちに、フリーランスとして独立しました。とはいえ結婚式はだいたい土日。平日に行われる前撮りは社内のカメラマンを使うことが多いので、仕事はあまり安定しませんでした。アルバイトをしたり、友人のつてで舞台やライブの映像を撮ったりしつつ、何とか生計を立てていました。そんなときに、『コマーシャル・フォト』(玄光社)という雑誌があることを知るんです。

――カメラマンの求人も載っている、写真専門誌ですね。

鈴木 写真の道で生きると決めて既に4年経っているので、だいぶ遅いのですが(笑)。『コマフォト』を読んで、具体的なカメラマンの仕事や、プロのカメラマンのアシスタントに付けるということを知り、一気に世界が広がりました。で、実際に色々応募してみるのですが、スタジオマンの経験がないからと、軒並み断られまして......。唯一拾ってくださったのが、西田幸樹さんでした。失礼ながら、調べるまで西田さんがどんな写真を撮っておられるか知らなかったのですが、自分の作品を持って面談に行ったら、翌日に電話がかかってきて「キミに決めた!」と言われたんです。ポケモンじゃないですけど(笑)。

――本当にそうおっしゃったんですね(笑)。

鈴木 はい。忘れもしません。ちょうど募集をかけていた時期で、僕は11人目の面談だったそうなのですが、先ほど話したような写真を始めた経緯をお話ししたことで、こいつなら何かやれると思っていただけたようです。すぐアルバイトを辞めて、西田さんのもとに行きました。

――『コマフォト』をご覧になって世界が広がったと伺いましたが、当時はカメラマンとしてどんなお仕事がしたいとイメージされていたんでしょう? 西田さんはグラビアやヌードの現場が多いかと思いますが。

鈴木 具体的に自分がどんなふうに仕事がしたいかまでは、正直あまり考えていませんでした。フワッとしていましたね。ただ、僕もブライダル業界で花嫁さんを撮っていましたから。グラビアという文化には疎(うと)かったですが、女性を綺麗に撮ることに関しては、もっと追求したいと思っていたので、そういう意味で西田さんの写真に惹かれた部分は大きいですね。

後編は9月27日更新。お楽しみに!
 

●鈴木ゴータ(すずき・ごーた) 
1985年生まれ、愛知県名古屋市出身。
趣味=ギター、サイクリング 
家族の死をきっかけに写真を始める。ブライダルカメラマンを経て、2012年11月に西田幸樹のアシスタントになり、2017年3月にフリーカメラマンとして独立。『鈴木ゴータ写真事務所』を立ち上げる。同年に島田晴香PHOTOBOOK『そんな生き方』(竹書房)の撮影を手がけたのを機に、グラビア誌やアイドル写真集を多く手がけるようになる。他、広告やファッション、映像の分野でも活動している。

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