市川紗椰が紹介する注目のフードコートたち「テンションが上がるやりたい放題な空間」

阪神百貨店スナックパークに行く前、大阪中之島美術館の「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展」で阪神百貨店スナックパークに行く前、大阪中之島美術館の「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展」で

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「フードコート」について語る。

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フードコートは少し不思議な場所。ラーメンを食べている隣でカレーを食べている人がいて、その向こうではクレープを食べている。「一緒にいる」ことと「同じものを食べる」ことを切り離したことこそ、フードコート最大の発明かもしれない。なぜかテンションが上がるフードコートというやりたい放題な空間、大好きです。

日本では1980年代以降、スーパーや郊外型ショッピングセンターの成長とともに定着。家族それぞれが好きなものを選べて、安くて早い。子供連れでも、ひとりでも入りやすい。その気楽さが見事にハマったのでしょう。

一方、全国どこに行っても似たチェーン店が並び、「便利だけれど、その土地らしさはない」というイメージも。その反動のように、2010年代以降、存在感を増したのがフードホール! フードコートとの境界は曖昧ですが、違いは「店を集める」から「店を選んで編集する」に移行したことだと思います。

地元の人気店、個人店、専門店、シェフなどを組み合わせ、内装や音楽、バー、イベントまで含めてひとつの体験をつくる。昔は「買い物のついでに食べる場所」だったのが、今ではそこへ食べに行くこと自体が目的になった。おしゃれー。

個人的に注目しているフードコートをいくつか。まずはインターナショナル系。埼玉・八潮の「ナショナルマート&ハラール屋台村 八潮スタン」は、ハラール食品スーパーと飲食空間が一体になった施設で、多文化の日常がそのまま見える。

池袋の「友誼(ゆうぎ)食府」も、いわゆるガチ中華フードコート。中国食品スーパーの奥に中国各地の料理が並んでいて、観光客向けというより、日本で暮らす外国人の食文化にこちらがお邪魔する感覚がある。メニューが解読できず、食べたらわかるだろう、と思って雰囲気で頼んで、完食してもなんなのかわからない炒め物をいただきました。

次は乗り物系フードコート(!?)。東京競馬場には数え切れないくらいの飲食店が並んでいて、「馬そば 深大寺」の立ち食いそばや、名物の大穴ドーナツなどが楽しめる。食事をする人の視線の先にはレースがあって、普通のフードコートと違い、全員が同じ瞬間に一喜一憂する特殊な体験ができます。

3年前にリニューアルした阿蘇(あそ)くまもと空港も面白い。新旅客ターミナルには熊本の食を集めた飲食ゾーンがあり、馬肉、熊本ラーメン、あか牛などがそろう。空港飯が、単なる「搭乗までの時間潰し」ではなく、旅の最後に熊本をもう一度味わう場所に! 全ゲートとフードコートがシームレスにつながってる構造も便利。

大手モールで印象的だったのは、佐賀県の「ゆめタウン武雄(たけお)」。熊本発の"とりと玉子の専門店"「とりモット」が、地元・武雄の養鶏場の卵を使う。全国均一になりがちな巨大モールの中で、突然「近所の卵」が出てきます。フードコートがその土地と再接続。

ほかにも、おしゃれ系の「五反田食堂」や、立ち食い専門の阪神百貨店「スナックパーク」など、いい感じのフードコートがたくさん。多様性は増してるけど、呼び出しベルが鳴るまでのあの数分間のソワソワは変わりません。

●市川紗椰 
米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。フードホールは好きだけど、作られた感じのネオ横丁は少し苦手。公式Instagram【@its.sayaichikawa】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!

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