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7月末のトレード期限まで3週間を切った。打撃力不足に頭を抱える球団、先発の頭数が足りない球団など、セ・パ各球団の補強ポイントに合致する即戦力を一挙紹介!
※成績はすべて7月6日現在
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ペナントレースを左右する夏のトレード戦線。ネット上では日々、無数の「妄想トレード案」が飛び交っているが、実際にトレード要員となる選手には、はっきりとした条件がある。
現役投手を指導するピッチングデザイナーで『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏は、市場を見る上での「大前提」をこう説く。
「多くのファンは『他球団のあの選手が欲しい』と、自分目線だけで語りがちです。でも肝心なのは、才能があるかどうかではなく、保有する側に手放す合理性があるか。獲得側がどれだけ欲しくても、売る必要のない選手は市場に出てこないのです」
お股ニキ氏は、しばしば候補に挙がる選手について、「非現実的」と指摘する。
「例えば、巨人の門脇 誠。ショートでまともに守れて、市場に出てきそうに見える選手は今や門脇くらいしかいません。だからこそ他球団は狙っているかもしれませんが、巨人が安売りする理由はない。
ロッテの松川虎生(こう)も、高卒1年目から谷繁元信を思わせる天性の守備力を見せてきた若手捕手だけに、『他球団が欲しい選手』ではあっても、『市場に出てくる選手』ではない。トレード実現には相応の対価が必要でしょう」
一方、立ち位置の微妙な選手が候補になるかといえば、一概にそうとは言い切れない。
「『シーズン終了後に戦力外になりそうな選手なら、今、対価を払ってまで取りにいかず、オフまで待てばいい』と考える球団も。だからこそ、シーズン途中のこの時期にトレードされる選手はただの余剰戦力ではなく、対価を払ってでも獲得したい『くすぶっている逸材』なのです」
リアルに市場に出てきそうな選手は誰なのか? まずは野手について探っていこう。
今季も投高打低の傾向が続いているが、とりわけセ・リーグでは巨人、ヤクルト、広島、中日が、右の中軸打者や一塁手、左翼手の打撃力不足に頭を悩ませている。来季からのDH制導入を見越して、打力のある選手を抱えておく価値はさらに増しそうだ。
今川優馬(日本ハム/外野手) 2軍で打率.287、5本塁打の日本ハム・今川。外野手が飽和状態のため、セ球団が狙いそうだ
「セの球団にとって、パで出場機会に恵まれない中距離打者は格好の標的です。筆頭は今川優馬(日本ハム)。今季は2軍で打率.287、長打率.500、5本塁打と結果を出していますが、日本ハムは外野手とDHの競争が激しく、出番が少ない。巨人、ヤクルト、広島は積極的に狙いたいです」
同じく日本ハムのアリエル・マルティネスも、フランミル・レイエスの活躍で出番が減っている選手だ。
アリエル・マルティネス(日本ハム/捕手) 2軍で5本塁打の日本ハム・マルティネス。「セで再生しうる」とお股ニキ氏も太鼓判を押す存在だ
「アリエルは1軍では打率.147と沈んでいますが、2軍では打率.419、5本塁打。能力の問題ではなく、役割が重なったり、外国人枠が埋まったりした結果です。スイングにやや重さはあっても、球速帯の下がるセなら十分に対応できるはず。ヤクルト、中日、巨人の順でハマるとみています」
そのほか、セの球団が欲しがる「パでくすぶっている打者」は愛斗(ロッテ)だ。
愛斗(ロッテ/外野手) 2軍で打率.355、9盗塁のロッテ・愛斗。左翼、右翼を守れる右の中距離打者は引く手あまただ
「ロッテには山口航輝や山本大斗ら、外野の両翼も守れるDH型の打者がそろっています。愛斗は2軍で打率.355、5本塁打、9盗塁と数字を残していますが、1軍での役割がない状態。投手力があって右打者の層が薄い広島が最適だと思います。次いでヤクルト、巨人の順でハマりそうです」
では、セで市場に出てきそうな野手は誰なのか?
「大城卓三や岸田行倫ら打てる捕手を複数抱えている巨人では、山瀬慎之助の序列が低すぎます。かつて古田敦也の陰に隠れていたものの、トレード移籍で活躍の場を与えられた野口寿浩のように、山瀬も環境を変えれば十分に働けるはずです」
では、投手に関してはどうか? お股ニキ氏から真っ先に名前が挙がったのは平内龍太(巨人)だ。
平内龍太(巨人/投手) 最速157キロ右腕の巨人・平内。2軍で19奪三振、16四球を記録。環境を変えて輝けるか
「2軍で23回を投げて19奪三振、16四球。制球に難がある印象を受けますが、なんといっても最速157キロという速球が売りの投手です。田中正義や齋藤友貴哉のような『出力はあるものの、制御し切れない投手』に役割を与えるのがうまい日本ハムなら再生の絵を描けるでしょう」
野手とは対照的に、先発の頭数に窮しているのがDeNAとソフトバンク。DeNAは、東克樹ら数枚を除けば計算の立つ先発が乏しい状況だ。
「DeNAはデータ路線を突き進んでいますが、先発の配球の押し引きや駆け引きはまた別物。中継ぎは上向いても先発がなかなか出てきません。かといって生え抜きの主力を放出すれば、批判が殺到。だから、外から取ってくるしかないのです」
ソフトバンクは12球団最多の343得点を挙げる攻撃力を誇りながら、先発ローテーションの枚数が足りていない。
又木鉄平(巨人/投手) 2軍で防御率1.70と数字を残している巨人・又木。先発難の球団にハマりそうな技巧派左腕だ
「ソフトバンクが欲しいのは即戦力の先発です。そこでハマるのが、又木鉄平(巨人)。2軍で四球が少なく、試合をつくれる左腕です。逆に巨人は、ソフトバンクが持て余し気味の石塚綜一郎のような、打てる捕手出身者が欲しい。理屈の上では、両者の需要と供給はピタリと噛み合います」
石塚は2軍で打率.321、長打率.554を残す好打者だが、ここにきて状況が変わった。
石塚綜一郎(ソフトバンク/捕手) 2軍で打率.321をマークするソフトバンク・石塚。交流戦明けから1軍昇格もケガで離脱中
「石塚はセの球団にオススメしたい『パでくすぶっている逸材』でしたが、交流戦明けに1軍昇格。直後に死球を受けて顎を骨折し、現在はリハビリ中です。ただ、ソフトバンクは戦力として期待しているだけに獲得するハードルは高まった。対価として、先発ローテ級の若手投手が絶対条件になりそうです」
もう少し現実味のある投手が山岡泰輔(オリックス)だ。
山岡泰輔(オリックス/投手) 2軍で52奪三振を記録するオリックス・山岡。先発でも救援でも投げられるのが魅力だ
「山岡は2軍で54.1回を投げ52奪三振と能力は健在ですが、65被安打を記録。先発の3番手以内や勝ちパターンの中継ぎではなく、先発4~6番手やロングリリーフという評価軸で見ればいい。環境を変えれば、DeNA、ヤクルト、阪神、中日あたりに需要がありそうです」
一方、西武の與座海人や松本 航は、〝投手王国〟ならではの余剰戦力だ。
「今季の西武は先発ローテのレベルが一段上がり、12球団トップのチーム防御率2.68を誇ります。現状で先発ローテに割って入れていない與座や松本を、先発不足の球団が狙ってもおかしくない。
ただ、松本は2軍でも防御率7点台と炎上気味で、内容そのものにも問題があるため、まずはフォーム修正や球種精度などの立て直しが必須です」
そして、補強ポイントが最もわかりやすいのが、近本光司を故障で欠く阪神だ。中堅手、遊撃手、中継ぎと層の薄い〝穴〟がはっきりしている。お股ニキ氏は中堅手の候補として、淺間大基(日本ハム)、緒方理貢(ソフトバンク)を軸に、岡 大海(ロッテ)、田中和基(楽天)らを挙げる。
淺間大基(日本ハム/外野手) 2軍で打率.378の日本ハム・淺間。1軍経験が豊富で中堅も守れるため球団は放出しないか
「能力を優先するなら淺間です。2軍で打率.378を打ち、センターも守れる。ただ、守備も計算できるからこそ、日本ハムも安売りはしないでしょう。
費用対効果が最良なのは緒方。ソフトバンクは外野手が余っているので、金銭トレードかドラフト下位のプロスペクト級とのトレードで獲得できる可能性があります。岡や田中和は近本の打撃を埋めるというより、守備と代走を含む保険という位置づけです」
このような需給を踏まえ、「現実的なトレード案ランキング」をお股ニキ氏が語る。
「1位は平内(巨人)と今川(日本ハム)。打者の足りない巨人と、出力型のリリーバーを育てられる日本ハム。今川は巨人でこそ打席を得やすく、平内は日本ハムでこそ再生の絵が描ける。需要と供給が最もきれいに一致します」
2位はアドゥワ誠(広島)と愛斗(ロッテ)だ。
「アドゥワは2軍で防御率3.25。投手が豊富で右打者の層が薄い広島と、外野手の層が厚く先発の枚数が足りないロッテ。余剰と不足がちょうど裏返しの関係にあります」
3位は緒方(ソフトバンク)を阪神が金銭トレード、4位は山岡(オリックス)とDeNAの若手野手によるトレード、5位は與座(西武)と先発難のセ球団によるトレードと続く。
以上が現実的な予想だが、お股ニキ氏は今の日本球界ではほとんど見られない〝ウルトラC〟にも期待する。
「MLBでは当たり前ですが、FA間近の主力を短期で放出するトレードは、日本でも積極的にやる価値があります。
例えば森下暢仁(広島)や小島和哉(ロッテ)のように今オフにFAの可能性がある先発を、枚数が足りていないソフトバンクやDeNAが今季の残り半シーズンだけフル回転させるべく獲得してもいい。出した球団は代わりに若い有望株を得て、再建に充てられます。
どうせオフにFAで移籍するかもしれないので、トレードの〝弾〟にするのも球団経営として合理的です」
今季は交流戦直前にDeNAとソフトバンクの間で、山本祐大と尾形崇斗・井上朋也の電撃トレードが実現。日本球界も少しずつMLB流のダイナミックな動きが見られつつある。
余剰戦力を巧みに使い、弱点を埋める。そんな最良の一手を指すのはどの球団なのか。水面下で進む12球団の頭脳戦の行方に注目だ。