
渡辺雅史
わたなべ・まさし
渡辺雅史の記事一覧
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。
配達依頼が増えているのにどうして? ウーバーイーツの便利なサービス、PPPの消滅可能性について考察します
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第174回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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この連載でもたびたび登場している、ウーバーイーツの買い物代行サービス「ピック・パック・ペイ」(PPP)。私の配達する東京の中央区、港区などのエリアでは、注文がかなり増えているのを実感しています。そして最近は食品だけではなくペットフードなど、注文される商品の幅も広がっています。
ですが、私の周りの配達員から聞こえてくるのは......
「最近は配達員用アプリの設定を『PPPの依頼を受けない』というモードにしている」
「PPPをやっている余裕がない」
「注文がまったくこない状況にならない限り、PPPはやらない」
こういった「もうやらなくなった」という声ばかり。
このままでは近い将来、PPPのサービスが消滅してしまう可能性があります。配達依頼が増えているのにも関わらず、なぜ消滅の危機なのか。今回はその理由をウーバーイーツ配達員視点から考察したいと思います。
ウーバーイーツ配達員に支払われる報酬は「基本配達料」「クエストをクリアするともらえる特別報酬」「利用者からのチップ」の3つで構成されています。
9月28日から10月4日までの私の収入を例にすると、約18時間稼働して基本配達料は1万9116円、特別報酬は1万3650円、チップは213円、合計3万2979円です。
時給換算で1800円を超えているので一般的なアルバイトよりも収入が得られているのですが、もし特別報酬やチップが1円ももらえなかったとしたら、収入は1万9116円のみ。時給換算すると1060円ほど。東京都の最低賃金は時給1280円なので、それを下回る金額となります。
つまり、ウーバーイーツの配達ではクエストをクリアし、特別報酬を手に入れることを前提とした働き方をしないと、まともな収入を得ることができません。
クエストは決められた日、指定された時間内に何回配達を行なったかで特別報酬が出るシステムで、基本は以下の5種類です。
●月曜日から木曜日の4日間に規定の配達回数をクリアすると特別報酬が出る「平日クエスト」(配達回数は配達員が事前に選択)
●金曜日から日曜日の3日間に規定の配達回数をクリアすると特別報酬が出る「週末クエスト」(配達回数は配達員が事前に選択)
●お昼の時間帯に出ることがある「ランチタイムクエスト」(期間4時間、回数最大12回)
●夜の時間帯に出ることがある「ディナータイムクエスト」(期間5時間30分、回数最大12回)
●天候の悪い日に出る「雨クエスト」(期間5時間30分、回数最大12回)
このうち「ランチタイムクエスト」と「ディナータイムクエスト」の出現はこれまでまちまちでしたが、最近は頻繁に出るようになりました。特に期間が4時間と短い「ランチタイムクエスト」はほぼ毎日出ていて、例えば私のところに届いた10月25日(日)のものは、最初の3回は180円しかもらえませんが、9回クリアした後に3回運ぶと1060円ももらえます。
私は自転車で配達をしていますが、4時間で12回配達はギリギリ達成できるかどうかの回数。バイク配達員に聞いても同様だそうです。
PPPは店での買い物から支払いの手続きまで配達員が行なうため、ひとつの配達にものすごく時間がかかります。店でなかなか注文された商品が見つからず、買い物だけで30分以上なんてこともよくあります。そのため、この時間帯にPPPの配達依頼を受けると12回どころか、9回の配達も厳しくなります。
このことから、他の商品の配達依頼より報酬が高く設定されていますが、状況によっては1回の時間で普通の配達が2、3回こなせてしまうため、普通に商品を運んでいるほうが特別報酬を多く手にすることができます。
配達員用のアプリではPPPの依頼を受けない設定も可能です。冒頭の配達員も使っているであろうこの機能も、配達員のPPP離れにつながっていると言えるでしょう。
2025年からフードデリバリーに参入したロケットナウの配達エリア拡大でウーバーイーツ配達員が不足し、特別報酬を出して人員を確保しようという運営側の意図はわかります。
ですが、ここまで配達回数で評価するクエストを出し続けると、ランチタイムやディナータイムにPPPをやろうという人はほぼいなくなるでしょう。
解決策としては、基本配達料を上げ、クエスト達成の金額を下げて「クエストをクリアしなくてもそこそこ稼げる」という状況を作ることだと思います。また、PPPの1回あたりの配達料も現在より高くして「クエストを達成できなくてもPPPは配達料が高額なので稼げる」という状況を作ったほうがいいと思います。
稼働時間を重視した報酬体系にすると配達中に遠回りするといった時間稼ぎをする人が出て、サービスの低下につながることから回数を重視したクエストにしたと思われます。ですが、時間のかかるPPPを軽視した現在のクエストの報酬体系がこれ以上続くと、注文する側から「配達員が全然決まらない」「夕食作りに間に合うよう早めに注文したのに、2時間近くかかった」といった不満が増え、サービスを利用する人が減ってしまいます。
PPPは高齢の方が使うととても便利なサービス。今後、社会の高齢化が進めば欠かせないサービスとなる可能性が高いので、いろいろ見直して、配達員がPPPの依頼を受けても稼げるような報酬体系にしていただきたいです。