
ひろゆき (西村博之)
にしむら・ひろゆき
ひろゆき (西村博之)の記事一覧
元『2ちゃんねる』管理人。著書に『脳科学が教える日本社会で賢く生き残る方法』(中野信子氏との共著、集英社)など
「人間は自ら生きることをやめる可能性もあります。自滅するということです」と語る小林武彦氏
ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。生物学者の小林武彦先生との対談の8回目です。人工知能が人類を滅亡させるという話もありますが、その前に人間自らが生きることをやめる可能性もあるという小林先生。では、人類が生き残るためには何をすればいいのでしょうか?
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ひろゆき(以下、ひろ) 前号では、人類はあと100年も持たないかもしれないとのことでした。思ったより早いですね。
小林武彦(以下、小林) 人類の過去100年間の科学技術の進歩と、その技術を人間がどう使ってきたかを考えると、その可能性もあります。生成AIをはじめ、使い方を間違えると大変なことになるテクノロジーは今後もたくさん出てくるでしょうから。
ひろ 昔も世界大戦はありましたけど、今後は戦争になったときに使うテクノロジーの威力がまったく違ってきますからね。
小林 戦争だけでなく、以前お話ししたように遺伝子と社会の仕組みのギャップが広がれば、人間は自ら生きることをやめる可能性もあります。自滅するということです。
ひろ 自滅で思い出すのが、知的生命体が宇宙で見つからないことです。宇宙はものすごく広くて歴史も長いので、人間より先に高度な文明を持った知的生命体がいてもおかしくない。でも、その痕跡は見つかっていない。つまり、文明は発達すると自分たちを滅ぼす技術までつくって自滅するんじゃないかと。人類も今、そこに近づいているように思えるんです。
小林 仮に過去に高度な文明を持つ知的生命体がいたとするなら、その可能性はあるでしょうね。どの文明も結局は同じところでつまずくのかもしれません。
ひろ その一方で、人類を滅ぼせるほどのテクノロジーは、裏を返せば人類を死ななくする方向にも使えそうな気もするんです。そうなるとまず思いつくのが不老不死ですけど、先生は「生物の寿命は延びない」と言っていますよね。人間を不老不死にするのは難しいんですか?
小林 現状の肉体のまま永遠に生きるのは難しいでしょうね。健康寿命は延ばせても寿命そのものをなくすのは簡単ではありません。
ひろ 何か方法はないんですか?
小林 例えばマインドアップロード。頭の中の情報をコンピューターに移し、メモリーの中の存在として生きる。そうなれば肉体の寿命から自分を解放できるかもしれません。
ひろ 肉体を捨てて、別の知的生命体みたいなものになると。
小林 イーロン・マスクさんもサルの脳にチップを埋め込んで、脳と機械をつなぐ研究をしています。人間の脳がAIに追いつけないなら、人間の脳をテクノロジーと結びつけようという発想です。
ひろ 仮に地球に住めなくなったとしても、自分をコンピューターの中に移して宇宙を旅できれば、理屈の上では、肉体にも地球にも縛られなくなりますよね。
小林 そうですね。そういう未来も考えられます。
ひろ 先生は生物学的な幸せを「死からの距離が保てている状態」と言っていましたけど、それが永久に実現できたら幸せですよね。老化も病気もなく、地球がダメなら宇宙に逃げられる。
小林 ただ、それが本当に幸せかどうかは別の問題だと思います。永遠に生きると、逆に死からの距離がわからなくなり、幸せではなくなる可能性もあります。
ひろ それ以前に、そんな未来を全員が手に入れられるわけではないですしね。宇宙へ行ったり、脳と機械をつないだりできるのは、ものすごくお金を持っている人たちでしょう。すると、今までの「年収が高い、低い」という格差が、「死なない人と、普通に死ぬ人」の格差になるかもしれない。
小林 そこが大きな問題です。新しい技術は、最初から誰もが平等に使えるわけではありません。技術が進めば進むほど、その恩恵を受けられる人と受けられない人との差が大きくなります。
ひろ 一部の人だけがコンピューターの中で永遠に生きて宇宙へ行き、大多数の人は地球に残される。それを「人類が死から遠ざかった」と言っていいのか。残された側は今以上に絶望しそうです。
小林 そうなると、お金を持っていない人のほうが圧倒的に多いので、革命のようなことが起きるかもしれません。
ひろ しかも革命で使われるテクノロジーの威力も昔とは違う。勝ったほうも負けたほうも一緒に終わる可能性もありますよね。
小林 だから、その前に手を打つ必要があるんです。重要なのは、科学技術の発展を止めるのではなく、それによって生まれた富や恩恵をどう分配するかです。
ひろ ベーシックインカム(最低限所得保障)的な何かですかね?
小林 そうだと思います。
ひろ 僕もベーシックインカムは前からやったほうがいいと言っていますけど、経済効率だけで考えると、「優秀な人に資本を集めて投資してもらったほうがいい」となりがちなんですよ。
小林 でも、生物として考えると違います。今の僕らは、膨大な生物の死と進化の積み重ねの上に生まれている。生きること自体が長い歴史を経てつながってきた。だから多くの人が幸せに生きられる社会にしたほうがいいと思います。
ひろ アラブなどの石油産出国の王族は、十分なお金を持っているので、国民にかなり還元していますよね。
小林 王族は、そうやって国民にお金を配ってきたから王族として残っているとも考えられますよね。圧倒的に王族以外の人のほうが多いので、独占しすぎて革命を起こされたらひっくり返る。つまり、配ることが王族の存在価値であり、生き残るための方法でもあったのかもしれません。
ひろ 富の分配って弱い人への優しさだけじゃなくて、配らないと革命を起こされる可能性があるから配る。金持ちが自身の死を遠ざけるための生存戦略でもある、と。
小林 そういうことです。狩猟採集時代の分配と似ていますよね。大きな獲物を全部独占せず、みんなに分ける。そうすれば仲間から認められ、自分が困ったときには助けてもらえる。
ひろ 「自慢、承認、分配がワンセット」という話ですね。
小林 そうです。
ひろ フランスはわかりやすいですよね。生活に関わる負担が増えれば、国民はデモをして政府に圧力をかけますから。
小林 フランスは歴史的に革命を経験しているので、国民側も「やりすぎればひっくり返すぞ」という感覚があるのかもしれません。
ひろ 日本は逆に、格差が広がっても「仕方がない」と受け入れる人が多い気がします。
小林 だから心配なんです。怒ることすらせず、「どうせ自分たちには無理だ」と諦める人が増えれば、無気力な人が増え、少子化などにつながります。
ひろ こう考えていくと「人類はあと100年で滅びる」という話も、最初ほど突拍子もない話には聞こえなくなってきました。
小林 ただ、悲観する必要はないと思います。社会はしょせん、人間がつくったものです。だから、つくり直すこともできます。
ひろ 人間を今の社会に無理やり合わせるんじゃなく、社会のほうを本来の人間の生活に合わせる、と。
小林 そうです。科学技術の進歩で、私たちの肉体は昔より圧倒的に死から遠くなりました。ならば、次に考えるべきは「精神的にも死から遠い社会」なんです。
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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA)
元『2ちゃんねる』管理人。著書に『脳科学が教える日本社会で賢く生き残る方法』(中野信子氏との共著、集英社)など
■小林武彦(Takehiko KOBAYASHI)
東京大学定量生命科学研究所教授。生物科学学会連合前代表。著書に『生物はなぜ死ぬのか』『なぜヒトだけが老いるのか』『なぜヒトだけが幸せになれないのか』(すべて講談社現代新書)などがある





