時代によって変わる、MLBゴールドグラブ賞の指標になるさまざまな数値【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第243回

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

守備評価の数値について語った山本キャスター守備評価の数値について語った山本キャスター

こんにちは、野球大好き山本萩子です。

先日、MLBのゴールドグラブ賞が発表されました。今年は、守備を進化させたシカゴ・カブスの鈴木誠也選手が最終候補に名を連ね、大きな話題になりました。

広島時代にはゴールデン・グラブ賞を5度も受賞している守備の名手ですが、メジャーで最終候補に挙がるのは今年が初めて。そのためいつも以上に注目が集まり、SNSでは「今年は誰が受賞するのか」という考察で盛り上がっていました。

そこでよく出てきたのが、DRS、OAA、FRVといった語句です。これらの数値が、選考の重要な基準になったのではないかと言われています。

DRS(Defensive Runs Saved)は、2000年代に重要視されるようになった指標です。わかりやすく言うと、平均的な選手と比べて、その選手が守備でどれだけ失点を防いだかを得点に換算して表したものとなります。

OAA(Outs Above Average)は、打球に対して、平均的な野手よりどれだけ多くのアウトを奪ったかを示す指標。2010年代半ばに外野版が公開され、2020年からは内野手にも適用されるようになりました。選手がどんな打球にどうアプローチしたかを数値で示してくれます。

FRV(Fielding Run Value)は、2023年頃に登場した比較的新しい指標です。OAAを基に、送球なども含めた総合的な守備価値を得点に換算することができます。

守備能力を端的に言い表せる万能の指標はない、ということですね。内野ならDRS、外野ならFRVのほうが向いている、といったように、守るポジションに応じて複数の指標を組み合わせるのが基本です。

指標にもトレンドがあります。以前はUZR(Ultimate Zone Rating/平均的な野手と比べて、守備でどれだけ失点を防いだか)が重要視されてきましたが、次第に弱点も指摘されるようになり、影響力を失っていったように思います。

ということは、今は当たり前のように使われているFRVやOAAでさえ、数年後には「そういえば、そんな数字もあったよね」と言われているかもしれないということ。ファングラフスやベースボール・リファレンスといったデータサイトは、毎年のように新しい指標を研究して発表していますが、今ある指標が、必ずしも10年後の正解になるとは言えなそうです。

そういえば各球団のスプリングトレーニング球場にも、データ解析の施設がありました。そういえば各球団のスプリングトレーニング球場にも、データ解析の施設がありました。

さまざまな指標が生まれてきたのには、きちんとした理由があります。

従来の守備率や失策数だけでは、守備の本当の力はなかなか測れません。例えば、難しい打球に飛びついて記録上はエラーになることがあります。一方でエラーがない選手がいたとして、実のところは単純に打球に追いつけなかったからかもしれません。

打球の処理結果を細かく記録し、選手の位置や動きまで追跡できるようになったことで、「見えにくかった部分」が数字になり、私たちにも提示されるようになったのです。

こういった数値は、守備を得意とする選手にとって励みになります。数値が上昇すれば自分の成長が実感できますし、目標も立てやすくなります。今年の鈴木選手は、DRSがナ・リーグ右翼手トップのプラス14ということもあってゴールドグラブ賞の最終候補に残りましたが、春から守備の進化に取り組んできたことがはっきり表れたのでしょう。

これらの数値は、代理人が契約交渉する際の材料にもなります。会社員にとって人事の査定が難しいように、人が人を評価するのはとても難しいもの。だからこそ、共通のものさしになる数字があれば、公平感や安心感、やる気につながるはずです。

とはいえ、数字がすべてではないのが野球の面白いところです。以前、ヤクルトの古賀優大選手にインタビューした際には、データも感覚も、どちらも大切にしていると話していました。「データがいかに大事でも、感覚が重視されなくなることはない」というお話が印象に残っています。

実際、MLBのゴールドグラブ賞の選考は、監督やコーチによる投票が75%、数値を組み合わせた評価が25%で行なわれると言われています。最終的には、人の目による投票の割合のほうが大きいのですが、これは数字では測りにくい動きや、ここぞという場面でのプレーといった、感覚的なものを重視しているからでしょう。

日本ハムの新庄剛志監督は現役時代、あえて捕球を遅らせて走者の進塁を誘ってアウトにしていたそうです。数字だけでは、「この外野手に打球が飛ぶと走りにくい」という"抑止力"までは見えてきません。そこに、守備の面白さが詰まっていると思います。

野球選手が、多角的に評価される時代へと移っています。分業制も進んでいますから、今後も新しい指標が増えていくでしょう。そのたびに、数字とその奥にあるものを楽しみたいですね。

近いうちに、今度は打者の指標を取り上げる予定です。打つほうにも、本当にたくさんの指標がありますから、お楽しみに。

それでは、また来週。

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週金曜日朝更新!

  • 山本萩子

    山本萩子

    やまもと・しゅうこ

    1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。

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